緒方理事長のIMF・世銀年次総会出席-アフリカ開発銀行総裁、パキスタン財務大臣とも会談-

2010年10月14日

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IMF・世界銀行年次総会でスピーチをするゼーリック世界銀行総裁

緒方貞子JICA理事長は10月5日から11日にかけて米国ワシントンD.C.に出張し、10月8日に現地で開かれたIMF・世界銀行の年次総会に出席したほか、年次総会のためにワシントンを訪れた各国の援助実施機関および政府高官らと会談した。

10月6日のラジブ・シャー米国国際開発庁(USAID)長官、ロバート・ゼーリック世界銀行総裁との会談に続き、10月8、9日にはアフリカ開発銀行のドナルド・カベルカ総裁やパキスタンのアブドゥル・ハフィーズ・シェイフ財務大臣らと会談。アフリカ地域の課題、パキスタンの洪水被害への対応など、各地域の情勢について意見を交わした。

元気な途上国に求める世界経済のけん引役

年次総会では、ドミニク・ストロスカーンIMF専務理事、ロバート・ゼーリック世界銀行総裁、そして議長を務めたナイジェリアのオルシェグン・アガンガ財務大臣が演説したほか、7、8日に援助関係者が行った討論は世界銀行のウェブサイトでライブ公開され、閲覧者がその場でコメントを入力できるブログも設けられた。「オープン・フォーラム」と名付けられたこのサイトにはビデオメッセージのページもあり、緒方理事長も中国、韓国など台頭するアジア諸国の新たな役割や、こうした新興ドナーと共に考えるアフリカ支援について、メッセージを寄せた。

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年次総会には多くの援助関係者が集まり、会場の内外で意見を交わす。写真は、世界銀行のジャスティン・リン・チーフエコノミスト(右)と理事長

今回の総会は、2008年の経済危機以降、世界経済の回復に力強さがなく、多くの国で失業率が高止まりしている中での開催となった。各国が景気刺激策や為替の安定など政策協調を模索する中で、ゼーリック世界銀行総裁は「成長の多極化」を指摘。そして新興国など、相対的に元気な開発途上国が「世界的成長の原動力になっている」とした上で、経済成長を続ける新興国の発言力を国際機関の中で拡大させる一方、相応の責任分担を伴う成熟した相互協力の関係が構築されていくことに期待を寄せた。

ゼーリック総裁はまた、自然災害や食料価格の乱高下など、外的要因に起因するリスクを抑制し経済の回復に弾みをつけるため、世界銀行が取り組む民間投資の誘致事例などを紹介した。その延長線上でIDA(注1)増資の必要性にも触れ、従来のドナーに拠出額の増加を、そして新興国へも拠出協力への理解を訴えた。

南部スーダンの独立を巡って

緒方理事長は10月8日、アフリカ開発銀行(AfDB)のカベルカ総裁と会談した。会談では独立を求める南部スーダンの選挙後の行方、ソマリア情勢が話題の中心となった。

南部地域独立の是非を問う住民選挙を2011年1月に控えたスーダン。カベルカ総裁が「平和で円満な移行を望んでいる。しかし、分離にあたっては、スーダンが抱える債権債務および歳入の割り振りが大きな課題となる可能性があり、その克服が必要だ」と言及すると、緒方理事長は「問題解決のためには、行政府のさらなる能力強化が欠かせない」と強調した。また、理事長は南部スーダンの職業訓練校への支援、港湾へのアクセス道路の改良などJICAのスーダン支援の現状を紹介した。

緒方理事長とカベルカ総裁は、2005年6月にAfDBと日本政府が共同で発表した「アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ:エプサ(Enhanced Private Sector Assistance for Africa:EPSA)」(注2)についても触れ、更なる活性化のために協力することで合意した。

洪水に見舞われたパキスタン、食料確保と生計の維持が鍵

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洪水で崩落した橋(7月30日撮影、パキスタン政府提供)

翌10月9日には、建国史上、最悪の洪水被害に見舞われているパキスタンのシェイフ財務大臣と会談した。今後の支援ニーズについてシェイフ大臣は、2,000万人が被災したこの洪水により「農業分野での被害が大きく、当面作付けができない」と被害状況を説明、次の収穫に至るまでの生計維持の面で国際社会の支援を求めた。

現在、世界銀行とアジア開発銀行の主導で詳細な被害状況および復興に必要な支援にかかる調査が進められており、JICAもこれに参加している。調査結果は、10月中旬にまとめられ、同月に開催予定の「パキスタン・フレンズ首脳会合」や、11月に予定されている「パキスタン開発フォーラム」など、パキスタンと支援国による議論の場で活用される予定だ。

連携体制が鍵となる今後の支援

今回の米国訪問期間中、緒方理事長はその他多数の関係者と精力的に会談を重ねた。その中で、雇用を伴う経済成長の実現と、新興国を含めた幅広い政策協調を求める声が多く上がっていたことに、昨今のグローバリゼーションを踏まえた議論の変化を感じたという。

緒方理事長は帰国後、他の開発援助機関との継続的な情報交換はもとより、米国内にある援助機関、シンクタンク、大学機関との連携を今後も大切にしていきたいと語った。

(注1)国際開発協会(International Development Association:IDA)は、世界銀行グループの中でも、開発途上にある最貧国を対象に社会サービスの充実化、経済成長の促進を支援する機関。資金源はIDA加盟国170ヵ国のうち、45ヵ国からの拠出金(2010年10月現在)。

(注2)EPSAは、2005年6月、アフリカ開発銀行グループと日本政府が発表した、アフリカの民間セクターを包括的に支援するための共同イニシアティブ。同イニシアティブの下、JICAはアフリカ開発銀行と連携して民間セクター支援を目的とした協調融資促進スキームを策定。サブサハラ・アフリカ向け支援として、国境を越えた広域に裨益するインフラの整備、民間セクターおよび農業セクター開発等に取り組んでいる。