2010年10月4日
日本とガーナの協力関係について話し合う緒方理事長(左から2人目)とミルズ大統領(右から2人目)。橋本理事(左端)も同席した(写真はいずれも迎賓館で)
緒方貞子JICA理事長は10月1日、東京・元赤坂の迎賓館で、来日中のガーナのジョン・エバンズ・アッタ・ミルズ大統領と会談し、両国の協力関係について意見を交換した。
冒頭、ミルズ大統領は「JICAはガーナにとって重要な開発パートナー。多岐にわたる分野で支援していただき、大変感謝している」と、40年以上の長きにわたる協力への謝意を表した。
これに対して緒方理事長は「JICAはガーナの経済成長を通じた貧困削減を図るため、保健、教育、農業、インフラの各分野において重点的に協力している。また、現在、91人の青年海外協力隊員を派遣しており、教育、保健などの分野で活動している」と述べた。
さらに、毎年100人以上(延べ2,400人以上)の研修員を受け入れていることなど、JICAが人材育成に力を入れていることにも触れ、11月から「稲作振興」「産業支援」「道路管理技術」「初等教育」の四つのガーナ向けの研修コースが、福島県の協力で開始されることになり、2012年度までの3年間で約100人を受け入れる計画であることを伝えた。
ガーナと福島県の関係は、同県出身の野口英世が、黄熱病を研究するために同国に滞在中、自らが黄熱病を患って生涯を閉じたことに由来する。その縁をきっかけに、ガーナから医療協力の要請があり、1969年から10年間にわたり、福島県立医科大学によるさまざまな協力が実施された。その成果として育成されたガーナ人研究者の活動を支援するため、1979年に日本の協力で首都・アクラに「野口記念医学研究所」を設立。その後、30年以上にわたる協力によって同研究所は西アフリカ有数の基礎医学研究所に発展し、日本だけでなく、欧米の研究機関と共同研究を行うまでになっている。
ここ数年では、野口英世の没後80年(2008年)、野口記念医学研究所の創立30周年(2009年)と記念すべき年が相次いだ。2010年3月には、アフリカの医学を支援するために日本が創設した「野口英世アフリカ賞」受賞者による記念シンポジウムがアクラで開催され、皇太子殿下がご出席されるなど、ガーナと福島県の間には長い歴史がある。
会談には、ガーナの成長のけん引役となるエネルギー、道路、貿易産業の各大臣らも同席した
また、ガーナでは近く石油の商業生産が始まる予定だが、会談に同席していたオテン・アジェイエネルギー大臣が「原油に付随して天然ガスも出ている。天然ガス採掘のマスタープラン作成調査をJICAにお願いしたい」と要望した。これに対して緒方理事長は「資源探査の専門機関を管轄する関係省庁や関連機関とよく相談したい」とし、前向きに検討することを伝えた。
同じく同席していたジョー・ギディス道路大臣は「新しい道路の建設はもちろん、既存の道路の維持管理も重要だと考えている。現在、使用しているメンテナンス機材の老朽化が激しいため、新たな機材の供与と人材育成を支援してほしい」と述べた。
緒方理事長は「すでに実施している道路案件もあるので、維持管理の支援についても検討したい。福島県での研修でも、道路の維持管理のコースが計画されている」と応じた。
また、緒方理事長は、9月29日にミルズ大統領と会談した菅直人首相が、円借款の再開を検討すると述べたことに言及し、「ガーナはグッドガバナンスを推進し、近年では5〜7パーセントの経済成長を遂げている。今後もアフリカ全体の安定と開発のモデルとなることを期待しつつ協力していきたい」と述べた。