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JICAカンボジア事務所の現地職員による新型コロナウイルスへの対応

2021年6月16日

1. カンボジアにおける新型コロナウイルスの状況

(1)新型コロナウイルスがカンボジア社会に与えた影響

2020年を通して、カンボジアはASEAN地域の中で新型コロナウイルスの感染率及び死亡率が最も低い国の一つでした。背景にはカンボジア王国政府(RGC)が、教育機関の閉鎖、集会における人数制限、入国制限等を迅速に行ったことがあります。ところが、2021年2月以降、大規模な集団感染により、新型コロナウイルスの感染者数は急激に増加しています。

カンボジアでも新型コロナウイルスにより経済は大きな打撃を受けました。2020年、カンボジアの観光産業は約30億米ドルの損失を被りました。410カ所以上の工場が一時的に稼働停止となり、24万人以上もの従業員に影響を与えました。そのためRGCでは、免税措置のほか、衣料品生産の従事者に対して月70米ドルの補助金の供与や、銀行やマイクロファイナンス機関への低金利の融資を通じ、様々な業種を支援し、貧困層や経済的に弱い立場の家庭に向けた財政支援プログラムを提供してきました。

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CEPでコロナ対策及び栄養について学ぶ女性

(2)コロナ禍にカンボジアで暮らす人々の生活

カンボジアの人々は、コロナ禍のニューノーマルに徐々に適応してきています。多くの親が、子供をオンライン授業に参加させるようになりました。また、宅配サービスを利用する人が以前より増え、特に食べ物の配達が目立ちます。外出時はマスクをつけ、頻繁に手を洗い、安全対策をしっかりと講じています。ただ、この生活の変化は、ほとんどのカンボジア人、特に低・中所得者にとっては、依然として厳しいものです。屋台で商売していた人は、客が来なくなり収入を失いました。国境の閉鎖は、ビジネス全般に影響を与えています。人々は、政府からの融資の支援を強く求めています。IT知識に乏しい親や先生は、オンライン授業への移行に不満を持っています。多くの従業員が、賃金カットに直面しました。

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洪水の様子

新型コロナウイルスの影響に加えて、2020年9月から10月に非常に激しい雨により洪水が発生し、カンボジアの人々は苦しめられました。JICAは、テント、ろ過装置、毛布、発電機、ビニールシート、マットレス、燃料携行缶などの緊急支援物資を被災者に提供しました。また、JICAカンボジア事務所のスタッフも食料の寄付を行い、被災者を支援しました。ところが、避難所で人々は十分なマスクや消毒液がないまま密集することを余儀なくされ、水が引いた後はゴミがそこら中に散乱する光景が見られました。この洪水がきっかけとなり、カンボジアにおける感染予防対策はより重要な課題となりました。

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洪水時の物資供与

2. 新型コロナウイルス対応に向けたJICA現地職員による貢献

(1)緊急支援融資の企画(ソウン・ベスナさん)

私は、JICAカンボジア事務所の企画部で働く現地職員です。事務所では、支援の調整、調査依頼、プロジェクト活動のモニタリングなど、事務所運営に関わる業務を行っています。

コロナ禍で、生活、仕事、コミュニケーションにおいて新しい様式が導入されました。私はこの困難な状況に対応しながら、通常通り日々の業務を行わなければなりません。さらに、カウンターパートや開発パートナーなど、外部のステークホルダーとのコミュニケーションを続ける必要もあります。ロックダウンや公共の場における集会等の制限は一番の問題でした。私たちのカウンターパートは、オンラインプラットフォーム(オンライン会議/ミーティングなど)に慣れていなかったため、適応するのに少し時間がかかりました。私も初めのころは、オンライン会議への参加やオンライン上でカウンターパートと話し合うことが不便に感じられましたが、徐々に慣れていきました。

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ソウン・ベスナさん

新型コロナウイルスの全国的な大流行に対処するため、私は通常業務に加えて、「新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援円借款」プロジェクトに従事しています。これは、2020年11月にJICAとRGCで合意したODA借款契約(L/A)です。このプロジェクトでは、カンボジアの経済安定化と開発努力を促進するため、最大250億円のODA融資を行います。コロナ禍において、日本のODAはカンボジアの経済回復活動及び開発努力に大いに貢献しています。私はカンボジアのさらなる発展と、人々が安全に暮らせることを願っています。

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緊急財政借款モニタリング会議

(2)保健分野での支援(パン・スレイリットさん)

私は保健分野のプログラム担当です。新型コロナウイルス関連の最新ニュースを追ったり、保健省(MoH)や保健分野の開発パートナーと連絡を取って、カンボジアの公衆衛生における新型コロナウイルスへの対応を向上させるためにJICAが支援できることについて話したりしています。

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パン・スレイリットさん

洪水の状況が落ち着いてきた2020年11月下旬、被災したコミュニティでは依然として公衆衛生向上のための薬や消毒液が必要でした。JICAの保健チームは、3つの州の保健局に薬や手指消毒剤、固形石けんなどの消耗品を届けました。

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洪水時の医療物資供与

現在、医療機器やPCRテストの試薬を調達することが、保健チームの主要な仕事の一つです。私たちは、新型コロナウイルス対応を行うと共に、保健インフラの改善や医療従事者の能力育成など、保健分野における様々な改善にも取り組んでいます。

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PCR検査薬をパスツール研究所に供与

個人的に、私はこの活動的なチームの一員であることを誇りに思います。コロナ禍にも関わらず、JICAのスタッフ全員がプロジェクトのアウトプットを最大化するため、熱心に働いています。JICAが薬や消耗品を洪水の被災者に届けた時、州保健局のスタッフが喜びの表情で感謝の意を表していたのが印象に残っています。カンボジアの重要な開発パートナーの一つで働くカンボジア人として、私はJICAの一員であることを誇りに感じ、嬉しく思います。JICAの活動は、カンボジアの発展に有益であることに加え、日本とカンボジアの2国間の協力関係の強化のために不可欠です。私は個人的に、JICAがカンボジアに提供してきた、数え切れないほどの貢献と支援に本当に感謝しています。道路、橋、病院、下水道などの建設によって、カンボジア人は多くの恩恵を受けました。JICAがインフラ改善に焦点を当てたことは、カンボジアが大きく変化する一因となりました。何より、JICAは建設プロジェクトの品質に多大な配慮をしています。日本が提供する建設物に、カンボジア人は常に高い信頼を寄せています。

最後になりますが、公衆衛生の増進に従事する若い女性スタッフとしてお伝えしたいことがあります。このパンデミックの状況下で暮らし、働くことは、誰にとっても難しいことです。だからこそ、心の健康にしっかり目を向けるべきで、この意識を広めることは重要です。生産的かつ効率的に働き続けるためにも、心と身体の健康は大切なのです。