悲劇から20年、復興を遂げたルワンダの「今」

−奇跡の経済成長下でビジネスの可能性を探る−

2014年4月17日

定員を上回る参加者数からルワンダへの関心の高さがうかがわれた

3ヵ月間で約100万人が殺害されたといわれる1994年のルワンダ大虐殺から、4月で20年がたつ。この20年間にルワンダは「アフリカの奇跡」と呼ばれる成長を遂げ、世界銀行の報告書「ビジネス環境の現状(Doing Business 2014)」でサブサハラ・アフリカ地域第2位にランクインするなど、投資先として注目を集めている。

この機会をとらえてJICAは、4月4日、「虐殺から20年、復興するルワンダの『今』−支援のあり方、「奇跡」の経済成長下でのビジネス可能性を考える−」と題した公開セミナーをJICA市ヶ谷ビル(東京都新宿区)で開催。ルワンダに関心を持つ学生や支援機関、NGO、ルワンダでのビジネスに関心を持つ企業などから約150人が参加した。

人を軸に復興を支える

編み機の使い方を学び、セーターやマフラーなどのニット製品を作る訓練生(右端が講師)

「虐殺から20年、ルワンダの現状と支援のあり方」と題したセミナー第1部では、ルワンダの概要の紹介に続き、1995年からルワンダ支援に携わる小向絵理JICA国際協力専門員をモデレーターとしてパネルディスカッションが行われた。ルワンダでの平和構築プロジェクトに従事した原田真帆 JICA専門家、日本ルワンダ学生会議の白川千尋代表、NGO「e-Education Project」の三輪開人共同代表が登壇した。

原田専門家は2011年から3年間、「障害を持つ元戦闘員と障害者の社会復帰のための技能訓練及び就労支援プロジェクト」に従事してきた。「技能訓練が終わっても、ルワンダにはまだ就職できる企業が十分にない。そのため、自分たちで仕事を生み出そうと、元政府軍・反政府軍、障害者・非障害者の壁を越えて、近隣に住む訓練修了生が力を合わせて協同組合を立ち上げ、収入を得ているケースも出てきている」と経験を基にしたルワンダの実情を語った。前身のプロジェクトで対象とした障害を持つ元戦闘員だけでなく、一般の障害者も対象とし、平和構築と障害者支援、技能訓練などの複合的な側面へ取り組んだ成果が、国民融和への貢献にもつながってきている。

左から三輪共同代表、白川代表、原田専門家

日本ルワンダ学生会議の白川千尋代表は、高校生のときに映画「ルワンダの涙」を見てルワンダに興味を持ち、大学2年で日本ルワンダ学生会議に参加。「相互理解」を理念にルワンダの学生を日本に招いたり、ルワンダを訪ねたりして交流を行っている。「異なる文化や考えを理解しようとする試みを通じて、相手に対する接し方を学んだり、異文化に対する寛容性を身に付けたりすることができた」と述べた。

NGO「e-Education Project」の三輪開人共同代表は、教師も教材も不足しているルワンダの農村部に質の高い教育を届けるため、ルワンダの大学生に協力を求め、科学の実験授業を中心としたDVDを作成。これまで500人以上の中・高校生に映像による教育を提供してきた。「ルワンダの大学生には、自分たちがこの国をつくっていくという気概がある。さらに下の世代がDVDを使って勉強できるように、活動を広げていきたい」と今後の抱負を語った。

投資環境はアフリカ第2位

投資環境の良さをアピールするムリガンデ大使

「ルワンダは汚職撲滅や投資環境の整備を進めており、ICT産業を中心とした投資先として脚光を浴びている」とチャールズ・ムリガンデ駐日ルワンダ大使は「ルワンダにおけるビジネスポテンシャル」と題した第2部の基調講演の冒頭で語り、ルワンダ成長の背景と2020年に中所得国入りを目指す経済政策を端的に説明した。

ルワンダの首都キガリは東アフリカ諸国の中で最も犯罪率が低く、世界銀行の調査によると政治的安定度は中国やインドよりも高い。ルワンダ語、英語、フランス語、スワヒリ語が使えること、ウガンダ、コンゴ民主共和国、タンザニア、ブルンジと接する立地条件を生かして東アフリカのハブを目指している。

ムリガンデ大使は「国土の98パーセントに光ファイバー網が敷かれ、年内には4G回線の使用が可能になる。法人設立の手続きはインターネットで6時間できる。また海外投資の窓口は、ルワンダ開発局に一本化しており、投資家の便宜を最大限に図っている」と締めくくった。

ルワンダ人の勤勉さはモノづくりに向いている

左から池田主幹、田中代表取締役、川島代表取締役

続いて、JICAの小林広幸前ルワンダ事務所長の進行でパネルディスカッションを実施。株式会社ミカフェートの川島良彰代表取締役(東京都港区)、レックスバート・コミュニケーションズ株式会社の田中秀和代表取締役(東京都千代田区)、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)の池田篤志途上国貿易開発部主幹が登壇し、ルワンダでのビジネス展開について議論を深めた。

2011年からルワンダのIT企業と共同でソフトウエアの開発を行っているレックスバート・コミュニケーションズの田中代表取締役は「通信環境が整っていればIT産業に地理的距離は関係ない。ルワンダで行っている仕事を日本に居ながらリアルタイムで確認できる。ルワンダ人は勤勉でモノづくりに向いている」と仕事のしやすさを述べた。

世界のコーヒー農園を渡り歩き「コーヒーハンター」の異名を持つミカフェートの川島代表取締役は、2013年、ルワンダコーヒーに関するJICAの調査に参加した。今後はコーヒー振興のためにルワンダに派遣される青年海外協力隊員に、コーヒーの栽培技術をはじめとする研修を行う予定だ。川島氏は自身の経験を基に「ルワンダ人は向上心に富み、学んだことはすぐに実践する。ただ植民地時代の習慣からコーヒー栽培をビジネスではなく、労働としてしかとらえていないため、生産者の意識を変えていけるかどうかがカギだ」と語った。また「ルワンダ人はチャイ(茶)を好み、コーヒーを飲む習慣がない。自分で飲まなければおいしいコーヒーは作れない」と国内市場を活性化する必要性も訴えた。

「アガセチェ」と呼ばれるルワンダの伝統的なバスケット。写真のバスケットはルワンダ国旗を模したデザイン

アフリカ産品の輸出マーケティングを担当しているジェトロの池田主幹は、日本とルワンダとのビジネスマッチングを支援している。ルワンダ・バスケットの輸入販売を行う株式会社ルイズビィ(静岡県静岡市)を例に、市場のニーズ(需要)とルワンダのシーズ(供給)をマッチングさせることの重要さを語った。当初は納期に製品が届かない、届いても商品のサイズやデザインが違うといった問題があったが、現地でワークショップを開催し、詳細なマニュアルを作成したことなどで、輸入販売にこぎ着けてきたという。池田主幹は「アフリカをひとくくりで考えるのではなく、国ごとに見る必要がある」と強調した。

4時間を超えるセミナーにもかかわらず、会場では最後まで活発な議論が行われ、セミナー終了後もムリガンデ大使や登壇者に対して参加者から個別の質問が続いた。参加者からは「想像以上に経済発展が進んでおり、アフリカのハブとしてのポテンシャルを感じた」「ルワンダの人々が日本人気質に近いことが意外だった。人材の育成に可能性を感じた」といった声が聞かれ、ルワンダの潜在力の高さが伝わるセミナーとなった。

JICAはIT立国を目指すルワンダを支援するため、2001年から青年ICT省に専門家を派遣し、国家ICT戦略策定に対する政策アドバイスを継続しているほか、ルワンダの行政官を日本に招き、情報通信分野の修士号取得を支援している。また経済発展の礎となる運輸、電力、水道などのインフラ整備や農業の振興に加え、ルワンダの持続的成長を支える人材育成に、引き続き注力していく。