UNV経験レポート

青年海外協力隊としてパプアニューギニアのマダン州コミュニティ開発局で村落開発普及員として活動した後、国連ボランティアに参加した梨本さん。2009年独立を前にした南部スーダン(現在の南スーダン)のUNHCRで社会統合オフィサーとして、特に帰還民の教育プログラム支援を行いました。2年4か月の国連ボランティアでの活動後は、JICAエチオピア事務所でアフリカの角の干ばつ担当の一人として新規事業の立ち上げの支援に関わりました。現在は、国連ボランティア計画(UNV)東京駐在事務所にて、邦人国連ボランティアの派遣業務に従事しています。協力隊からUNV、JICAエチオピア事務所、そしてUNV東京事務所へと歩まれた梨本さんの経験レポートを紹介いたします。

協力隊帰国からUNHCR赴任まで

協力隊の任期を終えた時、自分の力が開発途上国現場で通用する能力があるか否かは別として、自分の心の中で開発途上の現場で生活し、業務をすることが自分は好きだと強く実感しました。この気持ちを知りえたことは、協力隊に参加しての1つの大きな収穫でした。もちろんこの思いは、パプアニューギニアにいる間にJICA専門家、NGO関係者、開発コンサルタントの人達、それにUNVのOB/GO等から、いろいろな国際開発の話を聞かせて頂き、自分もこの業界で生きていきたいと感じるようになりました。日本に帰国後は、開発途上の世界で活動できる可能性をいろいろと模索しました。ジュニア専門員、NGO、UNV、JICA短期ボランティア、大使館の草の根・人間の安全保障無償資金協力の外部委嘱員、現地駐在員、開発コンサルタント等々、開発途上国の現場で働けそうなポストをいろいろと情報収集し、応募を始めました。そんな中、運よくUNHCRの国連ボランティアの案件で面接を受けられることになりました。面接が合格し、幸運にも国連ボランティアの切符を手に入れることができました。私の場合は、派遣までの手続きがとてもスムーズで、JICAからの推薦状を得てから5カ月間でUNCHRの南部スーダンに赴任ができました。

UNHCR南スーダン(赴任当時は南部スーダン)での業務

UNHCRでの2年4カ月の任期中にわたり担当していた教員養成学校の引き渡し式の様子

UNHCRでの2年4カ月の任期中にわたり担当していた教員養成学校の引き渡し式の様子

来客がある時や週末はよくみんなで交流していました

来客がある時や週末はよくみんなで交流していました

UNHCR南スーダンのジュバでは、主に日本政府からの資金で建設される予定の教員養成学校建設プロジェクトのモニタリングとその事業に関わる関係者調整が、中心的な業務でした。このプロジェクトの関係者は、教育省、日本大使館、JICA、UNICEF、NGO、建設業者など複数の人々が関わっており、関係者の期待を上手く汲み取りながら、完成させる必要がありました。

教員養成学校建設と聞いただけでは、さほど業務内容が難しそうには見えないかもしれません。しかし、2009年当時の南スーダンでは、例えば資材は隣国ウガンダを中心に輸入していましたし、輸入の際のトラック業者が南スーダンへ治安面を気にして来たがらないという状況、セメント等の資材の値段はプロジェクト期間中に驚くほど値上がりもしました。また、雨期になれば道路がこれまで以上に悪路になり、建設資材の輸送も困難さを増しますし、その結果建設自体のスピードも遅れがちになります。プロジェクトサイトも首都ジュバだけではなく、アウェイルという地方都市を含む二か所で展開していました。その当時アウェイルにはUNHCRの事務所はなく、現地での移動手段の手配を始め、現地の教育省の役人との人間関係を一から構築するところから始めました。私と同僚の二人で奮闘したあの時の思い出は、今でも鮮明に覚えています。

そんな中でも、「教育」というものが、南スーダンの人々にとって未来への希望の光であるという認識は、関係者の中に強くあったからこそ、困難な状況の中でも知恵を出し合いながら、前進させることができたのだと思います。

南スーダンには2年4か月間滞在しました。教員養成学校の建設が終了し、学校を政府に受渡しする際には、自分の何か大切なものを受け渡す思いで、何とも言い表せない思いになったのを覚えています。

全ての経験は次のステップに繋がっています

青年海外協力隊に参加したことで、開発援助の実際とパプアニューギアの人々、日本人の援助関係者に出会いました。そして、それは国連ボランティアという新たな世界へ繋がっていきました。

国連ボランティアとしてUNHCR南スーダンでは、平和構築の現場でのオペレーションの実際を体験し、関係者調整の実務を体験しました。また、世界各国から集まった同僚と仕事をすることの醍醐味を味わいました。更に、その当時、すでに南スーダンには緊急支援を得意とする日本のNGO関係者や、復興支援と開発支援を実際に動かしているJICA関係者もおり、平和構築の現場で様々な議論を夕食を食べながら、頻繁に行いました。

そして、UNHCRでの経験は、2011年にJICAエチオピア事務所でのアフリカの角干ばつ支援の企画調査員のポストへと繋がっていきました。エチオピアのソマリ州や南部オロミア州という比較的情勢が不安定な地域でのUNHCRやWFPとの連携、現地NGOや他の援助機関との関係性の強化を図れたのも、これまでのUNHCRや協力隊の経験があってのことだったと思っています。

その後、国連ボランティア計画東京駐在事務所で日本人国連ボランティアの派遣支援、大学生を対象にした国連ユース・プログラム・パイロット事業の支援、また第五回アフリカ開発会議では国際会議の一端を垣間見ることができました。東京事務所の業務は、活動資金調達の為のドナーの動向を把握し、それがいかに組織のプログラム戦略とリンクさせるのか等、戦略的な業務の一端を垣間見ることができ、非常に興味深いです。

これから国際協力の分野で働くことを目指している方へ

国際協力の業界は、あまり永久雇用のようなポストは少ないような業界だと思います。海外勤務の場合は、数年間で勤務地を移動することがあります。また、次のアサインメントを狙う時には、現在の所属団体や機関ではなく、他の団体や機関へと職場を変えながらキャリアアップするのが一般的な業界のように思います。また、一つの契約期間が数カ月という短期の場合もあります。もちろん契約と契約の間に無職の時間が生まれることもあります。それでも、何か目の前にチャンスがあるならば、そのチャンスを握り、そこでしっかりとした仕事をして、評価されれば、そのことは次に繋がっていくというポジティブな思考も必要だと思います。そういう意味でも、自分はどのような人生設計をしながら、国際協力に携わっていくのかを考えておく必要もあると思います。その為には、国際協力の業界で働いている関係者の話を聞くことはお勧めします。様々な考え方や生き方を聞くことで、いろいろな可能性が見えてくると思います。

最後になりましたが、国連・国際機関でのキャリアを考えている場合には、国連ボランティアの選択は、有益なキャリアステップの一つだと思います。もちろん、国連ボランティアの後、すぐに国連の正規ポストになれる保証はどこにもありません。一方で、様々な形で元国連ボランティアはこの国際協力業界で活躍しているのも事実だと思います。国連・国際機関でのキャリアを考えている方、国連ボランティアも1つの選択肢として、検討してみてはいかがですか。

・帰国隊員進路情報ページ