タリバンと会いました。

どんな国であろうと、どんな社会であろうと、
その発展に絶対に欠かせないものは、「教育」です。

今回はパキスタンの発展のカギを握る「教育」について取材をします。

その前にひとつ読者の皆さんにクイズを出します。

海外で有名な日本語には、スシやマンガ、カラオケなどがありますが、
近年、日本で最も有名になったアラビア語のひとつ、
それは「タリバン」、ではないでしょうか。

新聞の国際面で「タリバン」という言葉を目にしたことのある方は、
とても多いと思います。

ここで問題です。

「タリバン」とは本来どういう意味でしょうか?

以下の3つから選んで下さい。
(1)聖戦(ジハード)の戦士 (2)跡取り息子 (3)学生

新聞やテレビのニュースを見る限り、(1)と答えたくなると思います。
実際、「タリバン」は、イスラム原理主義の過激派、
というイメージが強いはずです。

けれども、本来の意味は違うのです。
(3)の学生、です。

イスラム神学校の学生たちが起源だからです。

このイスラム神学校で学んだ若者たちが、
イスラム原理主義の過激派を構成するようになり、
かくして、本来は「学生」という意味だったはずのタリバンは、
いつのまにか過激なテロを繰り返すイスラム原理主義者を
表す言葉となってしまったのです。

組織としての「タリバン」は、パキスタンで生まれました。

1980年代、かつてのソ連がアフガニスタンを侵攻した際、
多くの難民が発生し、隣国パキスタンに逃げ込みました。
難民の男の子たちは、極端なイスラム原理主義を信奉する
デオバンド派が設立したマドラサ=イスラム神学校で学び、
原理主義思想に染まっていきます。
ソ連が撤退した後、アフガニスタン国内が内戦状態となると、
パキスタン軍は、これらの学生に武器を与え、
アフガニスタンに送り込みます。
アフガニスタンに自国の政権を作りたかったからです。
中心となったのが、ムハンマド・オマル師。
オマル師は90年代半ば、アフガニスタンにタリバン政権を打ち立てます。

2001年9月11日、アメリカで同時多発テロ事件が起きます。
アメリカはタリバンに匿まわれていた首謀者であるウサマ・ビンラディンを
容疑者として引き渡しを求めますが、タリバンは拒否、
そこでアメリカ軍はタリバンを攻撃し、同年12月、タリバン政権は崩壊、
オマル師は行方不明となります。

その後、ビンラディンは2011年、
パキスタン北部の街アボタバード郊外に潜伏しているところを
米軍の急襲に遭い、命を落とします。

けれども、政権が崩壊しても、ビンラディンが死んでも、
タリバンは生き残りました。

パキスタン国内では、アフガニスタンのタリバンの影響を受けた者たちが
独自の過激組織を結成します。
こちらはアフガニスタンのタリバンと区別するため、
パキスタン・タリバンと呼ばれます。
彼らは主にパキスタン政府の統治の及ばない、
アフガニスタンとの国境付近で勢力を伸ばしています。
その後のパキスタン国内での複数のテロ事件にも
パキスタン・タリバンは関わっているとされています。

ノーベル平和賞候補として世界的に有名になった
パキスタンのマララ・ユサフザイさんは、
パキスタン・タリバンによる女子教育への妨害に抗議したところ、
2012年パキスタン・タリバンに銃撃されましたが、九死に一生を得ました。

パキスタンにとって、平和を脅かす
パキスタン・タリバンによるテロ活動は、最も頭の痛い問題のひとつです。

では、なぜ、パキスタン国内でも過激派が増大しているのでしょうか?

理由のひとつは、パキスタンの教育システムの不備にあります。

パキスタンの識字率は59.8%。4割以上の人が字を読めません。
学校教育が行き届いていないからです。

親が字を読めないと、子どもが文字や数字に触れる機会は格段に減ります。
大半の親は教育の重要性を認識していますが、
貧困によりなかなか学校に行かせることができません。
地域の学校に行かせても、大半が長続きしません。
学校へ行く時間があるならば、
むしろ家で農業を手伝わせた方がいいと考える人もいるのです。
小学校の中退率は5割に達するといいます。
さらにいえば、学校の教師の水準も高いとは言えません。

ただし、パキスタンにおいては、たとえどんな家庭においても、
ほぼ100%、熱心に親から子に伝えることがあります。

イスラム教の教えです。

満足に字が読めないまま、
家の仕事の手伝いをしながら大きくなった若者は、
思うように仕事を選ぶことができません。
農業や単純労働くらいしか選択肢がないのです。
いつまでたっても豊かになることができません。

イスラムの教えだけしか知らない貧しい若者たちの中で
不満を溜めていった者が行き着く先。
それがイスラムの教えを先鋭化したイスラム原理主義の集団である
パキスタン・タリバンだった、というわけです。

この負のスパイラルを断つには、パキスタンの教育を見直し、
貧しい家庭の子ども、男ばかりでなく女も平等に教育を
受ける機会を設けるしかありません。

パキスタンでは今、草の根の教育改革が動きつつあります。

3つの教育現場を取材しました。

ひとつめは、マドラサにあるイスラム教の神学校

Pakistan Business

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