2021年11月5日
第10回:山下 里愛さん
(村落開発普及員(現:コミュニティ開発)、2002(平成14)年度1次隊、任地:マサカ県マサカ市)
開発コンサルタントとして、現在はウガンダやソマリアのプロジェクトに携わっている山下さんに、現在の仕事の原点ともなっているウガンダでの協力隊活動についてお話しをお聞きしました。
(JICA)現在も東アフリカのプロジェクトに関わられているそうですが、まず協力隊に参加したきっかけを教えてください。
(山下さん)高校時代から国際協力に関心があり、大学時代に参加したNGOのスタディツアーでマレーシアのボルネオ島で活躍する青年海外協力隊員に出会ったことや、先住民族の暮らしに触れたことが原点となりました。実際に協力隊への応募を決めたのは、大学院時代にフィリピンやタイでフィールドワークを2、3か月行い、「途上国にもっと長く滞在して、現地の人々と一緒に活動したい」と思ったためです。
(JICA)高校生の時から、国際協力に関心があり、協力隊の参加、そして今のお仕事に繋がっているんですね。いざ、ウガンダに派遣されることが決まった時は、ウガンダにどんな印象を抱いていましたか?また実際に来てみた時の印象はどうでしたか?
(山下さん)当時はまだJICA事務所もなく、ウガンダ初代隊員が派遣されたばかりの時期だったため、派遣前に現地の情報、特に任地の情報はほとんどありませんでした。書籍やインターネットからの限られた情報で、自然豊かな国、エイズなどの感染症が多い国という印象でした。派遣後は、想像以上に緑や水が豊かで自然が素晴らしく、任地のマサカはのんびりしていて、同僚も優しく明るい人ばかりという印象でした。しかし、北部では内戦が続いており、毎日誘拐された人や亡くなった人のニュースが流れ、同じ国とは思えない違和感をずっと抱えていました。
(JICA)今ほど情報が手に入らない中での派遣は不安も多かったのではないでしょうか。配属先では、どのような活動をされていましたか?
(山下さん)マサカ市役所に派遣され、計画作りの担当として、市の開発計画の作成、学校や保健所、道路など事業の計画やモニタリング、予算配分などに従事しました。市の職員や議員を集めたワークショップを開催し、PCM手法を使った課題分析やプロジェクト立案、ジェンダーの視点に立った計画作りなどを参加型で行いました。その他、市内の農村部にある農家グループの一員として、有機栽培の野菜作り、養蜂、バイオガス事業に参加したり、現地のNGOでストリートチルドレン向けの卓球教室を開いたりしました。
(JICA)市の開発計画から、有機農業、卓球教室まで!?本当に幅広い活動をされていたんですね。様々な方々と関わられたと思いますが、印象に残っているエピソードを教えてください。
(山下さん)任地に赴任したばかりの頃は、外国人が珍しかったこともあり、ストリートチルドレンから物乞いをされたり、石を投げられたりしたことがありましたが、卓球教室を始めたとたん、子どもたちの人気者となり、彼らの生い立ちや直面している問題についても深く話せるようになったことです。
(JICA)こちらの方々は、一見、外国人に関心がないような印象を受けることがありますが、一旦仲良くなると、本当に家族のように接してくれるような面もありますよね。やはり任地に暮らして、任地の人と一緒に過ごす時間の多い隊員は任地の人に受け入れられやすいんでしょうね。
(山下さん)ほかにも、週末を使って参加した農家グループの活動では、お客さんとしてではなく、メンバーの一員として扱ってもらえたことが嬉しかったです。一緒に有機農業について勉強したり、実践したり、マイクロファイナンスの仕組みを生み出したりしました。また、毎月の定例会の後の懇親会で、日本食(肉じゃが)を作ったところ大反響で、その後何度もリクエストがありました。さらに、そのグループを通じて出会った人が、私の帰国後に栃木県にあるアジア学院に留学することになり、交流が続いたことも嬉しかったです。
休日返上、週末も任地の方々と一緒に過ごしていらっしゃった山下さん。後半では、協力隊活動を経て、ウガンダと深くつながっている現在についてお話しを聞きました。(後半へ続く)