JICA STAFF 江口雄磨 地球環境部

経済発展と環境保全 両立の道を探りたい

インフラの重要性を〝痛感〟

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3R導入のプロジェクトに参加したアルバニアの現地職員は「毎日が学びの連続だった」と語り、ごみ減量へのモチベーション向上が見られた

国際協力の分野で働くきっかけとなったのは、卒業論文執筆のために訪れたミャンマーでの体験です。当時「民主化と経済成長の関係」を研究していた私は、民政移管されて間もない国の〝ホット〟な変化を見に行くつもりでした。現地では資本流入による経済の発展を肌で感じることができましたが、身を持って〝痛感〟したのは、なによりもインフラ整備の重要性でした。訪れた先はでこぼこで未舗装な道路が多く、実は滞在中、道に空いた穴に転落して足の骨を折ってしまったのです。一方、ミャンマーではODAで建設された発電所が長年にわたって保守されているといった話を聞き、日本の援助が現地の人々の生活を支えている現場も見ることができました。この旅の経験により「途上国のインフラ改善に貢献したい」という思いを強く持つようになりました。

2014年にJICAに入構した後は、1年目からミャンマーのインフラ案件を担当する幸運に恵まれました。総電力量の約6割を北部にある水力発電所が供給している同国では、電力需要の高まりや設備の老朽化という問題がある中で、ヤンゴンなどの南部の主要な需要地にいかに電気を安定的に送るかが長年の課題となっています。私は電力を北部から南部につなぐ送電線の円借款事業を担当していたのですが、行政慣習や課題に対する関心のズレに戸惑うこともあり、開発援助の難しさを感じました。それでも、自分にとっての国際協力の原点であるミャンマーの案件に携われたことはひじょうに幸せでした。

ごみの現場がくれた気づき

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2018年2月19日、モザンビークの首都マプト市のごみ山(高さ約30メートル)が降雨の影響で崩落して16名の方が亡くなった。江口さんはマプト市の支援要請によって派遣された緊急の調査団に参加。専門家とともに対応措置の実施状況の確認や二次災害防止の提言などを行った

入構3年目に、地球環境部に異動しました。特に印象に残っている担当案件は、アルバニアの「廃棄物量削減・3R促進支援プロジェクト」です。1990年代前半に共和制に移行したアルバニアは、開放路線を進めてから都市部への人口流入や消費の拡大が加速し、ごみの量が増え続けています。JICAは同国で3Rを導入した持続可能な廃棄物管理の枠組みを確立し、ごみ減量の取り組みがなされるよう活動を行っていました。

同国のある自治体で行った試験的なプロジェクトの評価調査をしていたとき、ごみをあさり、一つ一つ分別して重さを量る地道な作業を見たカウンターパートは「JICAはそこまでするのか」とひどく驚かれました。しっかりしたデータを着実に集めることが当然のことと思っていた私は、相手方の驚きに日本の支援が国際社会で評価されている理由を見た気がしました。相手国に寄り添い、課題に真摯に向き合うJICAだからこそ、実際に家庭から出たごみの量や組成を確かめるデータ収集を行い、より正確な情報に基づいた適切な廃棄物管理計画を立てられるようになったのです。まさに日本の協力が信頼を得ていた現場でした。

この2月にはモザンビークの最終処分場におけるごみ山崩落事故の現場に行き、同国による緊急対応措置の状況を調査してきました。ごみ山から有価物を拾って生計を立てる人たちや、崩落の危険を知りながらも周辺で暮らし続ける人がいるその現場は、厳しい環境での人の生きざまを見た気がするほど鮮烈な印象でした。経済成長に伴う都市部への急速な人口流入やごみの不適切な処分、新規処分場の用地確保の難しさなどにより、このような処分場のごみ山崩落事故は他の国でも発生しています。経済成長を優先させ、廃棄物管理はどうしても後回しになりがちですが、都市の成長とともに取り組んでいかなければ、取り返しのつかない事故や環境汚染につながってしまいます。モザンビークでの事例からも分かるように、被害対応には膨大なコストがかかるため、早めの予防的対策が必要です。経済成長と環境保全の両立を図るという廃棄物管理の大きな課題に、今後も全力で取り組んでいきたいと思います。

プロフィール

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江口 雄磨さん

江口 雄磨(えぐち ゆうま)
地球環境部 環境管理グループ 環境管理第二チーム(取材当時)

1991年、埼玉県生まれ。ドイツ語での合気道の指導や、ドイツの新聞社への東日本大震災に関する記事の寄稿など、大学在学中はドイツ語の習得に没頭する。2014年、JICAに入構。東南アジア・大洋州部を経て、2016年5月より地球環境部へ。