サブサハラ・アフリカにおいてコメの近代品種が普及し始めているが、その農業生産性および所得への影響を分析した論稿は数少ない。そこで本研究では、同地域の主要コメ生産国であるタンザニアにおいて収集された二種類の家計データを用いて、コメの近代品種の採用が農業生産性および所得に与える影響について検証を行った。その結果、近代品種は灌漑地域において畦畔の設置といった水管理技術と共に採用された場合に、単位面積当たりの収量および所得を向上させる効果があることが明らかになった。また灌漑地域おいて施肥および正条植えの実施が稲作の生産性と所得を向上させることも示された。これらの結果はアフリカにおいてコメの緑の革命を達成するためには、近代品種のみならず、栽培技術を含めて技術普及を進めるべきであることを示唆している。