緒方理事長が大洋州を訪問-気候変動対応策や廃棄物管理に広域的な取り組みを-

2011年6月28日

6月20〜24日、緒方貞子JICA理事長は、大洋州のツバルとフィジーを訪問した。

大洋州の国々のほとんどは、広大な海域に分散する島国だ。国土の狭さや市場からの距離による経済発展の難しさ、サイクロンや干ばつなど自然災害に対する脆弱(ぜいじゃく)性といった、地域特有の課題に直面している。

気候変動対応策、インフラ整備支援の現場を訪問

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テラビ首相(左)と緒方理事長

中でもツバルは特に脆弱性が高い国だ。南太平洋に点在する九つの島(総面積25.9平方キロメートル)に約1万2,000人が暮らしているが、燃料と食料のほとんどを輸入に頼っているため、国際経済の変動による影響を直に受けやすく、気候変動に伴う海面上昇による国土の喪失も懸念されている。

6月22日に緒方理事長と会談したウィリー・テラビ首相は、東日本大震災へのお見舞いの言葉とともに、これまでの日本政府とJICAの継続的な支援に謝意を示した。緒方理事長は、震災にあたってツバル国民から寄せられた義援金への謝意を述べた。そして、現在の両国の良好な関係を、さらに発展させる取り組みについて、今後も協力して実施していくことを確認した。

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プロジェクトでは、ツバルが独自に生態系をモニタリングしていけるよう、人材育成も行っている

テラビ首相との会談後、緒方理事長は島を構成する砂の生成メカニズムを研究し、海面上昇による海岸浸食への対応策を探るJICAのプロジェクト「海面上昇に対するツバル国の生態工学的維持」の現場を訪問した。続いて、埠頭(ふとう)、病院、ラジオ局を訪れ、日本の資金協力で整備されたこれらの施設が、その後JICAの技術協力、研修などと組み合わされて活用されている現場を視察した。一方、島のいたるところで、分別など適切な処理がされないまま放置された廃棄物の状況も視察した。

大洋州全体を視野に入れた協力を実施

【画像】一方、フィジーは古くからプランテーション開発や観光開発が進み、多数の地域国際機関が同国に本部を置くなど、大洋州島嶼(とうしょ)国の中心的な役割を果たしている。このため、JICAはフィジーに対して、大洋州全体を視野に入れた広域協力の拠点として、地域内各国に裨益(ひえき)する支援を展開している。

緒方理事長は、フィジーでは、JICAの協力で廃棄物問題に取り組み3R(注1)を推進する「廃棄物減量化・資源化促進プロジェクト」の現場、かつて日本が資金協力で整備し、現在は地域内各国のサイクロン監視センターの役割も果たしているフィジー気象局などに加え、南太平洋大学を訪問した。南太平洋大学は、大洋州の12ヵ国が共同で設立した域内最高水準の国際高等教育機関だ。JICAは同大学の情報通信技術(ICT)関連設備を整備し、各国にあるキャンパスに対しても十分な遠隔教育を提供できるよう、能力向上を支援している。

他機関と連携した支援の必要性

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スレイド事務局長(左から二人目)との会談に臨む緒方理事長(右から二人目)

緒方理事長は、23日、大洋州訪問の最後に、フィジーの首都スバに本部を置く地域機関「太平洋諸島フォーラム」(注2)を訪問した。同フォーラムには大洋州地域の15ヵ国、1地域が加盟しており、援助の効果と効率性を高めるため、大洋州に対する各援助国・機関間の調整、情報提供を行っている。

ツイロマ・ネロニ・スレイド事務局長との会談で、緒方理事長は、ツバル訪問時に視察した同国の廃棄物問題の深刻さに言及。その上で、各国政府だけでなく、地域的な取り組みを進めることが重要であるとの認識で一致した。

訪問を終えた緒方理事長は「大洋州への協力にあたっては、島嶼国全体に裨益する広域アプローチが重要であると感じた。また、養浜事業など海面上昇への対策(注3)や、廃棄物処分・管理の改善など、地域の共通課題について、短期・長期の計画に基づき、他のドナーとも連携して、総合的に取り組んで行かなければならない」との考えを示した。

(注1)Reduce=ごみの減量、Reuse=再利用、Recycle=リサイクル。

(注2)日本は1997年以降、3年ごとに日本と同フォーラム加盟諸国との首脳会議である「太平洋・島サミット」を開催している。

(注3)ツバル、マーシャル、キリバス、モルディブなど、大洋州やインド洋に存在する、サンゴや有孔虫など生物の遺骸で国土が形成された環礁国では、標高が最大でも5メートル程度で、海面上昇に対して非常に脆弱である。