共に歩んだ60年

日本が政府開発援助(ODA)を通じて国際協力を始めたのは1954年。この60年、日本と開発途上国はどのように歩みを進めてきたのか。そして、今後共に立ち向かうべき課題とは。田中明彦JICA理事長に聞いた。

日本の国際協力60年の歩み

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田中 明彦
TANAKA Akihiko
東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学で博士号(政治学)取得。2012年紫授褒章受賞。東京大学教養学部助教授、東洋文化研究所教授・所長、大学院情報学環教授、国際連携本部長、理事、副学長などを歴任。 2012年4月よりJICA理事長。

1954年、日本は政府開発援助(ODA)を通じて国際協力を開始しました。つまり、2014年は「ODA60周年」。戦後の激動の時代を経て、国際協力に取り組んできたJICAにとって節目の年です。
この60年を3つに分けると、最初の20年は戦後復興の時代。第二次世界大戦後、世界から孤立していた日本が、国際社会にどう復帰を果たしていくか。そのプロセスの一つとして取り入れられたのがODAでした。54年の「コロンボ・プラン」(注)への加盟を経て技術協力を開始した日本は、同時に行っていた戦後賠償と合わせて、国際社会の中で責任ある行動を示していくという決意をそこに込めていました。
次の20年の始まりは74年、まさにJICAが創設された年です。この時、日本は高度経済成長の真っただ中。わずか数十年で“新興経済大国”となった日本では、78年にODAを3年で倍増させる計画も出され、国際協力を実施する意義が認められるようになってきました。
そして94年から現在までの20年は、新興国としての立場は卒業し、成熟した一国家として、世界の平和のために貢献すべき役割を担ってきました。戦後復興から経済大国といわれるまでに成長した経験や、課題先進国としてのノウハウを開発途上国に伝えていくことは、先進国の中でも日本特有の使命です。

経済成長のカギは自発性と人づくり

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2013年も世界各地で日本の国際協力の現場を視察した田中理事長。南スーダンではナイル川沿いの浄水場に足を運んだ。

さまざまな国や組織が国際協力を行う中で、日本はその独自の取り組みが評価されてきました。その特徴は主に3点挙げられます。
一つには、日本は一貫して、相手国の自発性、自助努力を重視してきたということです。自身の考えや技術の押し付けではなく、その国の状況に合うものを一緒につくり上げていく。いわゆる“オーナーシップ”の尊重です。
そして2つ目が、人と人とのつながりです。相手との信頼関係なしには、国際協力はもちろん、何事も成り立ちません。半世紀以上にわたり、日本人ならではのきめ細やかさで根気強く人づくりに取り組んできた実績は、日本にとっても貴重な財産となっています。
そして最後に、目の前に立ちはだかる課題が何であれ、最終的に目指すのはその国の経済発展であるべきという姿勢です。これを達成するために、インフラ整備から人材育成まで、多様なアプローチを相手国と協働で実践してきました。近年、目覚ましい経済成長を遂げている東南アジアでは、このような日本の協力スタイルが、ある程度の成果を挙げているといえるのではないでしょうか。
途上国も、日本も、日々変化しています。相手国のニーズに万全の体制で応えるために、JICAも進化し続けなければなりません。近年では、大学や研究機関と連携した科学技術分野の共同研究をはじめ、日本の中小企業の強みを前面に押し出した民間連携など、日本全体でODAを活用しようとする機運が高まっています。また、東日本大震災以降は特に、防災分野の協力を強化すべきと考えています。大災害を経て培った互いの経験を共有しながら、次の災害に備え、途上国の人々と共に取り組みを進めています。

ダイナミックな事業展開を目指す

2012年4月に理事長に就任してから、途上国はもちろん、日本も元気になるような国際協力を目指してきました。この方針は、ODA60周年を迎えた2014年も変わりません。これからもJICA職員が一丸となった“強いJICA”の下、より一層「元気の出る国際協力」を心掛けていきます。
その上で、今年のキーワードとして掲げたいのが“ダイナミック”です。国際協力はJICAだけでなく、民間企業、大学、NGO、地方自治体などとの連携があって成り立っています。今後はそのつながりをさらに発展させていきたい。既成の枠にとらわれず、多様なアクターの強みを生かしたダイナミックな事業展開で、途上国に貢献すべきと考えます。
2014年、JICAがこれまでもビジョンとしてきた「すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発」に今一度立ち返り、日本の市民の皆さんと一緒に、より良い世界をつくっていきたいと思います。
(注)南アジア、東南アジア、太平洋地域諸国の開発援助のために設立された国際機関。スリランカのコロンボに事務局がある。