シリア研修員、日本のIT企業で活躍する高度人材へ-インターンシップを通じて-

2022年4月28日

「シリア平和への架け橋・人材育成プログラム(Japanese Initiative for the future of Syrian Refugees:JISR)」では、プログラム参加研修員の多くが大学院修了後も日本に滞在することを望むことから、研修員が日本の企業文化に触れたり、企業におけるインターンシップを通して職業体験する機会を提供しています。
今回インターンシップとして6名のJISR研修員を受け入れていただいた株式会社eftax様の中井社長は、研修員を「意欲的でIT技術者の素養がある」と評価してくださっています。
中井社長と、インターンシップに参加した研修員にお話を伺いました。

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株式会社eftax 代表取締役 中井 友昭 氏

株式会社eftaxは、大阪・兵庫を拠点にデータ分析サービスを提供する企業です。データ分析、AI・IoTシステム・Web・モバイルアプリケーションの企画・開発、内製化までをワンストップで提供しています。年齢や国籍、性別にとらわれず、世界中から優秀なエンジニアが在籍しており、国内外の高度デジタル人材の育成・支援事業も展開しています。

中井社長にインタビュー

これまで、18カ国42名(注1)のインターンを受け入れるに至ったきっかけなどを教えて下さい。
中井社長:IT人材が枯渇し、有能な人材の確保に奮闘する中、AIESEC(注2)ジャパンから海外の学生インターンの話があり、2018年にトルコと中国の学生を受け入れたことがきっかけです。また今後海外進出を目指していく中で、いずれ自国に帰る学生を通して現地とのネットワークを広げるよい機会だと思いました。

JISR研修員をこれまで6名インターンとして受け入れていただいていますが、どのようなタスクが与えられているのでしょうか?
中井社長:2021年末にオンラインで2名、2022年2月からはオフラインで4名受け入れました。前半の2名は、企業からの実際のオファーに対応してもらったため、やるべき仕事がはっきりしていました。一方、後半の4名には2つのグループに分かれ、“ゼロ”から作りだすタスクを課しました。自分のペースで取り組んでいただきましたが、同僚に意見を求めながら協力し頑張っていました。それぞれ違いはありますが、IT技術者の素養があると感じました。
受け入れた6名はそれぞれ個性的でありキャラが立っているというか、陽気ですね。非常に仲が良くて、同胞意識が強くお互いに助け合いたいという思いが感じられました。異国の地でこれから暮らしていくために、新しいことをどんどん積極的に習得し吸収しようという意欲を感じました。

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日本企業の仕事の進め方やチームメイトとのコミュニケーションの取り方、協力の仕方を学べました。(オンライン・インターンシップに参加したJISR研修員)

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AI技術の実際の活用や、日本企業で就職するのに必要なスキルについても視野が広がりました。(オンライン・インターンシップに参加したJISR研修員)

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オフライン・インターンシップに参加したJISR研修員4名

外国人材について、求める人物像を教えて下さい。
中井社長:弊社は全ての業務をリモートで行っているため、セルフマネジメント能力が高く、自分から業務を前に進めていくことができる人材を必要としています。また変化が著しいIT業界において常に情報をリサーチし、学習していく能力が高い人物を求めています。

外国人材に対し、どのような点に配慮されていますか?
中井社長:IT人材は寝食を忘れてのめり込んでしまうことも多いので、食事がきちんと取れているかなどという点に注意しています。またアルコールの扱いなどの、宗教的な配慮もしています。イスラム教のお祈りに関しても尊重しています。個々で調整してくれているので、お客様との打ち合わせとお祈りがバッティングするなど業務に支障が出たことはありません。

日本語のレベルについて、「就職に有利であると言われる日本語能力試験のN2レベルにとらわれず、採用されている」ということですが、語学力以外で重要視する判断基準を教えて下さい。
中井社長:セルフマネジメント力をはじめ、開発に没頭できる資質があることや、壁にぶつかったときにあきらめずに突き進むタイプであるかどうかを見極めます。例えば、高校生の時からプログラミングをし、20歳前半で5~6年のキャリアがあるような人材も多いです。
弊社は、優秀な人材採用という視点からシニア層の積極的採用にも力を入れています。取引先企業様との橋渡しとして経験豊富な人材をシニア層で確保し、外国人材が持つ最新技術で開発をしています。また、国内でも若い人材を育成する事業も展開しており、日本の大学生もプロジェクトに参加しています。それらがすべて相乗効果となり素晴らしい結果が出ることを期待しています。

(注1)2022年3月インタビュー時の人数
(注2)AIESEC:100以上の国と地域に支部を持つ世界最大級の学生団体。海外インターンシップやオンラインの国際交流イベントなどの運営をしている。

インターンシップ参加者の声

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Ehssan Wahbi(エハサン ワハビ)さん
創価大学大学院 理工学研究科 情報システム工学専攻

私はシリアの戦争によりレバノンに移住しなければなりませんでした。レバノンではエンジニアとして働いたり修士課程で勉強したりしたかったのですが、日々の生活のために建設業界で労働者として厳しい条件下で働かざるを得ませんでした。それでも夢は捨てず、朝早くから夜まで働き、夕食の後2時間プログラミングや英語の勉強をしていました。JISRプログラムの支援を受けて日本で専門の勉強をする機会を得て、夢がかなってとても嬉しいです。
今回のインターンでは、治療後の患者の遠隔モニタリングを目的とした正確なセンシングシステムを開発しました。自分たちで研究し、新しい技術を学び、他の技術スタッフと議論しながら、1ヵ月半でこのシステムのプロトタイプを無事に実装することができました。この経験から、与えられた期間で作業し納期を守る点や、プロジェクトの各段階での成果を評価するといったビジネス的な視点を持つことができ、これまでの研究者としての視野を広げることができました。今後はAIのプログラミング関連や通信関連の企業に就職、又は博士課程への進学などの可能性を追求していきたいです。

インタビューを終えて

インターンシップに参加した6名は、このような最先端の技術と先進的な考えを持つ企業で実際の仕事を体験することができ、大きな刺激を受けたようです。現在はさらに技術を高めるようと日々勉強に励んでいます。卒業後、彼らが日本の大学院で磨いた技術を生かし日本企業で活躍することを願っています。

本インターンシップは、研修員のみならず、株式会社eftax様にとっても有益な機会となったようです。JISRプログラムでは、インターンシップ受入企業様を随時募集しています。ご興味・ご関心をお持ちになられた方は、以下リンクより資料をご覧の上、是非お問い合わせください。

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インドネシアや日本の社員が働く職場にJISR研修員がインターンで参加する、国際色豊かな環境です。

関連リンク

お問い合わせ先

JISR運営支援機関(株)日本開発サービス/難民支援協会(JAR)
担当:JISRインターンシップ担当者 メール:jisr-kouryuukai@jds21.com
(注)メールタイトル:「インターンシップ」とご記載ください。