バングラデシュ北西部に位置するラングプールは、その自然環境、農耕条件、および経済地理的な制約により、バングラデシュの中でも特に所得や消費、貧困の季節変動が深刻な地域である。本論文では、2000年、2005年、2010年の3期間にわたって実施された家計調査のパネルデータを使用し、Khandker (2012)の結果を再検証し、貧困の季節性の決定要因と対処方法について考察している。
本論文では、次の2つの視点から再検証を行った。第一に、Khandker(2012)の結果が、より長い期間においても引き続き観測されるかどうかという点である。第二に、3期間のパネルを使うことで、貧困の季節性のトレンドとその決定要因を分析することである。その結果、北西バングラデシュにおける季節的飢餓(monga)は、通年の所得合計およびその季節変動によって引き起こされていることが明らかとなった。
本論文では、この地域特有の貧困と農業生産の季節性の悪影響を緩和するためには、労働、食糧及び信用市場の構造的な統合が必要であることを提言している。即ち、季節的飢餓に対処するためには、農業や農村所得の多様化を図るとともに、貧困家計が所得の季節性に備える能力を高めることが重要である。