フィリピン台風被害に対する国際緊急援助活動を日本のマスコミに報告

2013年11月26日

記者からの質問に答える勝部コンサルタント。右は中村局長

11月8日から9日にかけてフィリピン中部を襲った大型台風30号によって甚大な被害を受けたフィリピンに対し、日本政府は、これまでに国際緊急援助隊医療チームの派遣、約6,000万円相当の緊急援助物資の供与、国際緊急援助隊自衛隊部隊の派遣を行い、約30億円の緊急無償資金協力を決定している。

上記の一連の協力に先立ち、国連災害評価調整チーム(United Nations Disaster Assessment and Coordination: UNDAC)第一陣として、台風通過直後の9日朝、レイテ島のタクロバンに入った、JICA国際緊急援助隊事務局の勝部司国際緊急援助コンサルタント(島根県出身)が19日に帰国したことを受けて、JICAは11月22日、都内で「フィリピン台風被害に対する国際緊急援助活動について」と題したマスコミ向け報告会を開催。勝部コンサルタントが緊急援助の現場の生の声を伝えるとともに、中村明国際緊急援助隊事務局長が医療チームの活動状況などを報告した。

タクロバンのUNDACで活動

台風で全壊した家

フィリピン政府は6日、大型台風の上陸に備えるため、国連人道問題調整事務所(United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs: OCHA)に、UNDACの派遣を要請した。日本からはOCHAの指名を受けた勝部コンサルタントが7日、現地に向かった。勝部コンサルタントを含む6人で構成されたUNDACチームは、フィリピン政府や他の援助国、援助機関が効率的に活動を行えるよう、現地で情報収集し、被害状況の評価や連絡・調整などを行った。チームはマニラの国連事務所に集結した後、8日未明にタクロバン入りを試みたが、強風のため飛行機が飛ばず、タクロバン空港に到着したのは、台風通過後の9日だった。

「今回フィリピン政府がUNDACに求めた任務は、災害の評価と支援調整の二つ。6人中4人は『現地活動調整センター』を立ち上げるため、市内に移動。各国からの支援チームや物資の入り口となる空港に『受け入れセンター』をつくるため、私を含めた二人が、空港に残った」と勝部コンサルタントは状況を紹介。受け入れセンターは、調整の対象となるNGOや各国の援助チームなどに空港で登録を促し、市内の現地活動調整センターへ送る。効率的に支援が行われるよう、水先案内人の役目を果たした。

勝部コンサルタントは9日、市内のホテルに行く車がないため、ガラスや泥が飛び散る空港に泊まらざるを得なかった。そんな中でも、早速、近くの村へ調査に行き、「とにかく水と食料が必要」「悪臭を何とかしてほしい」などという要望を多数聞いた。

10日になると、各国の援助チームが到着し始めた。「UNDACの仲間が迎えに来てくれた車で市内に向かい、関係者が集まるミーティングに参加した。市内では略奪が横行し、銃声や炸(さく)裂弾などの音が鳴り響いていた」と勝部コンサルタントは切迫した状況を語った。ミーティングでは「治安維持を最優先する」ことが強調され、11日にはマニラから200人の警官が送り込まれた。

12日、各国の援助チームが続々と入ってくると燃料不足が深刻化。「現地の輸送手段が手配できず、援助チームが空港に足止めされる状況が続いた。私の任務は空港を管理する政府軍と交渉し、到着したチームの交通手段をいかに確保するかだった」と勝部コンサルタントは言う。15日ごろには市内の携帯電話ネットワークなどが一部復旧し、状況が緩和されていった。

医療チーム1次隊、2次隊を派遣

テント内で診療を行う医療隊員

続いて、中村局長が緊急援助隊の医療チームの派遣と物資の供与について紹介した。緊急援助隊には救助、医療、専門家チームと自衛隊の派遣の4種類がある。今回は台風被害で現地の医療機関の機能が著しく低下したことから、負傷者を含む被災地住民への医療の提供が急務となり、医療チームを編成した。医療チームは約30年前の1982年、JICAを事務局として発足。個人の意思で医師、看護師、薬剤師、調整員など1,000人以上が登録しており、これまで62回の派遣実績がある。

ボランティアのため、派遣期間は2週間と定め、継続支援を必要とする場合は、別チームを派遣する。今回は1次隊27人が11月11日から派遣され、24日に帰国した。2次隊29人は20日に出発し、現地で活動中。12月3日に帰国の予定だ。医療ニーズが継続するようであれば、3次隊派遣が検討される可能性もある。「タクロバン市内のリサール公園に三つの診療室を用意し、1日100〜150人程度の患者の診療を行っている」と中村局長は報告した。

衛生と安全の確保が課題

敷物にも屋根にもなる便利なプラスチックシートを切って配布

援助物資は、テント500張、プラスチックシート620巻、スリーピングパッド2,000枚、浄水器20台、発電機20台、水ペットボトル7万本を供与した。中村局長は「住居を失った避難者が多数発生しているため、テントやプラスチックシートが重宝がられていると聞く。また水が不足しているという報告から、ペットボトルを大量に供与した。17日からレイテ島各地の避難所で配布が始まっている」と現地の状況を語った。

活動の今後について中村局長は、「タクロバン以外の地域に国際社会の目を向けていくことが課題だ。日本の医療チームは、18日からレイテ島の北にあるサマール島まで車で行き、巡回診療を行っている。UNDACなど他の支援チームと協力し、被災国のニーズを把握しながら、今後緊急時から復旧への支援を切れ目なく続けていくことが大事だ」と述べた。

勝部コンサルタントは、個人的な見解であると前置きした上で、「喫緊の課題はシェルター(住居)と安全の確保の二つ。足元が濡れていて不衛生な状況は、被災者にとって精神的にきつい。また安全が確保できなければ、支援も進まない」と語り、「大きな災害が起こっても注目は一過性で、時間がたつと忘れられてしまう。今回の被害は甚大で、復興には何十年もかかるという印象を持った。長い目で支えていくことが必要だ」と訴えた。