第10回「JICA理事長表彰」表彰式を開催

2014年10月28日

10月21日、第10回JICA理事長表彰の表彰式が、JICA市ヶ谷ビル(東京都新宿区)で行われた。今回「JICA理事長賞」(注1)を受賞したのは個人二人と7事業。また、同時に個人22人と7団体が「JICA国際協力感謝賞」(注2)を受賞した。

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表彰式参加者と田中明彦理事長(前列左から4人目)、堂道秀明副理事長(その右)

表彰式の冒頭、田中明彦JICA理事長があいさつに立ち、「受賞した事業は共通して、日本の技術・知見を活用しながら、途上国の人々と共に国づくりや人材育成、地球規模の課題に取り組んでおり、日本らしい協力を実現している。国際協力60周年の節目に当たる今年の受賞にふさわしい」と述べた。また、2012年4月に理事長就任以来、開発途上国を元気にすることで日本も元気になる国際協力を目指してきたことに触れ、「今回の受賞の特徴として、日本国内でのボランティア活動に生かしたり、日本の国際人材育成につなげたりといった形で、国際協力の経験が、日本社会に還元されていることが挙げられる」と語り、日ごろの国際協力事業への理解と支援に感謝した。

好きな仕事を思い切りできることは幸せなこと 

「好きな仕事を思い切りできることは幸せ」と三品執行役員

続いて壇上では表彰状の贈呈が行われた。「JICA理事長賞」の事業部門で受賞した「チャオプラヤ川流域洪水対策プロジェクト」の実施団体を代表して株式会社建設技研インターナショナルの三品孝洋執行役員があいさつした。

「被援助国の人々から『ありがとう』の一言をいただけるだけで報われます。本日ご列席の受賞者の方々、この瞬間も世界中で活躍されている技術者、専門家の方々の思いも同じであると考えます。今後も皆さまと手を取り合って、国際協力の最前線に立ち、世界の国々が抱えるさまざまな課題に真摯(しんし)に取り組んでいく所存です」

プロジェクトは、2011年に大規模な洪水被害を引き起こしたタイのチャオプラヤ川の治水マスタープランを策定するもの。複雑な河川流出や氾濫(はんらん)のメカニズムを解明し、当初タイ政府が策定した洪水対策計画の3分の1の費用で同程度の治水対策効果のある計画を提案したこと、世界で初めて高精度の洪水・氾濫予測情報を、行政だけでなく一般にも提供するシステムを完成させたことなどが高く評価されての受賞となった。

また関連する事業で、タイの気候変動に伴う災害の軽減というニーズに応える研究として、水分野における気候変動への適応策立案・実施支援システムを構築した「気候変動に対する水分野の適応策立案・実施支援システム構築プロジェクト」も事業部門で受賞した。

ウズベキスタンの盲ろう者と喜びを分かち合う

ウズベキスタンの盲ろう者と触れ合い、やりがいを感じたという村岡さん

同じく事業部門での受賞となった「タシケント市における盲ろう者のコミュニケーション支援」では、JICA初の盲ろう当事者の専門家派遣が実現した。2011〜2014年にウズベキスタンで障害者支援に携わっていた大野純子JICA専門家が、タシケント市「ろう者文化センター」と共に盲ろう者の現況調査を実施し、「盲ろう当事者のエンパワーメント」などの活動計画を策定。その一環として、2013年に盲ろう当事者(福田暁子さん、村岡美和さん)が専門家として派遣され、通訳介助者や身体介助者を伴い、現地でワークショップ、公開セミナー、通訳介助者養成講座を実施した。ウズベキスタンにおける盲ろう者に対する理解促進と支援体制の構築に寄与し、障害当事者の国際協力への参加を実現させた点などが評価された。

村岡さんは手話で、「私自身は目と耳の両方に障害を持つ盲ろう者です。今回はウズベキスタンの盲ろう者のために何かできないかという思いを強く持ち、福田さん、大野さんと力を合わせて活動しました。今まで外出もままならなかった現地の盲ろう者の方々と語り合い、抱き合って喜んだことは忘れられません。他の国でも支援したいという気持ちを強くしています」と今後の活動への意欲を示した。

「日本のお母さんを元気にしたい」

田中理事長に自身の活動を説明する小川さん

元青年海外協力隊員の小川圭子さんは、専門家・ボランティア部門で「JICA理事長賞」を受賞。1999年にセネガルで協力隊員(助産師)として活動した後、カンボジア、モロッコでJICA専門家(母子保健分野)、ミャンマー、パキスタンで国際緊急援助隊員などとして約10年、国際協力に従事した。これらの活動を終えて帰国した小川さんは、日本の育児事情に疑問を抱き、日本の現状を変えたいという思いから助産院「いのち輝かせ屋」を開業。大阪市の委託による妊婦教室や子育てに悩む母親たちに対するカウンセリングを行うなど、地域の母子を支援する傍ら、小・中学校や高校で「いのちの授業」の講演活動を行い、開発途上国で出会った人々の生き方から学んだことを若い世代に伝えている。海外での経験を日本社会の問題解決に還元する「日本も元気にする協力隊」を体現している点などが評価された。

小川さんは、「現在の活動は国際協力とは少し離れたところにあると思っていましたが、今回の受賞によって、国際協力の現場で得た経験を生かして、さらに日本のお母さんを応援していこうと、決意を新たにしました」と受賞の喜びを語った。

同じく専門家・ボランティア部門で受賞した、元青年海外協力隊員の峰村史世さんは、授賞式当日は韓国の仁川で行われた「アジアパラ競技大会」に水泳の日本代表コーチとして参加していた。峰村さんは1997年に水泳隊員としてマレーシアに派遣されたことをきっかけとして、継続的に現地の障害者に水泳を指導した。その後、日本人初の障害者水泳のプロコーチとなり、北京、ロンドンのパラリンピックでは2大会連続で日本代表のヘッドコーチを務め、指導選手が金メダルを含むメダル計四つを獲得。昨年、自身のチーム「MINEMURA ParaSwim Squad」を結成し、2016年リオデジャネイロ、2020年東京のパラリンピックを目指す若手選手の指導も行っている。峰村さんも「日本も元気にする協力隊」を体現している点などが評価された。

表彰を受ける「アフガニスタン国無償資金協力事業」を実施した大日本土木株式会社の佐藤博樹代表取締役社長(手前)と安達俊明執行役員海外支店長

このほか「JICA理事長賞」の事業部門で、中南米地域で花卉(き)園芸研究の中核機関に成長したアルゼンチン国立農牧技術院(INTA)花卉研究所を対象にした一連の技術協力プロジェクト「アルゼンチン園芸開発と新品種開発に向けた遺伝資源利用に関する域内人材育成」、マレーシアによる南南協力(注3)を通じてザンビアの投資環境を大幅に改善した「ザンビア投資促進事業」、トルコ150年来の夢をかなえた「ボスポラス海峡横断地下鉄整備事業」、アフガニスタンで治安情勢が著しく悪化した2010〜2013年に事業を継続した一連の無償資金協力3件「カブール国際空港誘導路改修計画」「カブール国際空港駐機場改修計画」「感染症病院建設計画」が「アフガニスタン国無償資金協力事業」として受賞した。

また「JICA国際協力感謝賞」の表彰も行われ、当日出席の受賞者9人と5団体の代表者に感謝状が贈られた。


(注1)協力目的を高い成果をもって達成し、開発途上地域の経済・社会の発展、住民の福祉の向上などに大きく寄与するとともに、わが国の国際協力の声価を高めるなど、他の模範となるような特に顕著な功績を収めた事業または、専門家、ボランティアなどの個人を対象とする。
(注2)JICAが行う国際協力の業務に貢献し、または長年にわたって協力し、特に功績があったと認められる個人と団体を対象とする。
(注3)開発が比較的進んでいる途上国が、自国の開発経験や人材などを活用して、開発が進んでいない後発途上国に対して協力事業を行うこと。