緒方理事長が英国国際開発省のミッチェル大臣、国連開発計画のクラーク総裁と会談

2011年12月16日

11月29日から12月1日まで、韓国・釜山で開催された「第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム」に出席した英国国際開発省(DFID)のアンドリュー・ミッチェル大臣と、国連開発計画(UNDP)のヘレン・クラーク総裁が、12月2日、JICA本部(東京都千代田区)で緒方貞子JICA理事長と相次いで会談し、それぞれの活動や今後の連携強化について意見を交換した。

JICAと英国国際開発省の連携の可能性

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アジアやアフリカ、中東での連携の可能性を協議した緒方理事長(左)とミッチェル大臣

冒頭、ミッチェル大臣は、中国がハイレベル・フォーラムで採択された釜山宣言(注1)を承認し、これに基づくパートナーシップの枠組みに参画することになった点を評価した。また、日本、英国を含め各援助国の財政状況が厳しい中、ドナー間の連携の必要性を強調。「連携によって、ドナー側のコスト削減と、被援助国の負担の軽減という二つのメリットがもたらされる」とし、今後の連携の可能性について質問を投げかけた。

これに対し、緒方理事長は「連携事業の促進には地域や課題を絞り込むことが重要。双方が共に重視する地域や課題に焦点を当ててはどうか」と応じ、南部アフリカ開発共同体(SADC)、東アフリカ共同体(EAC)、南東部アフリカ共同市場(COMESA)が目指すアフリカにおける自由貿易地域の構築に対する支援や、世界的に頻発している洪水や干ばつなどの大規模災害からの復興支援、軍隊撤退後のアフガニスタンに対する支援での連携の可能性について意見を交換した。

伝統的ドナーの役割と新興国の役割

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緒方理事長(右)とクラーク総裁は、民主化の進むミャンマーに対する支援についても意見を交換した

クラーク総裁との会談でも、釜山のハイレベル・フォーラムについて話が及び、クラーク総裁、緒方理事長共に、中国やインドなどの新興国の参加を歓迎した。緒方理事長は、「中国の対外援助を担当する同国商務部等とのチャンネルを築き、双方の知見や経験の共有を進めており、ブラジルとは、モザンビークで三角協力(注2)を実施している」と述べた。

これを受けて、クラーク総裁は「私たち伝統的ドナーは、新興国が国際的なシステムにコミットしていけるよう、新興国を戦略的パートナーとして位置付けている。ハイレベル・フォーラムで、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が『先進国はコミットを順守せよ、新興国も国際社会において今まで以上の役割を担うべき』という明確なメッセージを発信していたのが印象的だった」と述べた。

また、クラーク総裁は、UNDPは現在、中東においてチュニジア、エジプトのガバナンス強化に注力しており、エジプトでは議会関連予算を支援していることを紹介。「政変といえば、従来、西欧化を意味したが、中東の場合はイスラム文化への配慮が必要」とし、その点を踏まえて支援していく必要があると述べた。

これに対し、緒方理事長は、JICAがエジプトに対し、民主的な選挙実施や社会経済開発計画の策定、地下鉄整備と幅広く支援していることを紹介。先進国の中産階級とも遜色がない裕福層と貧困層とが併存しているエジプトの今後の発展について、「社会保障制度をいかに変革していくかが重要な鍵になるだろう」と応じた。

(注1)釜山宣言では、国際社会の開発目標を達成するため、各国の主体性の尊重や援助の透明性と相互説明責任などの五つの共通原則のほか、ジェンダー平等化の加速、アンタイド化の加速、脆(ぜい)弱国における持続的開発などについて合意。モニタリング体制として「効果的開発協力のためのグローバル・パートナーシップ」を設けることとした。
(注2)先進国や国際機関と、支援を行う途上国が連携して、支援を受ける途上国の発展・開発を支援すること。