地域連携でサイクロンから国を守る! 南東部アフリカとインド洋諸国の7ヵ国が「防災プラットフォーム」を発足

2019年10月28日

2019年夏、南東部アフリカの3ヵ国と南西インド洋4ヵ国による「防災プラットフォーム」が発足しました。防災プラットフォームとは、参加各国の課題解決に向けた防災情報の共有や意見交換の土台となる場。各国の防災管轄組織の代表者に加え、複数の開発機関も参加する「南東部アフリカおよび南西インド洋諸国をつなぐ、これまでにない防災ネットワーク基盤」となることが期待されます。

今回の防災プラットフォーム参加7ヵ国。地域としての防災ネットワーク推進に期待が高まります

発足のきっかけとなったのは、今年3月に南東部アフリカを襲い、300万人以上が被災したとされる超大型サイクロンです。広域に、迅速かつ持続可能な協力のあり方を模索していたJICAとモーリシャス政府の防災対策における知見、そして同地域への発展を支えたいという強いリーダーシップが結び付き、防災プラットフォームが構築されました。

JICAはモーリシャスで、気象レーダーの整備や「地すべり対策能力向上プロジェクト」などを実施してきました。プラットフォームの発足に伴い、その知見が近隣国にも広く活用されます。2019年5月からはモーリシャスで「気象観測及び予警報能力向上プロジェクト」も始動、さらに正確で即時性の高い気象情報の発信体制を整備しています。

【画像】

(左)2019年4月、JICAの支援でモーリシャスに気象レーダーが完成。近隣諸国の防災情報にも活用されます
(右)2012年からJICAがモーリシャスで支援してきた「地すべり対策プロジェクト」の知見やノウハウも、防災プラットフォームを通じて近隣諸国に共有されます

“災害先進国”の知見を周辺諸国とシェアする

広域防災ワークショップで意見交換する各国からの出席者(2019年7月)

防災プラットフォーム発足に先駆けて2019年7月にモーリシャスで開かれたのが「南東部アフリカーインド洋諸国広域防災ワークショップ」です。インド洋諸国からは発足の中心となったモーリシャスに加え、マダガスカル、コモロ、セーシェルの計4ヵ国が参加。サイクロンの被害を受けた南東部アフリカからは、モザンビーク、マラウイ、ジンバブエの3ヵ国から各国の災害復興を担う代表者が参加しました。

ワークショップでは、モーリシャスで取り組んでいる地滑りや洪水への対策法のほかにも、気象観測システムによる予警報の効果的なアプローチについて、JICAの専門家が講義。各国の参加者からは、各議題におけるそれぞれの国での現状や課題の共有、対策案の協議などが行われました。

防災プラットフォームの発足式典。ワークショップは発足のプレイベントとして有効に機能しました

ワークショップ開催後には、参加メンバーらが連絡や相談を容易にできる基盤づくりとして、連絡先リストやメーリングリストの作成のほか、クラウド上で資料共有ができるようにネットワークを整備。2020年以降も定期的に、防災プラットフォームを通じた災害時の支援のあり方などを議論していく予定です。

近隣国同士だから連携に意味がある

参加者からは、ワークショップでの学びと防災プラットフォームに寄せる期待の声が聞こえてきました。

ジェームス・チィウシワ氏(マラウイ副大統領府災害管理本部リスク管理局長)

ジェームス・チィウシワ氏(マラウイ副大統領府災害管理本部リスク管理局長)は、「マラウイでは地すべり対策への知見がなく、対策もほとんど進んでいないが、甚大な被害をもたらす重要なテーマとして再認識した。今回のワークショップで得た知識や専門家を含むネットワークを有効活用して、自国での対策を強化したい。今後は、地域近隣的な課題への対策協議はもちろん、自国での災害対策強化を検討するための情報共有の場として、防災プラットフォームを活用していければ嬉しい」と語ります。

リユトゥナンコロネル・ファリ・アリティアナ・ファビヤン氏(マダガスカル国立災害危険管理局プロジェクトコーディネーター)

また、リユトゥナンコロネル・ファリ・アリティアナ・ファビヤン氏(マダガスカル国立災害危険管理局プロジェクトコーディネーター)は、「専門家によるセミナーはもちろん有益だったが、環境が似ている近隣国の課題や取り組みを知ることができて非常に良かった。今後は、定期会合以外にも、電話会議などで課題解決の意見交換を進めていきたい。マダガスカルは防災プラットフォームの運営事務局として、今後もJICAと連携し、このワークショップの価値を最大限に引きだしていきたい」と述べました。

ともに災害を乗り越えていくために 

広域防災ワークショップに参加した市川建介氏(現モーリシャス公共インフラ陸運省顧問・大臣アドバイザー:元JICA専門家)は、アフリカ南東部各国が集まった今回のワークショップの意義について、次のように話します。

「この防災プラットフォームに参加した多くの国では、防災に対する専門知識が乏しく、いち早く防災発生を予測する手法を持ち合わせていません。そのため、まずは近隣諸国での知見の共有によって、各国がどのような災害対応を得意としているか、もしくはどの国にどのような専門家がいるのかを把握することが重要です。災害に対する知見を共有し、近隣諸国でともに災害を乗り越える可能性を高められたことが、今回のプラットフォームの最も重要な成果であると考えています」

地域各国が一体となって知見を補い合うことで、被害を最小限に食い止める「防災プラットフォーム」の今後の成果に、期待が寄せられます。