総合からのSDGsとESD(3)
松倉紗野香先生(英語科)「総合からの教科連携」
総合的な学習の時間と教科をつなぐ実践づくり
- 教科等横断的な学習をなぜ進めるのか?
- より深い理解、多面的・多角的な見方、知識の構造化の効果が期待されるため
グローバルシティズンシップ科@埼玉県上尾市立東中学校
- 2015~2018年度文部科学省「研究開発学校」の指定を受け、新教科「グローバルシティズンシップ科」を創設。
- 総合的な学習の時間をグローバルシティズンシップ科に置き換え実施
- 学校全体で作る学び、本物を扱う学び、社会を巻き込み巻き込まれながら作る学び
- グローバルシティズンシップ科で目指す生徒像
- 自らの考えや根拠ある意見を持って社会に参画できる
- 多様な文化、習慣、考え方を尊重し、共に生きることができる
- 自ら課題をみつけ、物事を多面的に考えられる
- クリティカルな思考を身に付け、自ら進んで調査・発信できる
- 一人の市民として、より良い社会づくりに協働し参画できる
- 3年間の学習を通じてその資質・能力が身につくようにプログラムを考える
- 学年が上がるにつれて参加の度合い高まり、社会との関わりが深くなるプログラム
- 学習の柱の人一つにSDGsを置く
- Transforming our worldを念頭に置き、SDGsの達成を目指した学習を目指す。
- それぞれの教科はどのようにSDGs達成に貢献できるだろうか。
- グローバルシティズンシップ科だけでなく各教科でもSDGsの達成に繋がる授業づくりを目標とする。教員自身の認識を変えていく。
- 教師の役割意識を考える機会。例)ファシリテーション、コーディネーション
- 教師も子どもから学ぶことも大いにある=学習者としての教師でありたい
授業実践に向けた取り組み・準備
- 資質・能力の共有
- 教科の年間指導計画にグローバルシティズンシップ科の資質・能力を当てはめた表を各学年で作成
- それぞれの教科の単元で着目する資質・能力を可視化・共有
- 内容の共有
- 他の教科の教科書の目次・年間指導計画を見る
- 社会課題という共通の軸の下、教科の枠を超えて各教科でできることを共有
- 職員室での雑談もヒントになり得る。教員側にも新しい発見が多い。
- 授業の進め方(学習方法)の共有
- 一斉授業型とグループワークの良い部分を掛け合わせたものへ
- きっかけは生徒の提案=学習方法のTransform
実践紹介
- 英語科として何ができるか?
- 多様な文化・歴史・考え方に触れる、「今」起きていることを掴む、自分の考え方を広く発信していく
英語科を中心とした実践例1):「5Rsで本当に地球が救えるのか?」
- 英語の授業の単元の終わりにYes or Noで意見を論述する
- プラスチックに注目し、その利用についてメリット・デメリットを考える
- 技術家庭科の「ごみの減量」のテーマと連携
- BBCのPlastic Actionにも参加@オンライン
英語科を中心とした実践例2):「かわいそうな象」
- 英語のリーディング用のテキストを平和教育について考えるテーマに改編
- 「Zoo is the peace」の解釈を考えるため生徒自身で様々な文献(国内外)を読む
総合的な学習の時間+社会+英語+国語の横断型
総合的な学習の時間:ケニア視点の持続可能な開発に関する講演会
社会科:より良い社会を目指して
英語科:Education First:Malala’s story
国語科:課題作文・エッセイを発表
- 講演会で得た知識をもとに、社会・英語の授業でテーマを設定・調査を実施
- 最終的に国語・英語の授業でポスターづくりを通じて表現活動
知識の「活用」=「深い」学びに繋げていくことが重要
- 各教科の知識をらせん状に積み上げることがSDGs達成に向けたカリキュラムに繋がる
栢之間倫太郎先生「SDGsを活用したPBL型の”総合“」
PBL型の総合とは?
- 問いとプロジェクトに関するイメージを子どもに与え、どのように課題解決に向けて動くかを考え、行動に移させる(子どもが主体的に活動する)
- 授業を行う際、教師には3つのステップがある
- 子どもたちをリードする
- チームの一員となって調整する
- ファシリテーションとなり、見守る(理想形)
- SDGsを切り口にしたプロジェクトを通じて学校・地域をより良くする
総合で扱うSDGs
- 目的とする段階:SDGsを伝える・知る(SDGsを子どもたちの身近な存在へ落とし込む)
- 目的・手段とする段階:SDGsを使う
- SDGsを視点設定、視野の拡大の道具として使い始める。(学びを広げ、深めるため)
- 手段とする段階:プロジェクトを考える
- SDGsを使って地域を分析→課題発見→プロジェクトづくり
- 子どもたち自身がワクワクする・SDGs達成に近づくという軸でプロジェクトを選別
(教師は見守る立場として適宜支援する)
例)近隣の介護施設との関係希薄を課題としたプロジェクト
- 介護施設でのお楽しみ会を企画⇒地域社会とのつながりを子ども自身が作る
- SDGsを目的化する場面も手段化する場面も両方必要である
現在、取り組んでいること
- 学年で複数のプロジェクトが動く教科を”つまみ食い”する
PBL for Sustainable World
- 学年でテーマを設定し、それに沿ったプロジェクトを形成
- SDGsを入り口として使用し、それ以降は適宜使うだけで手段として意識しすぎない
- 各教科には共通するキーワードが潜んでいる
- 教科間・教師間の連携が必要
所感
改めて各教科は個別で独立したものではなく、すべて根底で繋がっているということを今回のリレートークを通じて実感した。それは松倉先生の授業実践の中で教科がスムーズに連携することができた例をお聞きして、教科の単元のゴールは似ている部分が多くあると思った。その一方で、教科間での関わりが中学校では少なく、そのような共通点に気づくことが難しいのではないかと考えるようになった。その気づきを与える契機としてSDGsを軸に据えることができると考えられる。また、SDGsを目的と手段の両方の側面で捉え、徐々に目的から手段へと段階を踏んで授業を行っているという栢之間先生のお話を受けて、段階を設けることが重要であると思った。子どもたちが使う道具としてのSDGsの状況にすることが、今後の持続可能な社会のために育む必要があると考える。SDGsに固執しすぎないというお話もあり、子どもたちが主体的にプロジェクトを企画し学びを深めることが重視されていると感じた。さらに、お二人の先生に共通することとして、教師の立ち位置が挙げられる。松倉先生は「教師も生徒から学ぶことも大いにあり、学習者でもある」と、栢之間先生は「教師がリードし、チームの一員となり、見守る立場」と仰っていたためである。従来型の授業では教師が子どもたちをリード・教授する形式が多いため、なかなか実践することは難しいと思われる。だが、教師が臨機応変に立ち位置を変容できるかが子どもの学びにとって重要であると私は考えている。SDGsに関する新たな捉え方をお二人の先生のお話を通じて学び、さらに私は教育のもつ可能性と面白さを感じた。