2010年10月22日
10月19日、緒方貞子JICA理事長はボツワナのセレツェ・カーマ・イアン・カーマ大統領と都内のホテルで会談し、ボツワナの今後の経済成長を後押しするための支援について話し合った。
会談でカーマ大統領(左)は「カズングラ橋の建設が実現すれば、南部アフリカ全体にもたらす効果は大きい」と強調した
南アフリカの北に位置し、5ヵ国に囲まれた内陸国のボツワナ。ダイヤモンドや銅、石炭、ニッケル、金、ウランなどの鉱物資源に恵まれている。
冒頭、カーマ大統領はこれまでの日本の支援に謝意を表明。また、前日に行われた菅直人首相との会談でも言及された、ボツワナとザンビアの国境を流れるザンベジ川に建設予定のカズングラ橋に対する円借款供与に大きな期待を抱いていることを強調した。
ボツワナとその北に位置するザンビアの国境には、ザンビアからインド洋に抜けるザンベジ川が横たわる。ボツワナからザンビアへ入るにはフェリー、もしくは山岳地帯を通過してジンバブエを経由する道路しかなく、両国間での円滑な流通を阻んできた。また、コンゴ民主共和国から南アフリカまでを結ぶ主要回廊の通過点でもあるため、交通量が年々増加し、フェリーの待ち時間は長くなり、道路は交通渋滞が慢性化している。
ザンビア入国前にボツワナで入国手続きを待つトラック。食品から建材まで、あらゆるものがトラックで運ばれ、道路の渋滞解消が喫緊の課題となっている
こうした問題を解決しようと、日本はボツワナとザンビアを結ぶ橋梁建設のための円借款供与を検討している。日本とボツワナ・ザンビアとの協議が順調に進めば、来年の前半にはボツワナとの間で円借款貸付契約を締結する見込みだ。カーマ大統領は、「北に抜けるこの橋は、内陸国ボツワナにとって食料や資源を運ぶ生命線だ」と日本の協力に期待を寄せた。
また、会談では、今年11月から開始予定のボツワナ・ナミビア間「ワン・ストップ・ボーダー・ポスト(OSBP)導入プロジェクト」についても話が及んだ。ボツワナの西に隣接するナミビアとの出入国手続きや税関検査などを一度で済ませようという試みだ。
緒方理事長が「JICAはザンビアとジンバブエ間、ケニアとタンザニア間などアフリカ各国でOSBPの導入に協力している」と紹介すると、カーマ大統領は「今回の協力を通じてOSBPの概念をしっかり理解できれば、ナミビア以外の近隣国との間でも活用していきたい」と高い関心と意気込みをのぞかせた。また、「アフリカ全体で進む道路整備や通信インフラの普及は、人々を結び付けることに貢献している」とインフラ整備の重要性について述べた。
カーマ大統領は会談で、「日本の協力が円借款にとどまらず、人材育成や技術協力など幅広い分野に及ぶことを関係省庁に伝えるために同国でセミナーを開いてほしい」と要望した
ボツワナは自国の2010年の経済成長率を8パーセントと見積もる、アフリカでも数少ない中進国だが、その成長に見合う電力供給がされていない。国全体の530メガワットの需要に対して、現在は132メガワットしか供給できておらず、残りは南アフリカから購入している。
ボツワナが目標に掲げる、2012年までの電力の自給自足を支援するため、JICAは、現在稼働しているモルプレ火力発電所の改修プロジェクトに乗り出すほか、ボツワナ側はさらに150メガワットのタービンを新たに4基設置することを検討している。大統領からは、この計画について「電力関係のプロジェクトには他国からも支援したいという声が上がっているが、日本の企業にもぜひ参加してもらいたい」との発言があった。
会談ではそのほか、11月にボツワナ貿易産業省にJICAから産業アドバイザーを派遣する予定であること、職業訓練や農業分野で青年海外協力隊などのボランティアが活躍していることが話題となった。
ボツワナの安定した治安、汚職防止への取り組みは国際社会の中でも評価が高い。JICAアフリカ部の熊谷真人南部アフリカ課長はボツワナを「南部アフリカ地域において日本企業が比較的進出しやすい国」と位置付ける。JICAは今後もボツワナの経済成長に向けた基盤整備を支援していく。