東南アジアでも展開される「復興から開発へ」の支援-ラモス=ホルタ・東ティモール大統領が緒方理事長と会談-

2010年3月24日

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ラモス=ホルタ大統領(左)は、1996年、東ティモールにおける紛争解決への尽力によりノーベル平和賞を受賞

3月16日、緒方貞子JICA理事長は、ジョゼ・ラモス=ホルタ東ティモール大統領と都内のホテルで会談し、「復興期」を脱して「開発」への移行を目指す同国に対し、JICAは今後も引き続き支援を行っていくことを伝えました。

クリーン・エネルギーの導入が、貧困対策や農村開発を効果的に進める

東ティモールは、インドネシア・バリ島の東方に位置する小さな島国です。1999年、国連が主導した住民投票によりインドネシアの占領から開放され、2002年、21世紀に最初に独立を果たした国となりました。一人あたりのGDPは590ドル(2009年推定)と、アジアの最貧国の一つです。主要産業は人口の8割が従事する農業ですが、主食のコメの自給率は4割程度、しかも唯一の換金作物であるコーヒーの輸出量もそれほど多くなく、農業セクターがGDPに占める割合は4分の1程度にとどまっており、生産性の低さが大きな課題です。

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「クリーン・エネルギーへ転換を図っている」と、自国の政策に言及する大統領

ラモス=ホルタ大統領は、JICAがこれまで行ってきた長期的視野に立った支援に謝意を述べた上で「平和の定着に続く現在の東ティモールの重要課題は、農村の貧困対策である。中でも、青年層の失業率の高さは深刻だ」と実情を訴え、「農村の貧困支援策の一つとして太陽光、バイオガスなど、代替エネルギーの導入を図っている。これらは、小規模であっても、二酸化炭素排出量削減の観点からも重要」と、これからの開発政策について述べました。これに対し、緒方理事長は、「東ティモールに対する日本の支援重点分野の一つである農業・農村開発をより効果的に進められるよう、JICAもクリーン・エネルギーの導入支援を計画している。これは貧困層支援の観点に加え、環境保全の観点からも、重要な取り組みである」と、今春、東ティモールで開始予定の無償資金協力「太陽光を活用したクリーン・エネルギー導入計画」(注)に言及しました。

治安回復を象徴する青年海外協力隊の派遣

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農村開発に貢献していきたいと述べる緒方理事長

また、緒方理事長は、「かねてから進めていた手続きが完了し、初めての青年海外協力隊員2人を東ティモールに派遣する」とホルタ大統領に伝えました。

東ティモールでは、独立国家として一歩前進し始めた矢先の2006年、首都で政府に不満を持つ若者らが中心になった暴動が頻発。約14万人もの国内避難民が発生する事態に陥り、国連やオーストラリア、ポルトガルが治安の安定化に注力してきました。それらが功を奏し、2007年には、初めて東ティモール政府が実施主体となって、大統領選挙、国民議会選挙が平和裏に行われました。

「青年海外協力隊員などのJICAボランティアを派遣できるようになったということは、それだけ東ティモールの治安、情勢が安定してきていることの現れである」と、緒方理事長は、平和の定着に向けて劇的な進歩を遂げている同国の努力に敬意を表しました。

東南アジア第一・大洋州部 東南アジア第二課

(注)無償資金協力で太陽光発電システムを供与する。協力期間は2010年4月から13ヵ月を予定。