総合的で環境を重視した持続可能な支援(ラオス)

−ラオス計画投資大臣に聞く−

2014年2月18日

ドゥアンディ計画投資大臣(右)と武井ラオス事務所長

ラオスはインドシナ半島の中央に位置し、周囲をカンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー、中国の5ヵ国に囲まれるメコン地域の要衝だ。近年は鉱物資源、水力発電分野の成長などを背景に着実な経済発展を遂げ、ミレニアム開発目標(MDGs)(注1)の達成と2020年までの後発開発途上国(LDC)(注2)からの脱却を目指している。しかし地方部ではいまだに社会サービスへのアクセスが困難で、保健や教育の分野でMDGsの達成が危ぶまれている。

JICAのラオスへの支援は、1965年に青年海外協力隊を派遣したことに始まる。その後1996年にJICAラオス事務所が開設され、2008年には旧国際協力銀行(JBIC)の円借款業務がJICAに統合されたことから、円借款から無償資金協力、技術協力、ボランティア派遣までさまざまな形の支援を行っている。

現在は、ラオス政府が目指すバランスの取れた経済発展を支援するため、JICAは経済・社会インフラ整備、農業の発展と森林の保全、教育環境の整備と人材育成、保健医療サービスの改善を重点分野としている。さらにASEANが進める経済統合による連結の強化と域内の格差是正に役立つ支援を目指している。

日本の国際協力開始60周年(注3)の今年、武井耕一JICAラオス事務所長が、ソムディ・ドゥアンディ計画投資大臣に、これまでの日本のラオスに対する支援と、2015年にスタートするASEAN共同体(AEC)時代におけるJICAの貢献について聞いた。ソムディ大臣はラオスの社会経済開発を担う政府機関、国家計画委員会に1983年に入省以来、財務大臣、現在は計画投資大臣としてJICAとのかかわりは長い。

国民の生活向上に貢献

1月10日、ビエンチャン国際空港ターミナル拡張事業への円借款貸付契約が調印された

武井:これまでのラオスに対するJICAの支援をどのように評価していますか。

ソムディ:まず日本の支援はラオス政府の要求に合致しています。特にワッタイ空港(ビエンチャン国際空港)の整備(注4)、国道9号線(注5)、ナムグム第1ダムの拡張(注6)、パクサン-パクボ送電線(注7)などのプロジェクトは、ラオスの社会経済開発に大きな影響を及ぼしています。そのほかには、特に保健、教育分野へのアクセスがよくなるなど、さまざまなプロジェクトがラオス国民の生活を向上させました。

武井:計画投資省は国内の投資プロジェクトの実施や海外援助の受け入れなど、さまざまな開発活動を統括しています。投資・支援を行う国々や国際機関なども多い中で、日本の支援の特徴はどのようなものでしょうか。

ソムディ:日本の特徴は、多様な分野、手法による総合的な支援です。インフラ関係の大型プロジェクトが年間1、2件あり、各年で公務員約80人がJICAの短期研修を、約20人が長期研修を受けています。また災害時の緊急援助や不発弾処理に対する支援のほか、送電線やダム建設、経済特別区の整備など円借款のプロジェクトもあります。日本の支援は目的が明確で、どのプロジェクトも環境を重視し、持続可能な社会を想定しています。例えば2010年に開始した「JICA-ASEAN連携ラオスパイロットプロジェクト」(注8)では、「Clean, Green, Beautiful Laos(清潔で環境に優しく美しいラオス)」がスローガンとなっています。

また、ラオスにおいて、日本の支援額はドナー間で毎年第1位となっています。個人的な意見ですが、無償資金協力による事業実施の際、現地企業が参加できるような仕組みの検討をお願いできればと思います。

武井:現地企業の活用を前提とした無償資金協力の案件も少しずつ出てきています。ラオスでは南部での学校建設や保健センター建設の案件がそれに当たりますが、全体の中ではまだ限られています。ご指摘を踏まえて、どのように改善できるか考えていきたいと思います。

AECに向けて中小企業の強化と人材育成を

ドゥアンディ大臣

武井:2015年12月にAECが発足すると、ラオスを含む10ヵ国が一つの経済圏となり、モノ、サービスなどが国境を越えて自由に移動するようになります。2015年以降のラオス経済、社会の見通し、またその中でJICAへの期待は、どのようなものでしょうか。

ソムディ:AECにラオスが加入できれば、道路など交通インフラ整備が進み、域内の交流が活発になると思います。そのとき問題になるのは、ASEAN新旧加盟国間(注9)の格差です。特に教育レベルや経済発展、商業、投資、そして輸出入などの面で格差があります。ラオスの国民は大多数がまだ伝統的な生活をしています。農業や家族経営の商店を営む人が大半で、産業が未成熟なため、食品や日用品などの生産はタイ、ベトナムまたは中国に頼っています。人材開発が遅れているため、技術者などの労働力も外国に頼らなければならないところもあります。

武井所長

現在の最優先課題はインフラ整備です。輸出入や物流がスムーズに行えるように空港や道路、橋などを整備する必要があります。またASEAN域内で競争できるよう、人材育成に力を入れていきたい。中小企業を強化して他国に進出できるようにしたり、ASEANの先行加盟国が新加盟国に産業拠点を移せるように準備をしていきたいと考えています。

本音で本気の仕事に共感

タイ国境のサバナケットとベトナム国境のラオバオを結ぶ国道9号線は、東西経済回廊(ベトナム-ラオス-タイ-ミャンマー)の一部として発展が期待される

武井:国家計画委員会、財務省、計画投資省と、長年ラオス政府でJICAのプロジェクトに携わってきて、特に印象に残っていることがあれば聞かせてください。

ソムディ:ビエンチャン国際空港、第2メコン橋、国道1号線、国道9号線などのインフラ整備はもちろん、水道分野での技術協力プロジェクト(注10)は、大きなインパクトがありました。安定的な都市給水は国民にとって重要な課題ですから。

個人的な思い出としては、国家計画委員会に勤務していた1980年代から、財務省、今の計画投資省でも青年海外協力隊の隊員や専門家と仕事をしてきました。一緒に仕事をしていてわかるのは、皆まじめで目標達成に向かって努力していることです。本音で本気で仕事をしてくれました。現在、計画投資省で一緒に仕事をしている鈴木専門家(注11)の真摯(しんし)なアドバイスにも、大変助けられています。われわれの意見を尊重し、ラオスの法律に則って仕事を進めてくれています。

さらに望むことがあるとすれば、協力隊や専門家以外の多くの日本の人々にラオスを訪ねていただきたいということです。ラオスを旅して、もっとラオスを知ってもらいたいと思います。

トンシン・タンマヴォン首相(前列左から5番目)を表敬訪問するJICAボランティア(2013年6月19日)

武井: JICAの支援は資金協力やインフラ整備だけでなく、専門家やボランティアという人を介した協力も特徴の一つではないかと思っています。これまでラオスで活動した多くのボランティアや専門家が、ラオスに愛着を感じて帰国しました。そして再び専門家、ボランティアとしてラオスに戻ってくる人も多いように感じます。

ラオスは2015年にAECへの加盟、2020年にはLDC脱却という大きな目標に向かって進んでいます。JICAはラオス政府と協力しながら、支援を継続していきます。


(注1)Millennium Development Goals 。2000年の国連総会で採択された2015年までに達成すべき八つの目標。極度の貧困と飢餓の撲滅などがある。
(注2)国連開発政策委員会(CDP)が認定した基準に基づく、特に開発の遅れた国々。
(注3)日本は1954年にコロンボプランに加盟して政府開発援助(ODA)を開始した。
(注4)ビエンチャン国際空港拡張計画(2011〜13年)、 ビエンチャン国際空港ターミナル拡張事業(2014年調印)。
(注5)国道9号線改修計画(第1期1999年署名、第2期2000年署名)、国道9号線(メコン地域東西経済回廊)整備計画(2012〜14年)。
(注6)ナムグム第一水力発電所拡張事業(2013年調印)。
(注7)メコン地域電力ネットワーク整備事業(2005年調印)。
(注8)ラオス、日本、ASEAN事務局の三者が協力し、ASEAN域内開発格差の是正を支援する。観光、農業、環境管理の3分野が対象。協力期間は2010年10月〜2015年10月。
(注9)ASEAN10ヵ国中、先行加盟国はインドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシアの5ヵ国。新規加盟国はカンボジア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス。
(注10)水道事業体人材育成プロジェクト(2003〜06年)、ビエンチャン市上水道施設拡張計画(2006年署名)、開発調査「ビエンチャン市水環境改善計画調査」(2009〜11年)、水道公社事業管理能力向上プロジェクト(2012〜17年)など。
(注11)経済政策・投資促進アドバイザーとして計画投資省に派遣中の鈴木基義JICA専門家のこと。


【ソムディ・ドゥアンディ氏略歴】1952年生まれ。旧ソ連で経済・計画修士号を取得後、1983年国家計画委員会(SPC)総合計画局専門職員となる。在職中フランスに留学し、1991年フランスで政治経済学修士号を取得後、1999年SPC総合計画局長に就任。その後計画協力委員会(CPC)副委員長、財務大臣などを経て、2011年7月より現職。