ヨルダン国内のシリア難民支援とJICA

2014年2月27日

住民の10人に一人がシリア難民

2011年から続く隣国シリアでの内戦から逃れ、ヨルダンには多くのシリア難民が流入を続けている。ヨルダンの人口は約630万人(2012年)。他方、ヨルダンにいるシリア難民は、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)によると、約57万人(2014年2月13日時点)で、UNHCRに難民申請をしていないシリア人を含めると60万人を優に超すともいわれている。

難民キャンプの子どもたち

ヨルダン北部、シリアとの国境から約15キロメートルに位置するザータリ難民キャンプは、世界でも五本の指に入る規模の巨大な難民キャンプだ。同キャンプは年々拡大し、既に10万人のシリア難民が居住するまでになっているが、それでも、居住者数は、ヨルダン国内のシリア難民全体の2割弱にすぎない。実は、8割以上のシリア難民は、ヨルダン人が暮らす普通のコミュニティーで生活を送っている。現金収入を得られず配給を待つのみという状況や、日々治安が悪化する不安定な生活に耐えられずにキャンプを出た人も多いのだ。

一方、急増した難民の影響で、難民が流入する前から脆(ぜい)弱な社会インフラの下で暮らしていたヨルダンの人々の生活も厳しさを増している。環境が悪化する難民キャンプそのものへの支援に加え、キャンプを離れたシリア難民を受け入れているヨルダンのさまざまなコミュニティー(以下、ホストコミュニティー)への支援が急務になっている。

JICAのシリア難民・ホストコミュニティー支援

キャンプの住民に毛布を手渡す田中俊昭JICAヨルダン事務所長(中)と小菅淳一駐ヨルダン日本大使(右)

2013年1月、ザータリ難民キャンプを大雨による洪水が襲った。人々が暮らすテントは崩れ、氷点下まで冷え込んだ。JICAはこの災害を受け、緊急支援物資として冬用テントと毛布を配布した。また、ホストコミュニティーの病院は、シリア難民を受け入れることで患者があふれ、学校でも許容数をはるかに超える生徒が在籍するという事態が生じている。JICAは、こうした深刻な状況の緩和のために、病院には医療機材を供与し、学校には白板や机、椅子などを送った。

物資供与だけでなく、人々の心身のケアも重要だ。キャンプ内外の児童施設では、青年海外協力隊員が、内戦やその後の難民生活で傷ついた子どもたちの心を少しでも癒やし、学校での短い学習時間を補う活動を行っている。あわせて、社会インフラの不足から苦しい生活を強いられている障害者を支援するため、理学療法士を派遣するなど、傷ついた心と体を癒やすための人的支援を行っている。

支援の方針と今後の展開

2013年にJICAが緊急援助で供与したテント(右)とUNHCRのテント(奥)が並ぶザータリ難民キャンプ

このように、JICAは、シリア難民が暮らすザータリ難民キャンプ、難民を受け入れているホストコミュニティー、受け入れ国であるヨルダン政府を支援対象とし、草の根レベルと国家レベルでの支援を包括的に行っている。そして、緊急・人道支援に強みを持ち、ヨルダン国内でも難民キャンプ支援を実施しているUNHCRと連携し、JICAは、自らが強みを持つ長期的開発の視点に基づいた支援を行うことを、支援の方針としている。

ヨルダンは、シリア難民がやってくる前から、200万人を超すパレスチナ難民を抱えているほか、多数のイラク難民も居住している。同国は、最近の中東情勢の変化、燃料・食料価格の高騰などの影響も受ける一方、高い失業率、地方部を中心とした貧困や地域格差にも苦しんできた。全国民の7割を超える30歳未満の若年層の失業率は30パーセントを超えており、人材育成、就業機会の創出が急務だ。ヨルダン政府も、職業訓練や高等教育をはじめとする人材育成や、貧困地域での保健・教育・福祉分野の改善に向けて努力しており、JICAは、これを支えるため、2012年に約122億円の円借款を供与した。さらに、日本政府は、大量に流入しているシリア難民によって厳しい財政状況に陥っているヨルダン政府を支えるため、120億円の円借款の供与を2013年に表明するなど、国家レベルでの財政支援を進めている。

ヨルダンの小学校。生徒が増えすぎたため、午前と午後に分けて授業を行っている

今後は、長期化するシリア内戦問題の影響を受けて、より脆弱化が予想されるヨルダンの社会インフラに抜本的な対策を施す必要がある。ヨルダンは国土の75パーセントが乾燥地であるため、国民一人当たりの水資源賦存(ふぞん)量(注)は年間145立法メートル。これは水不足と定義される基準の年間1,000立方メートルを大きく下回っており、水資源が世界で最も少ない国の一つとなっている。その一方で、人口増などによって水需要は拡大し続けており、水需給の不均衡はますます深刻になっている。このため、まずは喫緊の課題である水問題に対し、インフラ整備を支援するとともに、上下水道の整備計画立案といった技術面でのサポートを行い、ハードとソフトの両面から協力していく方針だ。

JICAは、増え続けるシリア難民と難民を受け入れるヨルダンを支援し、難民がいつの日か自国に戻れることを願いつつ、シリア難民とヨルダン国民の双方にとって助けとなることを目指して、今後も支援を継続していく。


(注)降水量から蒸発量を差し引いた、最大限利用可能な水の量。