
恒川惠市シニア・リサーチ・アドバイザーと室谷龍太郎研究員(当時)の共著で日本政府/JICAの人間の安全保障のための取組みについてまとめた論文が、英文研究書籍『Post-Conflict Development in East Asia』(編者はBrendan M. Howe梨花女子大学教授。Ashgate Publishing社から2014年2月発行)に掲載されました。同書籍は、東アジア諸国における様々な形の紛争後の復興・開発の経験について、人間中心の視点での分析を試みています。恒川・室谷論文は、紛争後の復興や人間の安全保障の実現のための取組みが議論されている同書の第4部に収められています。同書は、韓国の梨花女子大学の開発と人間の安全保障研究所が2012年5月に主催した国際ワークショップに参加した研究者が中心となってまとめられたものです。
この論文は、「人間の安全保障」という考えについて、日本政府がODA大綱の中の基本方針のひとつとし、JICAがその活動に取り入れた経緯を振り返り、概念を実践に移す中で直面した課題について、ミャンマー、フィリピン、アフガニスタン、スーダンの事例を紹介しながら整理しています。この論文で、JICAが直面した課題として取り上げているのは、①自国民ないしその一部に対して安全を提供する被援助国政府の意志が弱い場合の対応、②ダウンサイド・リスクへの対応能力強化のための支援、の2点です。①については、JICAの支援が長期的には国家の安全保障と相互補完的な関係になるという点について相手国政府を説得しようと努めてきたこと、②については、能力強化を通じてリスクヘの対応能力強化を目指してきたが、包括的な取り組みが必要とされていること、などを指摘しています。