アフリカの未来を担う女性起業家を支援

−林横浜市長、ケネディ大使がシンポジウムで講演−

2014年2月12日

カラフルな民族衣装に身を包んだアフリカ女性のパワーがみなぎる

JICAと横浜市は2月3日、「アフリカの輝く女性とともに成長を」をテーマに、横浜シンポジア(神奈川県横浜市)で公開シンポジウムを開催した。横浜をはじめとする首都圏の女性起業家や、アフリカに関心を持つ日本企業の関係者など約300人が参加。林文子横浜市長、キャロライン・ケネディ駐日米国大使が基調講演を行い、後半はパネルディスカッションを通じて、アフリカの女性起業家支援やビジネスを通じた女性のエンパワーメントについて議論した。

女性のエンパワーメントは日米の国家的優先課題

田中JICA理事長

2013年6月に横浜で開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で採択された「横浜行動計画」の中で、日本政府は「日アフリカ・ビジネスウーマン交流プログラム」の実施を表明。その第一弾として、1月26日〜2月6日に「アフリカ女性起業家支援セミナー」が実施され、プログラムの対外発信の機会として、公開シンポジウムが開催された。また、2013年12月、米国のジョー・バイデン副大統領が来日した際に両国政府が合意した日米グローバル協力の一環で行われた最初の取り組みでもある。

岸外務副大臣

シンポジウム冒頭、JICAの田中明彦理事長は、ケニアでJICAが実施している小規模園芸農民組織強化計画プロジェクト(SHEP)(注)について取り上げ、ジェンダーの視点を大切にしながら、今後アフリカ10ヵ国に展開していく予定であることを紹介。「このシンポジウムが、日本とアフリカがアイデアをを交換し、学び合う機会になれば」と述べた。

続いて岸信夫外務副大臣が、日本が今後も成長を続けていく上で重要なカギとなるのは女性の社会進出であり、女性のエンパワーメントはアフリカの発展を推進していくためのキーワードでもあるとし、「今後、日米でアフリカ女性の支援のためにどのような連携が可能か、引き続き検討していきたい」と語った。

林横浜市長

基調講演のトップバッターとして登壇した林市長は、さまざまな壁にぶつかってきた自身のビジネス経験を振り返りながら、「女性のしなやかな感性や多様で柔軟な視点は、ビジネスを展開する上で非常に大切」と女性の社会参画の意義を強調。「しかし日本では、重要な意思決定の場に女性が少ない状況がある。だからこそ、日本で一番女性が働きやすい都市の実現を公約に掲げ、保育所待機児童ゼロや女性の起業支援などを行っている」などと、横浜市の取り組みを話した。

ケネディ大使

続いてケネディ大使は、日米両国で世界の開発支援と人道支援の4割を担っていることに触れ、「両国は女性のエンパワーメントを国家的優先課題に挙げている。グローバルな経済発展に向けて、さらに緊密に連携を強化していく」と述べた。また、父のジョン・F・ケネディ元大統領が約50年前に米国国際開発庁(USAID)を設立したことに言及し、「このシンポジウムで始まる会話が、私たちに共通する未来の発展につながることを願う」と語った。

BOPビジネスを通じて南アの小規模農家を支援

サカタのタネ田崎取締役

日本企業によるアフリカビジネスの事例として、横浜市に本社を置く株式会社サカタのタネ田崎正光取締役・品質管理本部長が、JICAと連携して南アフリカ共和国で行っているBOPビジネスを紹介した。

花と野菜の種子の卸売を行う同社は、海外での売上が6割を占める(2013年末時点)。50年前から種子をアフリカに輸出しており、アフリカとのかかわりは長い。2000年に南アフリカに現地法人を設立し、アフリカ向けの野菜の種子を開発している。

このような経験から、今年1月からJICAと連携して、南アフリカでBOPビジネスを開始。マイクロファイナンス企業、現地のNGO、NPOと連携して、農村で野菜栽培技術の研修を行っている。田崎取締役は「女性の感性や視点は、介護、幼児教育、民芸品、食料品加工などの分野で大きな可能性を持っていると思う。農業分野で女性の果たす役割は大きい。そのような農村の女性起業家をわが社では支援していきたい」と締めくくった。

女性起業家が地域を変え、世界を変える

左から司会を務めた田中由美子JICA国際協力専門員、エチオピアのテドウラさん、タンザニアのオコエディオンさん

シンポジウム後半には、「起業を通じた女性のエンパワーメント」と題し、アフリカ、日本、米国の女性起業家によるパネルディスカッションが行われた。「アフリカ女性起業家支援セミナー」の参加者から、エチオピアのフィキルタ・アディス・テドウラさん、タンザニアのエレン・オタル・オコエディオンさん、南アフリカ共和国のボンゲウェ・カリさんの3人のほか、ゲストスピーカーとして株式会社VM代表取締役社長の渡辺順子さん、米国で活躍するナイジェリア出身の建築家、チンウェ・オハジュルカさんが登壇した。

左から南アフリカのカリさん、日本の渡辺さん、米国のオハジュルカさん

エチオピアのテドウラさんは、アジスアベバに本社を置くファッション関係企業を経営するデザイナーで二児の母。心理学者として子どもたちの社会問題に取り組むフルタイムの仕事をしていたが、出産を機に起業。高校生のころから興味を持っていたファッション業界に挑戦し、2009年からニューヨークの「アフリカ・ファッション・ウイーク」への出品をはじめ、欧米での活動も始めている。「10人の従業員と地方に住む76人の刺しゅう工や機織工などの生産者と仕事している。刺しゅうなどは、自宅で子どもを育てながら収入を得られる仕事」と語り、女性の雇用を拡大することで貧困の低減を目指している。

タンザニアのオコエディオンさんは、ダルエスサラームで企業の広報やブランド開発、ドキュメンタリー・フィルム制作を行う企業を経営する傍ら、大学生や小学生のメンターを務める。「人々が抱える社会的な問題を、メディアを通して一般聴衆に伝え、意思決定者に働きかけるのが私の仕事。保健サービスが行き届かない農村のドキュメンタリーを放映したことで、医者が派遣された。メディアの力で政府を動かすことができた」と胸を張る。

農村に建つカリさんの近代的な孵(ふ)化施設。地域の雇用拡大に役立っている

南アフリカのカリさんは農村出身の起業家。養鶏・養卵業を営む。2008年に南アフリカ全国女性農業大賞を最年少で受賞した。「目指したのは先駆的な農業開発事業。養卵に使われるブロイラーはアフリカの風土に合わないため、土着のニワトリを育て、毎日2万羽のひなをかえしている。それを女性仲買人に販売してもらっている」と自身の事業を紹介した。「南アフリカの養鶏業は白人男性中心で門戸が閉ざされていたため、インドに飛び、ビジネスパートナーを見つけた」など、起業時の苦労とチャレンジを語った。

日本の渡辺さんは出版社の編集者として活躍した後、出産を機に退職。子育て中に、社会からの疎外感や仕事への情熱を感じ、1999年に地域情報誌『ビタミンママ』を創刊。現在は雑誌、フリーペーパーの発行に加えて、「起業したい、自分を高めたいという女性のためのスキルアップセミナーや、子育て中の親子が参加できるイベントを開いている。今日、アフリカの方々の話を聞いて、日本は豊かな国なので甘いところがあると感じた。子育てとの両立は無理、スキルがないなど、マイナスな気持ちを持ってしまう人が多い。自分が起業して仕事をしていくことが社会の役に立ち、将来、子どもたちの役に立つと思って起業してほしい」と力強く語った。

米国で活躍するナイジェリア生まれの建築家オハジュルカさんは、省エネ・低コストのエコハウスを開発・建設する会社を経営しており、現在はエコハウスをナイジェリアで普及することに尽力している。起業のきっかけは、USAIDによるアフリカ出身者を支援するビジネスプランコンテストで、エコハウスのモデルを出展して優勝したこと。「米国で暮らしている建築家がナイジェリアのために何ができるかと考えた。ナイジェリアでは1万7,000戸もの住居が不足している。そして生まれたのが、現地の気候を生かし、無駄なエネルギーを使わないエコハウス。今ではナイジェリアだけでなく、他のアフリカの国々からもエコハウス建設の要望がきている」と拡大していくビジネスを語った。

ビジネスで直面した問題として、ほぼ全員が資金へのアクセスを挙げ、社会の仕組みと戦い続けていることがうかがわれた。カリさんは「私たちのビジネスで、国を変えようではありませんか。ルールを変えてもいい。私たちの可能性を花開かせましょう」と聴衆に呼びかけた。

地域に根差した女性起業家同士が交流

横浜市の起業講座を修了した女性起業家の焼き菓子店を訪問

パネルディスカッションに登壇した3人が参加した「アフリカ女性起業家支援セミナー」は、1月26日から2月6日、JICAがアフリカ7ヵ国から14人の女性起業家やその支援を担う政府関係者を招いて実施した。7ヵ国の内訳はエチオピア、ガーナ、タンザニア、ナイジェリア、マラウイ、南アフリカ、ルワンダ。横浜市や相模原市、広島県などの女性起業家を支援する行政サービスや女性起業家同士の相互サポートの事例を視察するとともに、地域に根ざした日本の女性起業家と意見交換を行った。

セミナーに参加したタンザニア経済産業省中小企業局のコンソラタ・デログラティアス・イシェバビ局長は、「横浜市のように、日本では自治体による起業家支援の仕組みが充実している。シェアオフィスや有望なビジネスプランへの融資、先輩起業家が相談に乗るメンター制度などの支援制度を自国でもつくりたい」と述べた。

横浜市のメンター事業に参加した女性起業家のキッチンスタジオで和菓子作りを体験するセミナー参加者

ガーナ貿易産業省政策評価課のローズ・ツオヘイ次席は「日本の起業家が立ち上げたビジネスは独創的で社会性が高い。また日本ではインターネットを利用したビジネスで起業する女性が多い。ITに強い大卒の若い女性を対象にインターネットを活用したビジネスを紹介したい。また、理論でなく実践、自身の経験を語れる女性起業家を講師に迎えた研修を行っていきたい」と今後の展望を語った。

セミナー参加者は「今回限りではなく、継続的に日本とかかわっていきたい」と口をそろえた。「日アフリカ・ビジネスウーマン交流プログラム」としてJ ICAは、今後も毎年、アフリカの女性起業家や女性のビジネス支援を行う行政官を日本に招く予定だ。アフリカと日本の女性起業家同士のネットワーク形成やビジネスの拡大に役立つよう、プログラムをさらに充実させていく。

(注)Smallholder Horticulture Empowerment Project。小規模農家が市場に対応した栽培や営農、輸送の課題に自ら取り組めるよう能力強化を図り、小規模園芸農家の収益の向上を支援することを目指した。現地の生産者の主流が女性であることから、意思決定過程への女性の参画を確保するなど、積極的にプロジェクトでのジェンダー主流化を図った。