地球の反対側にある「もう一つの日本」でビジネスチャンスをつかむ

−中南米民間連携調査を実施−

2013年8月13日

ブラジル・サンパウロでは、調査団参加者(右)が紹介する蚊を駆除する製品に注目が集まった

今年、戦後移住60周年(注1)を迎えたブラジルをはじめとするペルー、アルゼンチンなどの中南米各国では、150万人を超える日系人が巨大な日系社会を形成。日系人は各国の発展に貢献するとともに、日本との「架け橋」として重要な役割を担っている。JICAは長年、各国の日系社会に対し、融資や農業技術支援、日本語教育支援などを行ってきた。

JICAはまた、2008年に民間連携室(現民間連携事業部)を設置し、インフラ分野やBOPビジネスなどで開発途上国に進出する日本企業を支援している。東南アジアに進出する日本企業が圧倒的な中、中南米への進出は地理的な距離もあり限定的だ。

そこでJICAは中南米の日系社会と連携し、経済・社会開発につながる事業形成を目指して、第1回「中南米民間連携調査団」を今年2月末から約2週間、ブラジルとパラグアイに派遣。続いて7月中旬、第2回調査団をペルーとブラジルに派遣した。現地の日系社会や日系進出企業、現地政府などと意見交換を行い、ビジネス実現の可能性を調査した。

14の企業・組織から成る第2回調査団は、7月16〜19日にペルーの首都リマ、7月20〜26日にブラジルのサンパウロ、マナウスを訪問した。

ペルーでセミナー開催

セミナー後の個別面談で、水を浄化する製品のデモンストレーションを行う調査団参加者

ペルーは過去10年間の経済成長率が平均6パーセントを超え、環太平洋経済連携協定(TPP)や太平洋同盟(注2)に参加するなど自由貿易を推進しており、中南米の太平洋側の入り口として日本企業の進出先となる可能性を秘める。ペルーにはブラジルに次ぐ南米で2番目に大きな日系社会があるにもかかわらず、進出日系企業は約30社と少ない。

この潜在的市場への参入チャンスをつかむため、JICAは7月18日、「中南米民間連携セミナー」をリマで開催。調査団のほか、ペルー政府や現地企業関係者、日系人、進出日本企業関係者など100人以上が参加した。調査団参加企業との個別面談も行われ、リマの工場排水のサンプルの分析が依頼されるなど、具体的な成果にもつながった。

ブラジルで「ジャパンフェスティバル」に出展

ジャパンフェスティバルで同郷の日系団体と話し合う調査団参加者(右)

ブラジルのサンパウロは中南米最大の都市で、最大の日系社会を擁する。毎年、総来場者数が15万人を超える世界最大の日本に関する祭典「ジャパンフェスティバル」が開催されている。フェスティバルには日系団体や進出日本企業など多くの団体が参加し、日系人に限らずブラジル全土から参加者が集まる巨大な祭典となっている。

出展者として参加した調査団は、各企業が独自の技術をわかりやすく展示。来場者からの注目を集め、直接商談につながった企業もあった。

調査団はまた、サンパウロで日系人経営企業の要職者が集う「盛和塾」を訪問した。塾には医療、観光、食品など、さまざまな業種の日系人経営者が所属。ブラジルでの経営指南や意見交換を行う母体として発展してきている。「ブラジルで求められる経営マインドやリスク管理をじかに感じ取ることができた」「外国への進出検討は、パートナーや進出企業の経営者を知ることから始まる。よいきっかけとなった」と参加者は口々に語った。

日本企業と日系社会をつなぐ

調査団は多数の日本企業が進出するブラジル北部マナウスも訪問(後方はアマゾネス劇場)

ブラジルでは日本企業の進出促進に向け、政府や日系団体が積極的な活動を展開している。その一つがブラジル日本商工会議所であり、サンパウロで、多くの進出企業や進出を検討している企業とつながりを持つ。平田藤義事務局長は「ブラジルに進出している日本企業は約500社。この数は過去最高を記録しつつあるが、米国(約5,000社)やドイツ(約1,500社)の企業に比べてまだ少ない。大きな可能性のあるブラジル市場に日本勢が進出するためには、官民を挙げて応援する必要がある」と語る。

「ペルー市場の状況がつかめない中での現地出張は難しかった。調査団参加は、またとないチャンスになった」「参加してみてわかった、ブラジル市場の魅力や日系社会の存在が日本では認知されていない」と調査団参加者は語る。

2月に訪問した調査団の中からは、JICAの調査事業の活用や具体的な事業計画の検討のため、現地日系社会と連絡を取る企業も出てきている。JICAは長年築いてきた日系社会とのネットワークを生かして、高い技術力を持つ日本企業の進出を支援することで、中南米諸国の経済・社会開発にさらに貢献していく。


(注1)日本人のブラジル移住は1908年に始まったが、第2次世界大戦の影響で中断され、1953年に再開された。
(注2)コロンビア、チリ、ペルー、メキシコで構成された、加盟国間の経済的統合を目指す組織。さらにアジア太平洋地域との政治経済関係の強化も目標とする。