総合商社が狙うBtoBtoC巨大マーケット

パキスタン最大の都市カラチ。人口およそ2000万人。
東京23区の総人口をはるかに超える、世界屈指の巨大な街です。

そのカラチ郊外にある工業団地にTriPack Filmの工場を訪れました。

TriPack Filmは三菱商事が1993年に地元企業と合弁で作った、
フィルムの製造・販売会社です。1995年から菓子のパッケージや
ペットボトルのラベルなどに使われる
包装用フィルム原料を主に生産しています。

商品そのものは企業に卸すため、直接BtoBのビジネスですが、
取引先はいずれも食品、飲料、化粧品、洗剤、
トイレタリーといった消費者向け企業ばかり。
その意味では、間接的に消費者向けの商品を販売している、
いわばBtoBtoCのビジネスです。

本社の応接室で商品サンプルを見せてもらいました。

なんとコカ・コーラとペプシコーラとセブンアップとネスレの
ペットボトルのラベルをすべて製造しています。
さまざまなお菓子やシャンプー、洗剤などさまざまな商品の
フィルムラベルや包装材がTriPack Film社製です。
なんとこの分野のパキスタンにおけるシェアは77%。
圧倒的なガリバー企業です。

工場現場を見学しました。

もともとは1メートル幅だったフィルムが、縦に横にと伸ばされて、
最終的には8.7メートル幅の長く薄いフィルムに形成されます。

スナック菓子やガムのパッケージ用に、
透明なフィルムにアルミを蒸着する工程もあります。

ここパキスタン国内で製造したフィルムは、海外へも輸出され、
さまざまな国の製品にも使われています。
設立20年弱で隠れた大企業となったわけです。

フィルム製造業をパキスタンで展開する、
というアイデアをなぜ三菱商事は思いついたのでしょうか?
三菱商事パキスタン総代表の安藤公秀さんに聞いてみましょう。

池上「なぜ、パキスタンに合弁会社を作ったのですか」

安藤「なんといっても人口が多いからです。人口は1億9000万人弱。一人当たりのGDPは1,228ドルほどですが、中間層と呼ばれる人口が8000万人近くいる。つまり、所得の底辺を対象とする新興国でのBOPビジネスより、上の層を狙った消費市場に対応したビジネスが展開できるはずだ、とにらんだわけです。実際、ヨーロッパの食品メーカー大手や家庭洋品大手のユニリーバが以前からパキスタンでビジネスを展開していました。消費者市場はさらに拡大すれば必然的に個々の商品に不可欠な包装フィルムやラベルなどの需要も同時に増えていくだろう。その読みが当たりました」

ベース・オブ・ピラミッド(BOP)と呼ばれる所得水準の低い層に
向けたビジネスの可能性が、昨今新興国市場では注目されています。
けれども、三菱商事はBOPという呼び名が普及するはるか前から、
パキスタンの中間層にターゲットを据えて、
消費市場を間接的ではありますが、開拓に成功しました。

さらにいえば、BOPビジネスの対象である貧困層を見たときにも、
包装用フィルムは欠かせません。

パキスタンでは人口の20%以上が、一日あたりの所得が
1.25ドル以下の貧困層、いわゆるBOPに属します。
この人たちは、一度に多くの食料を購入する財力がありません。
しかし、小分けにされたものなら買える。
小分けに必要なのは包装材です。
つまり、BOPビジネスには、包装用フィルムが必需品というわけです。

残念ながらパキスタンにおいて消費財分野での日本企業の進出は
遅れています。自動車産業のような進出は今のところ目立っていません。
最近では、永谷園の運営するシュークリームショップ
『ビアード・パパ』が首都イスラマバードに一号店を
オープンしたのが話題になりました。
味の素がパキスタンに進出するというニュースもありました。

なぜ、日本の消費財メーカーの進出が遅れているのか。
安藤さんに尋ねてみました。

池上「自動車を除くと、パキスタンに進出している日本企業の影が薄いような気がしますが」

安藤「おっしゃるとおりですね。南アジアではもっぱらインドにのみ目がいってしまう日本企業が多いと思います」

池上「なぜ、パキスタンは二の次になってしまうのでしょう」

安藤「おそらく多くの日本人が、現在のパキスタンに対してはネガティブなイメージを持っているというのが一因でしょうね。だから、南アジアに進出するにしても、インドの次と考えています。しかし、ヨーロッパからみれば、インドよりパキスタンのほうが近いため、パキスタン進出も心理的にすばやく展開できています。日本企業もこの巨大国家パキスタンにもっと注目すべきではないでしょうか」

池上「人口規模以外に、ビジネスにおけるパキスタンの魅力はなんでしょう?」

安藤「英語が通じるというのは大きいと思います。パキスタンはアメリカ、インドに次いで、世界で3番目に英語が通じる人口が多い国ですから」

ちなみに世界銀行が調査する「ビジネスのしやすさに関わる
世界ランキング」では、パキスタンは107位です。
低いと感じるかもしれませんが、
この順位はインドやバングラデシュより上なのです。
中でも「投資家の保護」という項目では、
32位と高い順位を記録しています。

パキスタン海外商工会のお話

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