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派遣経験を教育現場に還元し成果教採選考時の参考にも

写真兵庫県教育委員会 教職員課副課長(当時)
冨田 哲浩氏

JICAの現職教員特別参加制度が始まった平成14年度から19年度までに54人を派遣し、20年度は9人、21年度には11人と、多くの教員をこの制度で海外に派遣している兵庫県は、JICAボランティア事業への理解が深い。

平成19年度実施からは教員採用試験の「受験者の特性・意欲を生かした選考」の具体的な内容に、「青年海外協力隊など国際貢献活動の経験」を加え、採用選考の参考としており、同年度には7人、20年度には1人、21年度には6人がこれに該当して合格している。

こうした取り組みについて同県教育委員会教職員課の冨田哲浩副課長は、「教師には多くの素養が必要で、研修もいろいろなものが必要だが、その1つとして、開発途上国に赴き、試行錯誤しながら活動する経験から得るものはたいへん大きい」と話す。

同教育委員会では、派遣希望の教員については希望をかなえる方向で調整をしており、帰国後も1年間はそれまで在籍していた学校に戻れるように配慮している。

「現職教員を派遣するということは、代替の教師に入ってもらわないといけないので、財政的にも文科省の支援がないと不可能」としながら、「学校の管理職からも異論が出てこないということは、彼らが帰国後に、派遣先で得たことを教育現場にいろいろな形で還元し、成果を発揮しているから」と、現場でもこの制度が評価されていることを指摘する。

さらに現代はインターネットが普及しており、派遣された先と在任校とのやりとりもEメールなどででき、連絡をとりやすくなっているのも、帰国後の円滑な復職に役立っているという。

このように同県では、現職教員の派遣制度が積極的に進められており、実際に派遣された教員が現地でどのような活動をし、どのような生活をしているのかを把握しようと、昨年1月、県教委がJICA関西とともに、4人の調査団を結成し同県からの派遣隊員がいるカンボジアに視察に行った。

冨田副課長も視察団のメンバーの1人としてカンボジアに赴き、現地で隊員の活動を目の当たりにした。「カンボジアはクメール語なので、自在に使いこなすことは難しいのだが、子どもたちは現地の教師よりも日本からの隊員のところにたくさん集まっていた。それだけ子どもたちの意欲を引き出す接し方ができている、ということだと思う」という。

「教材にしても、ものがないので工夫しないといけないし、カリキュラムも日本とは大きく異なり、現地教員らとの連携も大変。それでも隊員たちは持ち前のエネルギーでコミュニケーションを図り、周囲に受け入れられ、敬意を持たれていることがみてとれた」と、隊員たちが不自由な環境の中でも一生懸命に頑張っているのを目の当たりにしたという。

そして、苦労しながら多くを体験する現地での活動は、帰国してからの教員としての仕事に必ず生きてくるとし、「派遣先で体験したことを子どもたちに語ることにも、もちろん意義があるが、それ以上に、教師は人を相手とする仕事なので、生活習慣や文化がまったく異なる人たちと交流する経験が生きる」と語る。

さらに、帰国した隊員の中には、「日本で教師をしていたときは、自分の教え方や教材作成など、当たり前と思ってあまり専門性を感じていなかったが、派遣国でいろいろな体験をすることで、自分の仕事にプロとしての誇りを持つようになった」といった感想を寄せる人もいて、帰国後、教師としての自覚が高まる傾向も見られるという。

冨田副課長は、「日本はカンボジアに対して遺跡の修復支援もしており、修復された遺跡に両国国旗のある解説看板が立てられているなど、親日的であることがうかがえた。グローバル化の世界で日本が果たす役割はいろいろあるだろうが、相手国から親近感や敬意を受ける人的支援の一つとして、現職教員の派遣も大切なこと」と評価する。

さらに、派遣された教員も地球規模の視野や思考を身に付けて帰国するので、日本の子どもたちにとってもよい影響があるとし、この制度が多くの効果をもたらしていることを評価している。

JICAボランティアOB  中谷 順一 小学校教諭・フィリピン
(現職教員特別参加制度を利用して協力隊に参加 )

教師の幅を広げられた

写真神戸市立有野小学校 教諭
中谷 順一 さん

教職に就いて6年目、これから仕事を続けていくにあたって、もう少しいろいろな経験を積みたいと思っているとき、当時、在任していた学校の教頭からJICAの現職教員特別参加制度のことを知らされた中谷順一神戸市立有野小学校教諭は、「行きたいだろう?」と問われ、二つ返事で「行きたい」と応募した。

派遣されたのは03年から2年間。フィリピンのルソン島南部レガスピ市を中心に、現地の教職員に研修を広めるプロジェクトだった。

主な活動は、現地の指導主事にあたる人と一緒に、直接、学校に出向き、理科や算数の授業法を教師たちに指導することだった。移動手段は、バスはもちろん、島が多いフィリピンだけに、船や飛行機も使い、滞在期間中、約200校を訪問したという。

言語はタガログ語が中心で、英語もどうにか通じるが、島ごとに言葉が違うので、その点は苦労が大きかった。現地の人たちは明るく友好的だ。また、台風が来ると1カ月単位で停電することもあり、「太陽が沈むと寝るしかないという場合も多かった」とか。フィリピンは失業率が高いため、公務員である教師になるのはとても名誉なことで、子どもや保護者たちは教師に対して強い尊敬の念を持っていた。

だから、教師のいうことは絶対なのだが、残念なことに、教科書に間違った内容が多々記載され、さらには日本では考えられないような事情で子どもたちに教科書が届かないケースもあり、驚かされる場面もしばしばあったという。

フィリピンの子どもたち ペットボトルロケットに大喜び

写真教員研修として中谷教諭が力を入れたのは、アクティビティを取り入れた授業展開だった。特に理科の教科書は文章による説明だけで構成されているので、身近にあるものを使ってできる実験を考案して紹介した。

空き缶でアルコールランプを作ったり、ビニール袋で熱気球を作ったりといった実験には、子どもたちも大いに興味を示し、好評だったという。中でも評判が良かったのがペットボトルの水ロケットで、小学生から高校生くらいまでを対象にやってみたが、どの年代でも大喜びだったそうだ。

滞在期間を振り返って中谷教諭は「フィリピンでは、入学はしたもののお金がなくて途中で学校を辞めていく子どもも多い。それでもみんな笑顔で明るく生きている。振り返って、日本人はお金はあるのにストレスを多く抱えている」と、生きる姿勢について感じることが多かったという。

半面、トヨタやホンダなど日本車が多く走るなど、ものづくりの面でニッポンは大きく評価されており、改めて日本の技術力のすばらしさを知るなど、外から見て日本のよいところを見直すチャンスにもなったという。

写真神戸市立有野小学校
福島校長

現任校の福島孝正校長は、「子どものことを考え、粘り強く寄り添う姿勢など、教師として大切な資質をもっている」と評価する。重ねて、「派遣先で新しい教え方の技術を学ぶということは考えにくいが、自ら指導法を工夫するようになったり、コミュニケーション能力が高まったりと、人間として大きく成長するといった成果があると思う」と、見知らぬ土地で多くの体験をすることは、帰国後の教師生活の中で生きてくるのではという。

中谷教諭は、ホームステイをしていた家族と、いまも交流があり、現地にもまた訪れてみたいという。
“地球人”としての視野をもちながら、今後も教師を続けていきたいと熱い思いを語っている。

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