2021年8月17日
武田 航
派遣期間:2018年10月~2020年3月
職種:コミュニティ開発
配属先:マサシ県庁チウングトワ郡事務所、(2019年12月より)ムワンザ州立事務所
任地:ムトワラ州マサシ県チウングトワ郡、ムワンザ州キロレリ県
出身:奈良県
私が最初に派遣されたのは、タンザニアの中でも開発が遅れている南部の州の、その中でも田舎とされている県にある小さな村でした。限りある資源の中で住民の所得向上のために何かできることはないかと模索し、「蜂蜜をこの村の新たな特産品にしよう!」と思い立ったところから私の活動がスタートしました。右も左もわからない状態でしたが、手探りのままに養蜂グループのメンバー集めを開始し、ルール作り、巣箱の作成、研修の実施、グループの登録、銀行口座の開設等のサポートを行いました。少ないながらも初めて自分たちの巣箱から蜂蜜が取れた時は万感の思いがしました。しかし、さて量産体制に入って販路を拡大しよう!という段階で、地域情勢の悪化により任地変更を余儀なくされました。他にも月1マーケット復興に向けての取り組みや中学校でのビジネスの授業といった活動を行っていましたが、これらを同僚に託し、新天地へと移りました。しかし、約3か月後に今度は新型コロナウイルスの流行により帰国せざるを得なくなり、軌道に乗りかけていた女性グループの支援活動も中断することとなってしまいました。以上、不完全燃焼も多い私の隊員活動でしたが、それでも人々に道筋を示すことぐらいはできたのかな、と勝手に思っています。
これは私個人の考えですが、コミュニティ開発隊員の多くの第一関門は、お金の問題をいかにスルーするか、というところにあると思っています。赴任後に意気揚々と訪れた配属先からはこんな要望が来ます。「教室の修繕をするためのお金を何とかしてほしい」「村の屠畜場を整備するためのお金が必要だ」お金、お金、お金…。これを騙しだまし自分にできる範囲の活動を探るのがコミュニティ開発隊員の最初の課題ではないかと思います。しかし、どんな活動においてもやはりどこかでお金の問題は必ず付きまとってきます。そして私は思ってしまいました。この国にはお金が必要だ、と。
勿論、草の根レベルの隊員活動の意義について否定する気は毛頭ありません。村落の住民に生活のヒントを授けることは、彼らの将来を考える上でとても重要なことです。しかしそれと同時に、国民一人一人にお金が行き渡るようにすることも、この国がいずれ先進国と肩を並べるようになるためには必要なことだと思うようになりました。タンザニアの国力そのものを底上げするには、いったいどうしたらよいか。
私がダルエスサラームに来るたびに思うのが、渋滞がひどすぎるということでした。長距離バスでダルに近づくたびにスピードは遅くなり、歩いたほうが早いんじゃないかと思うこともしばしばでした。これではトラック一台ろくに行き来できない。すこぶる生産性が悪い。私は直感として、この国の持つ100%の底力を引き出せていない原因が道路交通によるところが大きいのではないかと思うようになりました。
現在私は建設系の開発コンサルタント会社で働いています。今年の2月には会社が現在行っているダルエスサラームにおけるニューバガモヨ道路拡幅工事のJICA案件(第二次ニューバガモヨ道路拡幅計画(注))へ研修として少しだけ参加し、タンザニアに戻ってくることが出来ました。現在はブルキナファソで道路補修に関する技術協力プロジェクト(道路維持管理能力向上プロジェクト)に一から携わっています。もともと専門性がないため苦労することも多くありますが、道路交通分野での大学院進学も視野に入れつつ日々勉強し、何とか食らいついています。就職してまだ一年経っていません。この選択が正解だったのかどうかは、これからわかってくることでしょう。ただ一つ言えるのは、泣いて笑って過ごしたタンザニアでの約1年半の経験が、今の私の大きな礎になっているということです。