2024年1月にJICAトルコ事務所長として着任しました、渡辺と申します。これまでJICA本部にて東南アジア・大洋州地域への協力、アフリカへの協力、広報・報道関連の職などを経て当事務所に着任しました。

2023年2月6日のトルコ・シリア大地震から、1年を迎えました。被災された大変多くの方々に対し、改めてお見舞い申し上げるとともに、1日でも早い回復・復興を願っております。

地震への対応はトルコと日本に共通する重要な課題であり、これまでも相互に協力を行ってきました。

JICAトルコ事務所 所長 渡辺 大介

現在のトルコ共和国が建国された1923年、関東大震災で被災した日本の様子はトルコのメディアでも大きく取り上げられ、トルコは日本在外公館を通じ義援金を送っています。1939年のトルコ・エルジンジャン地震では、反対に日本がトルコへ義援金を送りました。

1999年のトルコ西部で起きたイズミット地震の際には、日本から緊急援助隊の派遣及び緊急復興借款(236億円)の供与を行いました。2011年の東日本大震災には、トルコから緊急援助隊が派遣されました。そして2023年のトルコ・シリア大地震では、震災発生直後に日本から緊急援助隊を震源地のカフラマンマラシュへ派遣し、壊れた建物の中にいる人々の捜索・救助活動に従事しました。その間、日本政府はテントや毛布、発電機などの救援物資を被災地に届けました。緊急援助隊が活動を終えた後は医療チームと専門家チームを送り、被災地の医療支援、被害状況の調査、復興に向けたアドバイス等を行い、被災地復興支援プロジェクトの形成にも努めました。

日本とトルコには長い助け合いの歴史があります。1890年にはトルコ(当時オスマン帝国)の軍艦、エルトゥールル号が日本を訪問後、帰途で台風に遭い和歌山県沖で座礁した際、串本町(当時大島村)の人々が危険を顧みず救済活動にあたり、69名の船員を救出しました。

そしてエルトゥールル号遭難から約100年の時を経た1985年、イラン・イラク戦争の最中、トルコ政府は旅客機を飛ばし、イランに取り残された日本人215名の救出を行いました。トルコの人々は100年近く前の恩を忘れてはいなかったのです。

私たちJICAも、政府開発援助(ODA)として、長年トルコとの協力事業を行っています。こうした事業は1959年に初めてトルコからの研修員を日本に受け入れてから、2019年で60周年を迎えました。この間、上述の緊急支援に加えて、トルコ・シリア大地震の被災地における早期の復旧・復興のため、地震前よりも強い都市をめざした復興計画の策定支援や、地震リスク軽減・防災計画策定を目指すブルサ大都市圏への協力、トルコと日本の大学間連携や共同研究を促進しながら地震津波被害軽減に向けた体制構築を目指すプロジェクト等を通じ、数々の防災分野における協力を実施しています。また、イスタンブールのマルマライ地下鉄や第2ボスポラス大橋に代表されるインフラ事業、農業、水産、エネルギー等、様々な分野で幅広く協力を行ってきました。

トルコは、一人あたりのGDPも大きく成長し、開発途上国の中でも中進国となり、アフリカ等他の途上国を援助するドナー国にも成長しつつあります。JICAはトルコの政府機関と協力しつつ、第三国への支援も行うといった、新たな関係構築も行っています。

他方で、トルコにおいても地球規模課題への取り組みが課題となっており、質の高い成長、人間の安全保障、持続可能な開発に向けて、JICAはトルコと強いパートナーシップを築き、ともに歩んでまいります。

様々な分野で支え合ってきたトルコと日本。2024年は日本・トルコ外交関係樹立100周年を迎えました。今の私たちの協力活動の積み重ねが、次の100年のトルコと日本の信頼関係を築いていくという自覚と意識をもって、日本とトルコの信頼関係の強化に貢献出来るよう、最大限努力していく所存です。

JICAトルコ事務所
所長 渡辺 大介