【Featuring Africa】チャレンジしがいのある大陸、アフリカ

−BOPビジネスを通じてアフリカの未来を語る−

2013年5月27日

ビジネスの市場として、世界各国から大きな注目を集めているアフリカ。JICAの調査(注1)を活用し、アフリカでBOPビジネス(注2)に取り組む企業3社が、アフリカでのビジネスの可能性と課題、JICAとのパートナーシップについて語る。

出席者
会宝産業株式会社 近藤典彦代表取締役社長
川商フーズ株式会社 関口新造理事
株式会社サカタのタネ 田崎正光取締役

聞き手
JICA 鈴木規子広報室長

日本の技術をアフリカへ

――まずは、アフリカ進出のきっかけを教えてください。会宝産業さんは、現地のパートナー企業と共同出資で、ナイジェリアに自動車リサイクル工場を設立されようとしています。NPO法人も立ち上げていますが、そのあたりも含めてお聞かせください。

会宝産業株式会社 近藤典彦代表取締役社長

(近藤)自動車リサイクルの仕組みと標準化モデルをつくるために、2003年に、全国の自動車リサイクル業者が集まり、NPO法人RUMアライアンス(全国自動車リサイクル事業者連盟)を立ち上げました。そして、2008年に石川県金沢市で開催した国際リサイクル会議に、アフリカの大使の方が何人か来てくださったことが縁で、アフリカとのつながりが生まれました。その中で、ナイジェリアで自動車リサイクルをやりたいと声をかけてくださる方がいて、合弁会社をつくったのが始まりです。

――ナイジェリアはビジネスをしづらい国といわれていますが。

(近藤)そのころは知らなかったのですが、どうもそうらしいですね。でも、近隣諸国からいろいろいわれるのは、よくも悪くもポテンシャルが高いということではないでしょうか。ナイジェリアの自動車リサイクルが「静脈産業」(注3)として定着し、近隣諸国に普及していけば、近隣諸国がナイジェリアを見る目も変わるのではないかと思っています。2012年2月の現地でのキックオフミーティングでは、「国家が国民のために何をするかではなく、国民が国家のために何かできるか」というケネディ大統領の言葉を引用し、ナイジェリアの関係者に共に静脈産業を立ち上げようと訴えました。

――川商フーズさんは、ガーナに青魚のトマト煮の缶詰の工場を設立するための調査を行っています。

川商フーズ株式会社 関口新造理事

(関口)わが社の缶詰製造の歴史は古く、前身である野崎産業は、1911年に日本のタラバガニの缶詰を、「GEISHA」ブランドとしてアメリカに輸出しました。その後、技術水準の高まりとともに海外輸出が盛んになっていくわけですが、90年代に入ると人件費や原料費の高騰もあり、価格競争に打ち勝つため、生産拠点をタイ、そして中国に移しました。そして、今、次の拠点として考えているのがアフリカです。缶詰の生産には、原料となる資源と市場が必要です。市場があれば、市場の需要量に応じて生産をすればよく、在庫を大量に抱えるリスクもありません。ガーナをはじめとする西アフリカは魚の漁獲量が多く、古くからわが社の青魚のトマト煮が親しまれているということが、ガーナ進出を検討する決め手になりました。

――サカタのタネさんは、南アフリカに農業の生産指導、農業経営などの研修機関を設立し、小規模農家の自立化支援を行っています。

株式会社サカタのタネ 田崎正光取締役

(田崎)わが社とアフリカのかかわりは、50年ほど前に、スイカとキャベツのタネを輸出したのが始まりです。日本のタネをなぜアフリカに輸出するのかと思われるかもしれませんが、日本という国土は北海道から沖縄まで南北に長く、四季があります。この日本独特の気候風土で育成し、選抜した品種は、海外の広域に適応できるわけです。以前は、本社からアフリカ各国の輸入代理店を通じて販売していましたが、2000年からは、歴史的、地理的、文化的にアフリカとの結びつきが強いヨーロッパの子会社を通じて販売するとともに、南アフリカの老舗のタネ会社を買収し、東・南アフリカ地域の拠点としています。アフリカは、将来的に人類の食料基地になり得るほどの農業のポテンシャルを持っているにもかかわらず、それが十分に活用されていません。そこに、民間企業としてチャレンジしたいという思いもあります。

――途上国の方と農業について話をすると、必ずサカタのタネさんの名前が出てきます。まさにグローバル企業ですね。

(田崎)タネは消費財ではなく生産財です。農家は、花や野菜を生産し生計を立てるためにタネを使っています。だから、農家は新しい品種、作物の選択には慎重になりますし、彼らの評価を得るには時間もかかります。それにふさわしい品種を作り上げるためには、8〜10年の年月を要するわけです。アフリカ市場についても、欧米と同じぐらいの時間をかけながら、耕しているという感じです。おかげさまで、現在、私どもが把握しているアフリカのマーケットでのわが社のシェアは10パーセントに達しています。

後始末から再資源化へのサイクルをつくる

――調査終了後は、どのように事業を展開していこうとお考えなのか、お聞かせください。

ナイジェリアに山積みにされた廃車。たまった水がマラリア蚊の発生源になることも

(近藤)どんなビジネスも後始末が大切だと考えています。適切な後始末により廃棄物を再資源化することができれば、循環型社会をつくることが可能です。自動車でできれば、家電でも、IT機器でもできるはずです。そのやり方を実際に見てもらうため、今、ナイジェリアから10人の研修員を呼び寄せ、3ヵ月のスケジュールで研修を行っています。その後は行政の担当者も来る予定です。その上で、ナイジェリアで、日本の機器を使ってリサイクル処理に取りかかっています。現地にはすでに8,000台以上の車が山積みになっていて、廃タイヤにたまった水がマラリアを媒介する蚊の発生源になると危惧されています。それを早く処理することで、自動車のリサイクルがビジネスになり、雇用につながることを理解してもらえればと思っています。

――後始末が再資源化につながり、そこから新しい産業が生まれるというのは、とても魅力的だと思います。

(近藤)同時に、日本の失敗を伝えることも大切です。そのため、私は日本に来た研修員を、必ず瀬戸内海の豊島(香川県)に連れて行きます。豊島は高度経済成長時代に大量の産業廃棄物が不法投棄され、現在、多額の税金を投じて廃棄物の撤去が行われています。後始末をせず、経済発展を優先した結果です。同じ過ちを繰り返さないためにも、後始末をきちんと考えてほしいと伝えています。

――川商フーズさんの場合、現地で日本の技術、日本ブランドであることを打ち出していらっしゃいますか。

(関口)現地で愛される味を、リーズナブルな価格で販売することを目指していますので、現地では日本製であることをうたってはいません。ただ、鮮度管理の上では、日本の高い技術が必要で、日本の技術者も含めて点検をするなどし、精度を高めています。缶詰は、生鮮をそのまま加工するのがいちばんおいしく食べられるのですが、そうした設備を備えた船がガーナにはありませんから、今後、現地生産を考えた場合には、獲れた魚を港まで運んで、そこで冷凍し保管するという方法を考えています。鮮度管理という発想があまりない国で、漁獲、輸送、加工の各段階で温度管理を徹底するのは、難しいところもあります。

――3月に調査を終了したばかりですが、ビジネスとして成り立ちそうですか。

(関口)その方向で考えていますが、改善しなければならないこと、確認しなければならないこともまだまだあります。例えば、トマトの調達。ガーナを選んだ理由の一つは、トマトが栽培されているということだったのですが、思ったより生産量は少なく、流通システムもありません。容器についても、軽量で輸送が楽なパウチがいいのですが、輸送環境が整っていないため、傷がつきやすい。そこで、耐久性のある鉄を使いたいのですが、ガーナ国内には製缶工場がありません。そのあたりの課題が山積みです。

――サカタのタネさんは、販売から一歩踏み込み、生産指導、農家の自立化に向けた事業に取り組むことを決めたのは、どういうお考えがあってのことですか。

(田崎)いろいろな国で野菜の生産指導をしてきてわかったのは、農家にとっていちばん難しいのは、作ることではなく売ることだということです。川商フーズさんがおっしゃったように、ガーナではトマトを栽培するポテンシャルがあっても、売る手段がないから、作らないんです。しかし、市場が求める質と量を安定的に供給することができれば、サプライチェーンやバリューチェーンに乗せることは可能です。単にタネを売るだけでなく、タネを購入した生産者が、営農し生計を立てられるような売り方のソリューションを提案することが、私どもタネ屋の大切な役割だと思っています。

近隣の新規就農者を招き、野菜の栽培技術の講習会を実施

――マイクロファイナンスも活用される計画ですね。

(田崎)新しく農業を始めるために政府系金融機関から融資を受けても、生産物が上がってこないと、融資はそこで終わってしまいます。新規就農者が野菜を栽培するための技術指導はサカタが担当し、営農資金の管理の仕方、再投資の仕方を指導してもらうため、マイクロファイナンスを専門とするNPO法人をパートナーに選び、異業種間の二人三脚で持続的な営農支援の事業モデルを試みることになりました。

アフリカをつなぐ仕組みづくりへ

――皆さんのお話を聞いていると、サプライチェーン、循環型社会など、アフリカの中でつながることで新たな価値が生まれるのではないかと感じました。

(近藤)確かに、みんな関連していますよね。これからは、それをうまくつなげていく役割が求められていくのかもしれません。

(田崎)日本のODAも国際機関も、個別の事業は試されているのですが、それをつなぎ合わせ、連携し、コーディネートするのが、まだ十分ではないように思います。官民の間だけでなく、異業種、あるいはそれぞれの産業の連携を考えていくと、システムとしても、産業としても、新しいことができるんじゃないでしょうか。

(近藤)情報を共有することで新しい産業が生まれる可能性はあると思います。それがJICAの役割なのかはわかりませんが、われわれの情報をいちばん持っているのはJICAですから、情報を集めて精査しながらコーディネートする部門があってもいいのではないかと思います。

――確かに、われわれも縦割りで考えてしまうところがあります。例えば、食料の安全保障には、農業開発、保健、栄養などの要素が入ってきますが、担当部署が農業部門と保健部門に分かれてしまっています。「技術」に着目した協力を行っているときにはそれで問題なかったのですが、今は部門を超えた横のつながりも求められています。皆さんのお話を聞き、ますますその必要性を感じています。

(近藤)JICAの仕事というのは、日本が世界に対して貢献すること。日本という国は、JICAのすばらしさをもっと活用すべきです。JICAの職員にも、細かいことにとらわれず、もっと大らかな気持ちで世界のことを考える仕事をしてほしいと思っています。

――それでは、民間企業がJICAとパーナーシップを組むことのメリット、デメリットは何でしょう。JICAに対し要望があれば、それもお聞かせください。

(近藤)以前、自動車リサイクルのシステムを学ぶため、中南米から14人の研修員が来たことがあるのですが、その人選を見て、さすがJICAだと思いました。JICAが集めてくれたのは、リサイクル事業に興味を持つ方、議論ができる方ばかりでした。志のある人が集まると、次に進むのも早いんです。われわれ民間では、これほど迅速に的確な人集めはできません。一方で、事業に申請するときなどは、書類作成にものすごく時間をとられます。これをなんとかしていただけるとうれしいです。

ナイジェリアの食品販売店に並ぶ川商フーズの青魚のトマト煮「GEISHA」缶(右手)

(関口)JICAの事業に参加したのは今回が初めてのことなので、比較はできませんが、いろいろな縛りがあったのは確かです。しかし、私たちが望む調査結果が出たので、満足もしています。今後、この調査結果を活用していく上で、JICAのどのようなサポートを受けられるのか、われわれも勉強していかなければと思っています。

(田崎)タネ屋は開発型のベンチャー企業です。というのは、一般の企業が研究開発に充てる費用が総売上の3〜5パーセントであるのに対し、当社は12パーセントを充てています。10年後の消費者の嗜好やライフスタイルを想像しながら、8〜10年という時間をかけて新しい品種を開発するわけです。今回、BOPビジネスの事前調査に支援をいただいたことは、JICAがベンチャー企業の支援を始めたことと理解しています。可能性はあるけれどもリスクもあるアフリカなどの途上国への展開に、興味を持ってはいるが開発費に十分な余力のない中小企業やベンチャー企業をJICAが支援するということは、とても大切なことだと思います。

――10年先の嗜好、ライフスタイルを想像しての商品開発というのは、すごいことですね。

(田崎)だからほとんど外れるんです。けれど、当たったときには独占できます。それがタネ屋なんです。JICAと事業を進めることで、今までとは違った形の国際協力、官民連携、民民連携が出てくるんじゃないかと思います。

(近藤)民間だけではできないことがたくさんありますからね。

日本の技術で市場規模の拡大を目指す

――最後に、アフリカの魅力と、これからBOPビジネスへの参入を考えている企業へのメッセージをお願いします。

(関口)まずは、現地を訪れてほしいと思います。私自身、耳で聞くよりも、実際に自分の目で見たほうが、ずっといい印象を受けました。今回、JICAの事業を活用していちばんよかったと思うのは、思ったよりもスムーズに調査ができ、次の段階に向けて課題を発見できたことです。これからアフリカ進出を考えている企業もJICAの調査を活用することで、調査のスピードアップが図れるのではないかと思います。市場としてのアフリカは大きな魅力です。これからのわが社の展開を私自身も期待しています。

(近藤)開拓するというファイティングスピリットがあれば、成熟した社会で競争するよりもずっと面白く魅力的な土地柄だと思います。40年前の日本の高度経済成長期では、何をするにも、まずは電話線を引くところから始めなければなりませんでした。しかし、今のアフリカで同じことをする場合には、携帯電話やITという先端的な技術と取り合わせながら進めることができます。必要なのは、日本の技術を世界に広げていきたいという気概と、そこに出ていく勇気です。1度や2度の失敗で撤退するのではなく、チャンレジしてほしいと思います。

鈴木広報室長

(田崎)これから、アフリカの人口は10億人に達します。これまで中国、インドで起こっていたことが、すでにアフリカでも始まっています。市場規模は、今はまだそれほど大きくはありませんが、われわれが持つノウハウと経験で市場の質的転換を促すことで、大きな市場規模を目指すことは可能です。そういう意味で、非常にチャレンジしがいのある大陸だと思います。

――JICAでも、海外投融資事業(注4)などほかのスキームも含めて、民間の方々とどのように連携していくかが大きな課題になっています。今後も勉強しながら進めていきたいと思いますので、提言も含めてアドバイスをいただければと思います。今日は本当にありがとうございました。


▼各社の協力準備調査(BOPビジネス連携促進)の内容
会宝産業株式会社
現地パートナー企業と共同出資でナイジェリア・ラゴス州に自動車リサイクル工場を設立予定。主に現地BOP層を雇用し、使用済み自動車を収集、工場で解体・分別。使える部品は中古部品としてリサイクルし、使えない部分はスクラップとして国内の電炉メーカーなどに販売する。

川商フーズ株式会社
青魚のトマト煮の缶詰の主な原料である青魚(サバ、アジ、イワシなど)とトマトをガーナで調達し、ガーナで製造・販売する。学校給食プログラムなどを通じたBOP層への提供、栄養改善、漁民支援、農民支援も視野に入れている。

株式会社サカタのタネ
南アフリカのノースウェスト州、リンポポ州などで、農業の生産指導・農業経営などの研修機関を設立・運営。黒人小規模・零細農家に向けた野菜栽培の生産指導や事業化研修事業を展開し、マイクロファイナンスも活用して、小規模農家の自立化支援を行う。


(注1)協力準備調査(BOPビジネス連携促進)。開発課題(所得向上、教育水準の向上、安全な水の普及など)の解決に役立つ「BOPビジネス」の実施を検討している企業などに対して、市場調査、ビジネスの形成、事業実施計画の策定までの調査を支援している。
(注2)約40億人いるといわれる年間所得3,000ドル以下の貧困層(BOP:Base of the Pyramid)が抱える課題を改善し得るビジネス。
(注3)産業が排出し不要になったものを再利用、再資源化する産業のこと。これに対し、ものを作る産業を「動脈産業」と呼ぶ。
(注4)民間セクターを通じた開発途上地域の開発促進のため、開発途上地域において民間企業などが実施する開発事業を出資、融資により支援する事業。


【TICAD Vに向けて、アフリカの開発課題、事業の最新動向、援助の在り方についての分析など、アフリカをシリーズで特集しています】