コーヒーハンター・ホセ川島と拓くルワンダコーヒーの未来

2013年7月29日

アフリカの中央に位置するルワンダ。1994年に、100日間で100万人もの命が奪われたジェノサイド(集団虐殺)が記憶に残るが、2000年以降は、GDPが年平均7〜8パーセントの経済成長を遂げ、「ルワンダの奇跡」と呼ばれていることはあまり知られていない。

丘陵地帯に広がるコーヒー畑(ルワンダ南部フイエ地区)

同国の主要な輸出品目の一つはコーヒー。総輸出額の約25パーセントを占めている。ジャマイカのブルーマウンテンやタンザニアのキリマンジャロなどに比べると日本での知名度は低いが、最高品質の「スペシャルティーコーヒー」の産地として注目を浴びている。JICAはルワンダのコーヒー産業強化の可能性を探るべく、今年3月から基礎情報収集・確認調査を行っている。調査には、まだ世に出ていないコーヒーを探し世界中を飛び回る、日本のコーヒー業界の第一人者、「コーヒーハンター」ホセ川島こと、株式会社ミカフェートの川島良彰氏も参加した(注)。

高品質コーヒー栽培に適した「千の丘の国」

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小農家向けに即席栽培セミナーを行う川島氏(写真中央、ルワンダ東部ンゴマ地区)

川島氏は、2012年に独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)の専門家としてルワンダを訪問した際に、「千の丘の国」と呼ばれる起伏のある土地、豊富な雨量、昼夜の寒暖の差を目の当たりにし、コーヒー栽培のポテンシャルを感じていた。しかし、ルワンダコーヒーは生産方法や加工方法が国際市場で通用するレベルにはなかった。

同じころ、JICAは、農民の生計向上の観点から、ルワンダのコーヒー産業支援の可能性を検討していた。同国のコーヒー産業を支えているのは大規模なプランテーションではなく、小農家であることから、支援を行うためにはバリューチェーン全体の改善が不可欠だった。そこで、JICAは、ルワンダコーヒー産業強化支援の可能性を探るべく調査を開始。川島氏と共にJALコーヒーアドバイザーを務める焙煎・抽出のスペシャリスト、石脇智広氏も調査に参加し、コーヒー業界の強力コンビとタッグを組んでの診断が行われた。

未来のコーヒーハンターズ・12人の協力隊員

協力隊員にコーヒーの抽出法を指導する川島氏(写真左端)

調査を通じ、ルワンダコーヒー産業のさまざまな課題が明らかになった。栽培技術の未確立と不十分な普及体制もその一つ。ルワンダ政府は、農業普及員を通じ農民に技術指導はしているものの、技術改善には及び腰だった。「正しい栽培方法をわかってもらうには実績を示すことが大切。農業・村落開発の分野で活動する青年海外協力隊員が実践し、時間をかけてルワンダ側の理解を深めるのがよいのではないか」と川島氏。そこで、コーヒー栽培に興味があるルワンダで活動中の協力隊員12人に対して、自ら栽培技術の講義や農家での実技指導を行い、指導を受けた隊員が現地で継続的に支援ができるような仕組みをつくった。

ルワンダのコーヒー生産者は小規模農家が多いのが特徴。コーヒーの木を維持するためには枝を切り落とす剪(せん)定作業が欠かせないが、収穫量が低下するため木を切ることには消極的だ。そこで今回は、曲がった箇所から新芽が出るというコーヒーの木の特徴を利用した「アゴビオ」という方法を用いた。講義に参加した農民からは「木を切る必要がないから、来年の収穫を心配せずに剪定作業ができる」と大好評だった。

「涙のコーヒー」でなく、認められる品質を目指す

収穫された完熟コーヒー豆(ルワンダ南部フイエ地区)

協力隊の大和田美香隊員(宮城県出身)は、日本にコーヒー豆を輸出した実績を持つ南部フイエ地区のコーヒー農家を支援している。「農家は一生懸命に栽培を行っているが、適切な栽培方法を知らない。また、私たちがアクセスできる情報には限りがあるため、川島さんや石脇さんのようなコーヒー業界の第一人者に指導してもらえるのは貴重な経験。ルワンダコーヒーはパッケージングや流通面などでもまだまだ課題が多いが、農家と共に一つずつ改善していきたい」と語った。

ルワンダコーヒーのポテンシャルの高さ、今後の改善点について意見を交換するカリバタ大臣(右端)、川島氏(左端)、石脇氏(その隣)

ルワンダ農業動物資源省のアグネス・マティルダ・カリバタ大臣は「コーヒーはルワンダの主力輸出作物の一つだが、またまだ多くの課題がある。今回の調査をきっかけにより品質の良いものにするため、日本と協力していきたい」と言う。川島氏は「ルワンダコーヒーを『涙のコーヒー』としてチャリティーで買ってもらうのでなく、品質を認めた上で買ってもらえるようしたい」と今後の展望を語る。

一方で、ルワンダコーヒーを受け入れる市場づくりも重要だ。実は、日本は消費量世界第4位の大コーヒー消費国。ルワンダとの結びつきの可能性は決して低くない。JICAは、日本でのルワンダコーヒーの認知度を上げるべく、5月29日に神戸市で、7月27日に東京都渋谷区で、ルワンダコーヒーをテーマにした講演会「コーヒーサロン」を、日本サステイナブルコーヒー協会、ジェトロなどと共催。今後も各都市で開催する予定だ。

コーヒー栽培を通じた協力を展開

JICAは、これまで、天然林の減少・劣化が進むエチオピアで、森林を保全しながら質の高いコーヒーを栽培する「ベレテ・ゲラ参加型森林管理計画」や、東ティモールの「アイナロ県マウベシ郡コーヒー生産者共同組合支援事業」など、コーヒー栽培を通じた農村・農民支援を行ってきた。これらのプロジェクトで収穫されたコーヒーは、日本でも輸入・販売されており、特に「ベレデ・ゲラ・コーヒー」は、昨年、東海道新幹線の車内販売で「森林コーヒー」として提供されるなど、その品質の高さに注目が集まっている。

数年後に、品質の良いルワンダコーヒーがさらに市場に流通することを目指し、JICA、ジェトロを中心とした、ルワンダと日本をつなぐ支援が始まった。今後も、技術指導を中心に青年海外協力隊員と共に、ルワンダのコーヒー産業への支援を続けていく。


(注)川島氏は高校卒業後エルサルバドルの大学に留学しながら、同国の国立コーヒー研究所に入所。その後UCC上島珈琲株式会社でジャマイカやハワイ、インドネシアのスマトラ島でコーヒー産品を開発してきた実績を持ち、まだ発見されていないコーヒーを求めて世界中を飛び回ることから、「コーヒーハンター」と呼ばれるようになった。2009年からは、JALのコーヒーディレクターを務めており、機内で提供されるコーヒーの開発・監修も行っている。