教育だより第32号(2021年6月発行)より
「ラオス国初等教育における算数学習改善プロジェクト」(2016年~2022年)では、日本の知見と技術を活かしてラオスの教育省と共に新しい小学校算数の教科書・指導書の開発を行い、学校の先生に対して新しい教科書の使い方の研修を行っています。
2018年9月の新学期に1年生の新算数教科書の使用が開始されて以来、各年2年生、3年生と次の学年の新教科書が導入されています。昨年はCOVID-19の影響により国内の財政状況が悪化し、教科書・指導書の印刷と学校への配布、また全国の教員対象の研修予算の確保が更に難しくなったことから、9月からの新教科書の使用開始が危ぶまれました。そのような状況下、教育大臣の強い意向で2020年も予定どおり新教科書を導入することが決定され、新学期開始から少し遅れつつも3年生は新教科書で学び始めました。今は授業の遅れを取り戻すために、特別活動等他の授業時間を利用して算数の授業に補填する等、政府と現場が一丸となって子どもの学びが止まらないよう努力しています。今年の9月からは、現在印刷準備中の4年生の新教科書がラオス全国の小学校で使われる予定です。
教科書の開発には、原稿執筆から試行・修正・印刷・配布に至るまで約2年の歳月がかかります。既に原稿執筆が完了した5年生の教科書は、2022年からの正式導入に向けて現在試行中です。ラオスは教員の質・生徒の学習到達度が低く、ラオ語が読めなかったり1年生の内容からつまずいていたりする5年生の生徒や、高学年の算数の問題を解けない教員も多数いるのが現状です。より良い教科書の開発に向けてまだまだ課題はありますが、現地の教育省や教員・生徒と共に力を合わせながら、学びの改善に向けて頑張っています。
2021年4月からはラオス国内で再びコロナの新規感染者数が増加し、二度目のロックダウンも施行されました。引き続き子どもの学びをとめないためにも、JICAは教育省と協力し支援の方法を探っていきます。
(執筆:株式会社パデコ 西原 梨緒(ラオス国初等教育における算数学習改善プロジェクト専門家))