学校からのSDGsとESD-地域や学校をつなぐ取り組み-(5)

2021年3月20日 リレートーク議事録 増田有貴先生/高田裕行先生

(1)増田有貴先生『SDGs×レジリエンス×地域巡検』

自己紹介

  • 村上市立荒川中学校赴任4年目
  • 現在1年生の副担任。
  • 英語科
  • 2016年JICA教師海外研修でタイへ。

教師海外研修の仲間との協働

  • 教師海外研修の一番の収穫は素晴らしい仲間に出会えたことだった。
    さらに、そのつながりが続いていくことが素敵だと感じている。
    • 高田裕行先生の新潟での出前講座
      パーニュを使ったベナンの貧困解決プロジェクト

今年度の実践の背景

  • 「ありたい社会」から「ありうる社会」への対応へ
    コロナによる社会の変化の中で、今までの実践に疑問。「ありうる社会」に対応できる能力の育成が必要。
  • 今だからこそ、レジリエンス
    竹のように、強く、しなやかな社会を作るためにはどうしたらいいのか?を考える。

今年度の実践

「新潟から発信!SDGsの視点でグローカルな生き方を学ぼう-持続可能でレジリエントな社会を目指すには?-」

  • 丸森・ザンビアの共同プロジェクトを紹介
  • レジリエントな社会を生徒と考える
  • レジリエント×村上市
    私たちには何ができるか?村上市には何ができるか?を考える。祭りや、鮭の養殖技術、獅子踊りなどが強みとして出てきた。
  • オンライン新潟巡検×SDGs
    新潟県内の様々な大学や会社を回る
    Ex.長岡技術大学・鈴木コーヒー
    本気でSDGsなどに取り組んでいる会社との出会いがあり、中学生にとっても大人にとっても学びの場に。
  • プレゼン大会
    「プレゼンは相手にプレゼントするもの」ということを念頭に、生徒たちは今までの学びを踏まえて、アイデアをプレゼン。

未来へ

  • 自分が将来どうありたい、何をしたいというライフキャリアにつながった生徒もいた。
  • 教師海外研修での出会い・学び・つながりが自分のレジリエントにつながった。

(2)高田裕行先生「SDGs×Minecraft×未来会議」

1.総合的な学習の取り組み「未来会議×SDGs×Minecraft」

プロジェクトの概要:
地域住民との「対話」(未来会議)を通じ、SDGsの視点から東大和市の地域の魅力や課題を再確認しMinecraftで持続可能なまちづくりを趣味レーションし教育長に提案する
  • SDGsについての学習や青年海外協力隊やJICA研修員による出前講座を行い、世界とのつながりや自分と世界課題の関わりを知る
  • 青年海外協力隊でベナンに滞在していた際の経験から、衣服ロスを事例に、変わるべきなのは途上国なのではなく先進国なのでは?ということに気づく→自分たちには何ができるかを考える
  • 東大和市役所員による出前講座:ゴミ対策や認知症などについて自分たちの住む地域でどのような取り組みがなされているのかを知る
  • 未来会議:地域はいろいろな人で成り立っている→地域の方々と一緒に市の魅力と課題、SDGsを東大和市にどのように取り入れられるか話し合う
  • Minecraft:Minecraftを使って、SDGsが達成された仮想東大和市をつくる
    生徒が作成したMinecraftの例:電車のホームの黄色い線を超えると音が出るホーム、ジェンダーに配慮した銭湯、楽しく通える未来の学校、カラーユニバーサルデザインのロッカー、子ども食堂など
    • クラス発表
    • 教育長に発表

2.今後の展望「総合的な学習の時間を中心としたカリキュラムデザイン」

  • 目指しているカタチ
    1. 問題を発見し、新たな価値を創造する教育活動
    2. 教室で「熱狂空間」を作り出す教育活動
    3. テクノロジーの力で「教室」と「世界」をつなぐ
  • 来年の展望
    総合や探究だけでなく、各科目で関連テーマを深める、美術や家庭科などの授業も活かし、全ての授業がSDGSにつながっていくようにしたい
  • レゴを使って、地域の課題をレゴのプログラミングを使って解決していくプロジェクトを行う予定
  • ネパールとの交流を通して、東大和市だけでなくネパールの課題の解決策も考える
  • 社会と教育の距離を近づけるような授業を今後もやってみたい

(3)佐藤先生ラップアップ

増田先生

  • SDGSとレジリエンスを合わせていることが大切。社会をレジリエントの視点で考えることが出来ている実践
  • システム志向をうまくつかって、様々なことをつなげて考えることが出来ている
  • 地域の強みを再認識するきっかけをレジリエントが提供していることが面白い。
  • 学びの可視化や大人たちとの出会い(巡検)によって、大人たちと中学生が関わることで、大人たちにも発見がある。中学生が社会に関わることは企業や自治体にも意味がある。
  • 伝えるプレゼンから伝わるプレゼンになっていた。伝えるだけではなく、相手目線になって考えるプレゼン。物事に対して相手目線で行うことができている。
  • ライフキャリアにもつながっているのが面白い。自分中心ではない、社会との関わりのなかで自分の今後の人生を考えることができているのが素晴らしい。

高田先生

  • 途上国側を変えることは考えやすいけど、本当に変わるべきは先進国なのか?という考えにはなかなかなれない。しかし、先進国が変わるべきだということに気づくことができる魅力的な問い。
  • マインクラフトも、ハード面の街づくりをただやるだけではなく、人と人というソフト面とも組み合わせて、どういったことができるのかを、今後レゴの取り組みを通して考えていけるのでは。
  • 協力隊を経験された人は、学校現場と社会とのつながりを活かすことができる想像力を持っていて、それを応用できていることが素晴らしい。
  • 課題を解決するだけでなく、価値を共創している。
  • SXやDXなど様々な技術を、SDGsや地域の課題を自分事化するためにどのように活かしていくことができるか。
  • これからは、総合を軸にして授業をデザインしていく時代になっていくのでは?

所感

お二人の実践をお聞きして、本当に「授業の中だけで終わらない学び」だと感じた。生徒の考え方やこれからの人生を変え、周りの先生方を変え、そしていつかは世界を変えるような、本当に素敵な実践であり、こうした実践を行う先生は、これからの社会の希望のような存在だと思った。

また、どちらの先生の実践も社会で生きる力、ありうる世界に対応する力をつける授業になっていると実感した。その対応する力、レジリエンスは、自分が強くあればいいということにとどまらない。失敗した時にそばにいてくれる人とのつながりや、もう一度やってみればいいと思える社会や自分の気持ちを含むということが私にとって大きな学びだった。一つの授業実践から皆がいろんなことを学べるリレートーク。来年度がすでに楽しみだ。

文責:JICAインターン 広瀬奈美・長田のっこ