緒方理事長とフィリピンのアキノ大統領が会談-戦略的パートナーシップに基づく関係強化に向けて-

2011年10月4日

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「戦略的パートナーシップ」共同声明を踏まえて会談した緒方理事長とアキノ大統領

9月28日、緒方貞子JICA理事長はフィリピンのベニグノ・アキノ3世大統領と都内で会談し、防災協力、ミンダナオ和平、インフラ整備について意見を交換した。

緒方理事長との会談に先立つ27日、アキノ大統領は野田佳彦総理大臣と会談。両首脳は、二国間の関係を、基本的価値観や、市場経済国という地位、戦略的利益を共有したより深化した関係と位置付ける「戦略的パートナーシップ」に関する共同声明を発表した。

共同声明では、経済分野に関しては、経済連携協定(EPA)を通じた貿易・投資の促進、経済協力を通じた貢献により、フィリピンの経済開発に対する努力を支援することがうたわれている。また、ミンダナオの和平プロセスに対する支援にも言及している。

28日の緒方理事長とアキノ大統領の会談も、この共同声明を踏まえた内容となった。

災害リスク軽減を支援

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「災害情報伝達体制が整備され、今回の台風でも船舶の被害が回避された」と語るアキノ大統領

冒頭、アキノ大統領が「昨日(27日)フィリピンを直撃した大型台風による死者が一定数にとどまったのは、気象レーダーなどを含む災害情報伝達体制の整備に対するJICAの協力の成果だ」(注1)と、JICAのこれまでの支援に謝意を表明した。これに対し、緒方理事長は、「フィリピンと日本は台風、津波、地震など、自然災害の面で共通点が多い。日本は対外的にODAを行ってきたが、東日本大震災ではフィリピンをはじめ世界各国から温かい支援を受けた。世界の相互依存関係は一層強くなっていることを感じた」と応じた。

アキノ大統領は「台風などの災害の増加は、気候変動の影響もある。フィリピンでは緩和策の一つとして10万台のイートライシクル(e-tricycle)(注2)導入を検討している」と、CO2削減に関する自国の取り組みを紹介。さらに、同席したセサール・プリシマ財務大臣は「昨日『森林管理事業』に関する公文の交換が行われたことは喜ばしい」と続けた。フィリピンはこの円借款事業によって、ルソン島などで植林や森林の維持管理事業を進め、CO2排出量削減と洪水・土砂災害の防止、住民の生計向上に役立てる予定だ。

大統領が和平に関する意志を表明

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緒方理事長はミンダナオ和平の歩みを常に気にかけている

ミンダナオ島の西部地域では、1990年代に政府とモロ民族解放戦線(MNLF)との和平合意によりムスリム・ミンダナオ自治区が発足しているが、モロ・イスラム解放戦線(MILF)と政府の間では、今も和平交渉が続いている。JICAも、ムスリム・ミンダナオ自治政府の能力向上やインフラ整備支援、農業生産性向上、ミンダナオ国際監視団(IMT)への人員派遣などを通じて、2003年から同地域を支援してきた。また、アキノ大統領も、2010年6月の大統領就任時に、ミンダナオ和平を重要政策の一つとして掲げている。

「JICAは2006年に『開発は平和に貢献できるのではないか』という思いで支援活動を強化したが、和平の足取りはどのような状況か」と問いかけた緒方理事長に対し、アキノ大統領は「今後全力を注いで和平を推進していきたい。私の任期はあと5年。一日たりとも無駄にはしないつもりだ」と、和平交渉にかける意気込みを述べた。

この後話題はインフラ整備にも及んだ。同席したマヌエル・ロハス運輸通信大臣は、緒方理事長に「PPP(注3)を利用して、鉄道や道路など、マニラ首都圏の運輸交通インフラに関する支援をお願いしたい」と要請した。緒方理事長は「JICAは、2008年の技術協力と資金協力の一体化により、事業のスピードが上昇した。今後はPPPなど民間セクターとの連携によって、より早期の実施を実現したい」と応じた。

(注1)JICAは1980年代から有償資金協力「ダム洪水予警報システム建設事業(I)(II)」、技術協力「ダム放流に関する洪水予警報能力強化プロジェクト」などを通じてフィリピンの災害情報伝達体制構築を支援している。

(注2)Tricycle(トライシクル)は、オートバイにサイドカーを組み合わせた三輪自動車でフィリピンの庶民の足。イートライシクル(三輪電気自動車)は、リチウムイオン電池を動力とするもので、気候変動対応、燃料輸入費の削減などの効果が期待されている。

(注3)公共部門と民間企業がパートナーシップを結んでインフラなどを開発する手法(Public-Private Partnership)。