世界エイズデーによせて――JICAのエイズ対策支援

−HIV新規感染ゼロ、差別ゼロ、エイズ関連死亡ゼロを目指して−

2012年11月30日

12月1日は世界エイズデーだ。世界レベルでのエイズの蔓延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、12月1日を中心に世界各国でエイズに関する啓発活動が行われている。

JICA専門家による保健センタースタッフへの聞き取り

ザンビアにおいても国家エイズ評議会が毎年、世界エイズデーに合わせて、HIV/エイズに関する啓発活動を国民に対して行っており、JICAの個別専門家がこの活動の支援をしている。

「エイズデーは私たちとは関係ないみたい――」との若者の声を受けて、今年のザンビアでのエイズデーは若者がターゲットになった。特に、思春期の若者は、HIV/エイズ治療から脱落する人の割合が最も高い年齢層であり、啓発の対象として重要である。そこで今年は若者に対して、自発的HIV検査・カウンセリング、家族計画などのサービスへのアクセスが可能であることを知ってもらうために、テレビ広告による啓発を行っている。

ザンビアでのエイズ対策支援

HIV感染者数は全世界でおよそ3,400万人。全世界の感染者の69パーセントに相当する2,350万人がサブサハラ・アフリカ地域で生活している(UNAIDS、2012年)。サブサハラ・アフリカはエイズの影響が最も大きい地域である。

サブサハラ・アフリカの一国であるザンビアでは、HIV成人感染率は14.3パーセント、人口約1,320万人のうち90万人がHIVに感染しており、毎年約5〜6万人がHIV/エイズに起因する疾病で死亡していると推定されている。ザンビア政府はHIV/エイズを国家開発における主要課題の一つとして取り上げている。

多忙なHIV/エイズクリニック

このような状況を受け、JICAは、エイズおよび結核の治療へのアクセス拡大と質の向上を通じてエイズによる死亡者数が減少することを目標とする「HIV/エイズおよび結核対策支援プログラム」を実施している。このプログラムでは、予防、診断、治療、ケアおよびサポートに対する支援とともに、中央および地方政府のHIV/エイズ・結核対策実施能力向上のための組織強化と政策支援を包括的に行っている。具体的には、技術協力プロジェクト「HIV/エイズケアサービス管理展開プロジェクト」(2009年11月〜2014年11月)、個別専門家派遣、草の根技術協力事業、青年海外協力隊派遣などさまざまなスキームを用いて包括的に支援を行い、ザンビアにおけるエイズ対策に取り組んでいる。

特に技術協力プロジェクトでは、地方で質の高い治療サービスが継続的に提供できるよう、国家モバイルHIVサービス(注)プログラムの強化を行っている。さらに、現場での経験を国家政策さらには国際政策へ反映させることで、ザンビアのHIV/エイズ治療にかかわるシステム強化を目指している。

JICAのエイズ対策支援

国連合同エイズ計画(UNAIDS)の2012年の発表によると、世界的には2001年から2011年の間にHIV新規感染者数は20パーセント減少、2005年から2011年の間にエイズ関連死亡者数は24パーセント減少、2003年から2011年の間に抗レトロウイルス薬(ARV)による治療を受ける人の数は20倍に増加するなど、エイズ対策は進捗してきた。しかし、2011年時点のHIVの新規感染者数は2,500万人と、依然として高い水準にあり、また治療を必要とする人の46パーセントが治療にアクセスできない状態にある。

JICAはエイズ対策支援として、2000年以降、35ヵ国で技術協力を展開し、国のエイズ対策を実施する保健省等の組織強化、HIV検査・カウンセリング体制整備、治療薬の提供システム整備、モニタリング・評価システムの構築などを支援してきた(現在の支援状況は下図を参照)。例えばミャンマーでは、エイズ、マラリアおよび結核対策への協力として、「主要感染症対策プロジェクト」(2005年1月〜2012年1月)と「主要感染症対策プロジェクトフェーズ2」(2012年3月〜2015年3月)を実施している。エイズ対策に関しては、輸血に起因するHIV感染を予防するため、輸血血液の安全性強化などの支援を行っている。

【画像】

JICAのエイズ対策支援(2012年12月現在 2012年度開始案件も含む)

また、JICAは、日本政府が主要ドナーとして資金を拠出する「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」との協力関係を強化している。世界基金の理事会に参画し情報共有と関係強化に努めるとともに、各国の調整会議への参画、さらに実施機関に対する能力強化等の技術協力を実施している。HIV新規感染ゼロ、差別ゼロ、エイズ関連死亡ゼロの「三つのゼロ」という国際的な目標の達成のため、世界基金、国際機関や二国間援助機関等と協力・協調しながら、今後もエイズ対策への支援を続けていく。


(注)ザンビアでは、病院までの距離が遠いといった理由から、治療の継続が難しい場合が多い。そのような治療が必要な人々のために、より身近なルーラル・ヘルスセンターでも必要なサービスが受けられるようにする方法の一つが、モバイルHIVサービスである。郡病院などで働く医師ら医療従事者が、必要な医薬品や検査機材などを車両に積んでヘルスセンターまで出向き、ヘルスセンターのスタッフと一緒になってサービスを提供する。