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ポスト・コロナの世界経済 -北岡理事長がキヤノングローバル戦略研究所の堀井昭成理事と対話-

2020年7月16日

北岡伸一JICA理事長は、7月16日、キヤノングローバル戦略研究所の堀井昭成理事(元日本銀行理事)とオンラインで対話を行いました。これは、JICAが立ち上げた「ポスト・コロナの世界における国際協力」研究の一環として、北岡理事長と国内外の有識者が、対話を通じて今後の世界と国際協力のあり方への考察を深める取り組みです。

冒頭、北岡理事長は、本研究会の主題である、コロナ危機の教訓は何か、「ポスト・コロナの世界」がどうなるのか、日本・JICAはより良き世界の構築のためにどう貢献すべきかについて、国際経済や金融の視点から伺いたいと述べ、堀井理事からのプレゼンテーションを促しました。

堀井理事はまず、最新のIMFの世界経済見通しを引用し、ベースラインのシナリオでは世界経済の成長率は2020年に約5%減少したのち、2021年には上向きに転じると予測されていることを示したうえで、今後の感染状況やロックダウン政策によって振れ幅があることを説明しました。

次に、堀井理事は、コロナ禍を契機に、1)サプライチェーンの再編などのグローバリゼーションの変化、2)デジタル・トランスフォーメーション(DX)の加速、3)金融・財政両面における政府介入の拡大、4)米中対立の激化、という4つの潮流が加速し、世界経済へ影響を及ぼすだろうと指摘しました。そして、マクロ経済面では、短期的には需要が冷え込むためにデフレとなるが、中期的には財政出動による景気刺激策に支えられてコロナ危機で抑制されてきた需要が顕在化してくる一方で、DXなどによる供給サイドの効率化が十分に進まない場合にはスタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)が起こる可能性があると指摘しました。

その後、研究会参加者も交えて、国際金融安定化のリーダーシップをとる国が不在であることの影響や、米中のデカップリングの見通しなどについて意見交換を行いました。

今後の世界経済は新型コロナウイルスの感染状況や政府の対策などの不確実な要素によって大きく変動するため先行きが見通しづらい状況ではありますが、そのような状況にあるからこそ蓋然性の高い未来を推察して対策を議論することの重要性を改めて確認した対話となりました。