本稿では、2015年2月に閣議決定された「開発協力大綱」を対象に、特に日本の開発協力政策とその実践における比較優位とユニークさに注目して分析をしている。本稿の中で、「Japaneseness」(日本らしさ)という言葉はこの「日本ブランドの政府開発援助(Official Development Assistance:ODA)」を端的に表す単語として使用されている。
本稿で注目しているのは日本の援助のソフト面、特に人的資源開発、知識創造、自助努力に関するその長い歴史である。これら優先事項はすべて大綱に明白に紐づけられ説明されているが、大綱のアプローチをただ単にこれまでの延長線上で捉えるだけでなく、日本の援助にもっと積極的な広がりを持たせる余地があることに留意すべきである。加えて、日本の協力と大綱における人的資源開発の重要性に関し、外務省の「平和と成長のための学びの戦略~学び合いを通じた質の高い教育の実現~」(2015年9月)と国際協力機構(JICA)の「教育協力ポジション・ペーパー」(2015年10月)への大綱の影響を分析した。また、比較のために、英国と中国の援助政策との類似点や差異について述べている。