2011年1月21日
緒方貞子JICA理事長は1月14日、米州開発銀行(Inter-American Development Bank: IDB)のルイス・アルベルト・モレノ総裁とJICA本部で会談し、ハイチ支援や自然災害への対応について意見交換を行った。
IDBは、ワシントンD.C.に本部を置き、中長期の資金貸付、出資、保証、無償資金協力、技術協力を通じて中南米・カリブ地域への開発協力を行っている国際開発金融機関。今回の会談は、協調融資枠組みの創設など中南米・カリブ地域の気候変動対策向け業務連携に関する覚書に署名した際に行われた。
緒方理事長がモレノ総裁と会談するのは、2008年7月以来2年半ぶり
会談冒頭、モレノ総裁は約1年前(現地時間2010年1月12日)に発生したハイチ地震に言及。復興状況について「IDBも力を尽くしているが、日本が果たしている役割も大きい。今後の支援にも期待している」と、国際社会におけるハイチ支援の必要性を述べるとともに日本の協力を評価した。JICAは震災直後に国際緊急援助隊の医療チームを派遣、その後もハイチ政府が国連、世界銀行、IDBなどと協力して実施した「復興ニーズ調査」に参加した。2010年7月には首都ポルトープランスに事業拠点を開設し、緊急プロジェクトを通じた給水システムの復旧整備や復興計画の策定支援などを実施してきた。今後も耐震分野の専門家派遣や、阪神・淡路大震災を経験した兵庫県との連携による研修事業を通じて、日本の知見・経験を生かした復興支援を継続していく。
モレノ総裁は、より大きな開発効果をもたらすために他ドナーとの連携をより深化させ、中南米の開発支援に取り組みたいとの観点から、長年にわたる日本と中南米の良好な関係を踏まえ、「今こそ日本はもっと中南米支援に力を入れるべき」とし、中でも「エネルギー分野で開発ニーズの大きい中米・カリブ向けの気候変動対策支援への期待は大きい」と強調した。IDBは現在、域内での電力融通を促進・改善させるため、中米の電力網構築事業に取り組んでいる。モレノ総裁はこうした中米向けエネルギー分野の事業に触れつつ、「再生可能エネルギーおよび省エネルギー分野への支援は今後さらに推進していくべきで、日本との協調融資で支援を拡大させたい」と、今回締結した覚書による連携強化を歓迎した。
緒方理事長は「中南米ではブラジルなどの南米諸国が中心となって経済成長を牽引(けんいん)しているが、中米は経済発展に必要なインフラ整備がまだ十分でない」と、中米への開発協力の必要性に理解を示した。
緒方理事長は、ブラジルやオーストラリア、グアテマラをはじめ、世界各地で深刻となっている自然災害について触れ、「自然災害への対応は想像以上に難しい」と述べた。モレノ総裁は「ブラジルやアンデス諸国での洪水、アルゼンチンの干ばつなど、極端な例が散見されている。現在起きている自然災害の要因の一つが地球温暖化と考えれば、これらは人災といえるかもしれない。災害対策として防災管理がより一層重要となってくるが、都市計画や施設整備は一朝一夕には進まない」と述べ、防災分野への支援の重要性とその難しさに言及した。JICAは中米地域に対し、広域防災能力向上プロジェクト(通称「BOSAI」)をはじめとする技術協力を実施するなど、日本の防災分野での知見・経験をもとに当該地域の防災体制強化に取り組んでいる。
最後にモレノ総裁は「今後も両機関の連携がさらに進むことを期待する」と述べ、会談を終えた。
中南米部