
この11月に発刊された『Climate Change Adaptation and International Development』(気候変動適応策と国際開発)は、JICA研究所の「開発途上国における気候変動適応策と緩和策の研究」プロジェクトのうち、適応策に関する研究成果をまとめたものです。本書は、気候変動問題に取り組む研究者や政策担当者、実務担当者に有益な情報を提供する内容となっています。
環境、気候変動問題の専門家である藤倉良JICA研究所客員研究員と川西正人JICA国際協力専門員の2人は、アジアやヨーロッパ、アフリカ、北アメリカの研究者から協力を受け、アフリカやアジアでの水や農業、災害管理をはじめとする気候変動にかかわる研究事例を幅広く収集。気候変動がどの地域にどのような社会・経済・環境的影響を及ぼすか検証するとともに、世界の農村と都市の脆弱性と適応への取り組み状況などについても触れています。
さらに本書では、気候変動への対処について国際的にドナー間でどのような議論があり、どのような成果が出され、またどのような課題があるのかといった点についても説明しています。この中で著者らは、気候データの入手が難しいアフリカなどの地域では、気候変動予測モデルを計画段階で盛り込むなどの方策を提示しています。
気候変動による被害を最も受けやすいのは世界の貧困層であることから、国際開発は、途上国の気候変動の影響に対する適応能力の向上に重点を置くことが不可欠です。こうした考えのもと、このため著者らは事例研究の成果から得られるあらゆる示唆を本書にまとめ、今後の研究および国際開発協力に向けた提言としています。