【国際協力60周年】共に歩んだ30年、西アフリカの水産業を支える(セネガル)

2014年7月22日

日常、スーパーマーケットで見かけるタコやイカ、これら水産物の原産地を見ると、日本から遠く離れた西アフリカのセネガル産のものがある。最近は、セネガル産のタチウオやアワビまで見かけるようになった。実は、セネガルの水産業の発展の裏には、30年以上にわたる日本の協力がある。

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活気あふれるダカール中央卸売魚市場。朝4時から10時ごろまで大変なにぎわいを見せる

魚との関係が深い国、セネガル

セネガルの国民的料理ともいえるチェブ・ジェンには魚が欠かせない。たらいのような大きな皿に盛りつけ、家族・友人みんなで食べる

西アフリカのサハラ砂漠西南端に位置しているセネガル。日本の半分ほどの国土に約1,310万人が暮らしている。首都はダカール。不安定な西アフリカ情勢の中、かつて一度もクーデターを経験したことがない成熟した民主国家としても知られている。

大西洋に面したセネガルの沖合には、寒流と暖流がぶつかる潮目があり、豊富なプランクトン目当てに多くの魚が集まってくる。この恵まれた自然環境により漁業が盛んで、総就業人口に占める水産業の割合は17パーセント、輸出総額に水産業が占める割合は13パーセントとなっており、石油製品とリン酸に次いで国家経済の発展に大きく貢献している。また、セネガル国民は魚好きで、一人当たりの魚消費量は年間28キログラム(日本は56キログラム、2009年 農林水産庁)で、動物性タンパク質の約7割を水産物から得ているといわれている。国の代表的な料理も「チェブ(米)・ジェン(魚)」の「魚ご飯」であり、日本同様、極めて魚との関係が深い国でもある。

日本と共に歩んだ30年

ダカール中央卸売魚市場の外観。休みは年に二日のみ。営業時間中は人通りが絶えない

日本は、1970年代後半からセネガル零細漁業の漁獲、水揚げ、加工、流通などの支援を行い、現在のセネガルの水産業の基礎づくりに大きくかかわってきた。現在も年間漁獲量の90パーセントが零細漁業によるもので、水産はセネガルで「貧困削減」「雇用創出」「食料安全保障(国民の栄養源)」「経済」に貢献する重要なセクターとなっている。

1987年、日本はセネガル南部地域の零細漁業振興を目的として、大西洋を望む南西部ファティック州の漁村ミシラに「ミシラ漁業センター」を設立し、専門家や青年海外協力隊員を派遣して技術協力を行った。89年には、首都圏に新鮮で衛生的な水産物を供給することを目的に「ダカール中央卸売魚市場」の建設を支援、97年の施設の改修・拡充工事を経て、現在の市場の取扱量は年間約4万トン、利用者は1日当たり約8,500人に上り、活発に利用されている。また、2001年には内陸部へ安全でより鮮度の高い水産物を供給することを目的として「カオラック中央魚市場」の建設を支援。このほか「カヤール水産センター」「ロンプール水産センター」の建設支援を含め、日本の協力で魚市場が建設、改修されたことによるセネガル水産業へのインパクトは大きく、現在でも1日当たり約2万人の漁業関係者がこれら水産施設を利用しており、セネガル水産業の飛躍的な発展に貢献している。

女性が主役の魚市場

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(写真左)協力隊員によって導入された垂下式カキ養殖は、少しずつ生産量が拡大、(写真中)垂下式カキ養殖連(種苗のついた貝殻を15〜20センチメートル間隔でタール染縄などにつるしたもの)を作るカキグループの女性たち、(写真右)現在のダカール中央卸売魚市場。多くの女性が魚の買い付けに訪れ、この市場からダカール市内の魚小売市場に魚が流通していく

にぎわいを見せる魚市場や加工場や水揚げなどの水産施設では、利用者の多くが女性であることに驚かされる。水産物の加工から販売、仲卸から仲買まで、西アフリカ地域の水産業では女性が重要な役割を果たしている。以前は、不衛生な状態で魚取引や加工を行っていたが、施設整備や技術指導を通じて、衛生的に作業ができるようになったことで、日本の協力は女性の社会進出にも一役買っている。より多くの女性が活躍できるように、女性グループを支援したことも日本の協力の特長で、現在では、セネガル国内だけでなく、近隣国の魚市場のモデルとして、内外からの視察が絶えない状況だ。

ダカール中央卸売魚市場のエラージ・ゲイ技術部長は、「1995年からダカール中央卸売魚市場に勤務していますが、日本の支援には大変感謝しており、今後は市場のさらなる改善を行っていきたい」と述べ、女性の社会進出については、「市場ではたくさんの女性が働いており、日本の支援によって女性の活動はとても改善されました。先日も市場で働く女性グループ長と話した際、日本の支援への感謝の言葉とともに、この成果を継続していきたいと話していました」と語る。

今日のセネガル水産業の礎に

「日本人のきちょうめんさや、ルールを遵守する点を見習いたい」と語る、マネル局長

1980年代から施設の整備や、専門家、青年海外協力隊員による漁獲、水揚げ、加工に関する技術協力を行った「ミシラ漁業センター」は、今日のセネガル水産業の礎となっている。現在センターはその役割を終え、今後は、漁業養殖技術者養成学校や大学の水産研修に利用することが検討されている。

かつて、ミシラ漁業センターに勤務した経験を持ち、現在、漁業・海洋経済省 水産局長として、セネガルの水産政策を担う、カミル・ジャン・ピエール・マネル局長は、これまでの日本との協力を振り返り「日本によるセネガルの水産業への協力は、大変実用的であり、たくさんのことを学んできました。今後は、日本人のきちょうめんさや、ルールを遵守する点を見習い、セネガルの水産政策を推し進めていきたい」と語る。

水産行政アドバイザーを務めるJICAの池田誠専門家は、「セネガルの水産業は、これまでの水産協力の成果もあり、近隣国と比較しても発展し、多くの優良事例や課題解決の蓄積があります。今後は、持続可能な漁業のモデル確立を目指し、国内だけでなく近隣国にも普及していきたい」と抱負を語る。

資源を守るため共同管理を促進

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(写真左)2013年には周辺国の政策立案者を招きCOGEPASの成果を共有、(写真中)PROCOVALの調査では、漁業従事者自身による問題分析や課題分析が行われた、(写真右)産卵用のタコ壺の設置を指導する日本人専門家

1990年代に入り、輸出対象魚種の水産資源の減少が深刻な問題になると、セネガル政府は、水産資源管理の効果的な方法を模索するために、政府が行う一方的な漁業規制による資源管理から舵(かじ)を切り、日本で古くから行われてきた、漁業従事者と行政による共同管理アプローチの導入を図った。このアプローチの普及には、2009年から開始した、漁業従事者の意識を向上させて共同管理を確立することを目指した「漁民リーダー・零細漁業組織強化プロジェクト(COGEPAS)」が大きく寄与。プロジェクトでは、資源に優しい漁法の導入や禁漁期の設定などを行い、水産資源の共同管理を推進した。

さらに、2014年6月には、海外市場で水産物を販売するための要件を満たすことを目的とした「バリューチェーン開発による水産資源共同管理促進計画策定プロジェクト(PROCOVAL)」をスタートした。JICAは、日本の資源管理と品質管理の経験・知見をセネガルで生かし、今後も持続的な資源の保持と海外市場への輸出量増加を目指して取り組みを進めていく。


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