天皇皇后両陛下が帰国した青年海外協力隊員、日系社会青年ボランティアにご接見

2013年10月1日

(前列左から)黒崎さん、藤岡さん、田中理事長、山口さん、田川さん(後列左から)村上さん、武田さん、武下青年海外協力隊事務局長、吉田さん、大久保さん

約2年にわたる活動を終え、帰国した青年海外協力隊員と日系社会青年ボランティアの代表8人が9月9日、皇居で天皇皇后両陛下にご接見を賜り、派遣国での活動や生活について報告した。ご接見に先立って8人は、JICA本部(東京都千代田区)で、田中明彦JICA理事長と武下悌治青年海外協力隊事務局長に現地での活動成果を報告した。

天皇皇后両陛下は、1965年の青年海外協力隊の発足当初からボランティア派遣事業に関心をお持ちになり、1995年までは派遣前の隊員全員と帰国後の隊員の代表が、1996年からは帰国したボランティアの代表がご接見を賜っている。

今回、ご接見を賜ったのは、アジア、大洋州、中東、アフリカ、中南米の国々に派遣された青年海外協力隊員7人と日系社会青年ボランティア一人。

国立公園の保護と妊産婦ケア

病棟で現地スタッフと産後の栄養改善指導をする田川さん(中央)

吉田賢一さん(29歳、埼玉県出身)は、インドネシアの西ジャワ州にある国立公園に配属され、近隣の村落や小学校で高倉式コンポスト(注1)の指導と普及、ゴミの分別指導などの環境教育活動を行った。また国立公園の集客活動や登山道整備予算の獲得など、公園内の整備事業にも積極的に取り組んだ。

田川薫さん(29歳、岐阜県出身)は、ラオス南部サバナケット県の県立病院で産婦人科病棟の環境整備と安全な分娩を目指して活動した。感染性廃棄物、注射針などごみの分別徹底に根気強く取り組んだほか、産後の食事指導や感染予防のための分娩介助予防衣の使用・管理方法を指導した。

観光プロモーションと「遊びを通した学び」の保育

子どもたちと「運動遊び」の一つ、ゴム飛びをする黒崎さん(中央)

大久保和気さん(28歳、埼玉出身)は、パプアニューギニア有数の観光地マダン州の政府観光局で活動。日本人観光客のマーケットを拡大するため、既存施設を観光客向けに整備したり、ツアーガイド付きのパッケージツアーを開発したり、同観光局の日本語ホームページを開設するなど、マダン州の観光プロモーションに大きく貢献した。

黒崎久美子さん(32歳、茨城出身)は、エジプトの首都カイロ北西部カフルエルシェイク市で保育士の技術向上を目指す幼児教育に取り組んだ。「遊びを通した学び」の保育を取り入れ、発達段階に見合う遊びが一目で分かるポスターを作成するなど精力的に活動した。折り紙や絵画などの製作活動のヒントを集めた資料は多くの保育園で活用されている。

小学校の運営改善と医学療法診療の業務フローを改善

高校生にスワヒリ語版ラジオ体操を紹介する村上さん(手前)

藤岡美保子さん(38歳、兵庫県出身)は、セネガルのリンゲール県教育委員会に所属し、フランス語と現地語を駆使して村落部の小学校を巡回。地域住民と学校の橋渡し役を担った。授業参観や優秀な生徒の表彰など、さまざまな学校行事を企画し、村落部住民の学校教育に対する関心を高めるよう工夫した。

村上野志夫さん(30歳、京都府出身)は、タンザニアの首都ドドマがあるドドマ州の州立病院で理学療法業務を中心に活動し、理学療法士と看護アシスタントの知識や経験が融合するような業務フローを作成した。考案したスワヒリ語版ラジオ体操は運動療法の一つとして受け入れられ、患者や同僚が利用している。

海洋資源の保護と日本語の広報活動に注力

山口さんの授業で干支(えと)のちぎり絵に挑戦する生徒

武田淳さん(30歳、東京都出身)は、コスタリカのマヌエルアントニオ国立公園で海洋資源の保護に取り組んだ。魚類やウミガメの卵などの海洋資源の状況、公園領海内での違法漁業、資源の無断利用などについて社会調査を行い、天然資源を活用しながら自然保護につなげていく考え方を導入した。

山口明美さん(25歳、青森県出身)は日系社会青年ボランティアとして、ブラジルのイタペセリカ文化協会で子どもを対象に日本語を教え、各種日本語試験に向けた授業を展開した。日本語離れが進む学校での広報活動にも注力。折り紙で四季折々の壁紙を作成したところ、彩り豊かになった教室の中では日本語が活発に交わされるようになった。

ご接見の後、JICA本部で行われた報告会では、「自分の取り組みは小さなことだが、その積み重ねが大切だと感じた」「協力隊に参加して良かった」「両陛下のお人柄がとても温かく、落ち着いて話すことができた」などと感想を述べた。

ボランティアに参加したことで進路を見つめ直した人、派遣国に魅了されて現地に戻って活動を続ける人、日本で働きながら途上国の支援を継続する人など、今後の活動の場はさまざまだ。それぞれの経験を生かし、新たな可能性に挑む8人の飛躍が期待される。


(注1)株式会社ジェイペックの高倉弘二氏が開発したコンポスト化手法の一つ。果物の皮や腐葉土など現地で入手できる材料から発酵菌を培養し、有機ごみと混ぜ合わせて自然発酵させ、短時間で有機分の多くを分解することができる。