所長あいさつ

ベネズエラは、石油、天然ガス、鉄鉱石等豊富な天然資源を有し、自然環境にも恵まれた潜在力を有する国です。

日本のベネズエラに対する技術協力は、1959年ベネズエラからの技術研修員の日本受入れから始まります。その後、1988年には技術協力協定が締結され、二国間技術協力の基盤が確立されました。また、青年海外協力隊派遣取極が2000年に締結され、2003年からボランティアの派遣が開始されると同時に、ボランティア調整員事務所をカラカスに開設しました。その後、2006年からは現在のJICA支所となり、JICA事業の窓口となっています。

ベネズエラは、1999年貧困・中間層の支持を得た軍出身のチャベス氏が大統領に就任後、「21世紀の社会主義」建設に邁進、新憲法制定を始め抜本的な構造改革を実施してきました。また、豊富な石油資源を武器に外交政策を進め中南米・カリブ諸国へその影響力を行使しています。しかし、2013年3月、チャベス大統領が逝去、4月の大統領選挙に僅差で勝利したマドゥーロ大統領がその遺志を継いで政権を運営していますが、2014年11月以降、原油価格の下落から外貨不足が深刻になり、物不足、インフレの加速が進み、治安も改善できず、支持率も低下し苦しい政治経済状況が続いています。特に2017年以降は政府と野党間の対立が深まり、政治混乱が拡大するとともに、経済の低迷も一層深刻化しています。

なお、ベネズエラへのJICAの協力については、2012年以降「環境保全・防災」分野への協力を中心に事業を展開してきました。しかしながら、政治・経済の混乱による治安悪化等を理由に2016年8月以降、専門家やボランティアの派遣を一時的に見合わせており、現在の協力は日系研修員受入事業が主体となっています。今後政治・経済状況が正常化し、治安が回復すれば、同国への人的協力が再開されることが期待されています。

ベネズエラ支所
支所長 西村 貴志