ひとつめは、マドラサにあるイスラム教の神学校

ひとつめは、マドラサ。

イスラム教の神学校です。

注:国・地域によっては、「マドラサ」は必ずしも神学校ではなく、単なる「学校」を指す場合があります。

マドラサのなかには、冒頭で説明したように
タリバンの温床となっているところもあります。
私が訪れたマドラサは、パキスタン東部の中心都市ラホールの、
とあるモスクの一角にありました。
さあ、どんなところでしょう?

時刻は夕刻。真っ赤な夕陽が沈もうとしています。

ちょうどお祈りの時間です。

男たちが水で手足を洗ってから、礼拝所へ上がり込み、
同じ動作でお祈りをしています。女性の姿はありません。
女性の取材スタッフは、髪をスカーフで覆いました。

お祈りが終わると、学校の責任者が出迎えてくれます。

池上「こちらのマドラサの教育目的は何ですか?」

責任者「科学や技術を教えることです。
もちろん、イスラム教についても教えますが、
それだけではなく、この社会で生きていくために
必要なことも教えています。
もうひとつの目的は、福祉です。
貧困層に教育の機会を与えています」

池上「学費はいくらですか?」

責任者「無料です。運営費は主に富裕層からの寄付で賄っています」

授業の様子を覗いてみましょう。

最初に覗いた教室では、10人から20人くらいの生徒が、
先生の話に聞き入っています。
年の頃は、日本の高校生から大学生くらいでしょうか。

教室のホワイトボードの板書を眺めると、
数学の「確率」を教えているようです。

次の教室には壁に、元素の周期律表やカエルの解剖図が掛かっていました。
日本の高校の理科室を思い起こさせます。

隣の教室では、簿記を教えていました。

さらに隣はパソコンルームです。
生徒たちはソニー製のディスプレイの前に座っています。が、
奇妙なことに電源が入っていません。どうしたのでしょうか?

「停電しているんです」

先生が答えました。

パキスタンで停電は日常茶飯事。
電源が復活するまで参考書を読んで過ごすのだそうです。

イスラム教の学校で、数学や理科から、簿記、パソコンまでをも教える。

なんだか日本の寺子屋と同じですね。
寺子屋では、お釈迦様のありがたい話を説法する一方で、
子どもたちに読み書きそろばんを教えてきました。
マドラサは、タリバンの養成所などではありません。
イスラムの寺子屋なのです。

1階の教室から階段を上がってみましょう。

2階は寄宿舎になっています。

6畳間2つぶんほどの大部屋を、十数人の学生でシェアしています。
そのうちの一人に、話を聞いてみましょう。

池上「どうしてこのマドラサで学んでいるのですか?」

学生「地元の先輩の紹介です。有名な先生の教育を無料で受けられると聞きました」

池上「パキスタン・タリバンによる自爆テロなどを、どう思いますか?

学生「良くないことです。イスラム教では、殺生は最も良くないことだとされています。イスラムの教えにも反しています」

池上「将来は何になりたいですか?」

学生「イスラム教の学者になりたいです。そして、テロに参加しようとする人に正しいことを教えたい。そのためにはここで一生懸命勉強し、大学へ行きたいと思っています」

彼らはまさにマドラサで教わる、
正真正銘の「タリバン」です。
過激派でも聖戦士でもありません。
向学に燃え、世の中を良くしたいと思っている若者たちです。

さらに、上の階からは、コーランを唱える声が響いてきました。
新入生たちが、コーランの暗唱に励んでいるのです。
覗いてみると、先生の前に10人ほどの子どもたちが、体をゆらしながら、
コーランを唱えています。みんな日本の小学生くらいの年齢です。


隣の部屋からはいい匂いがしてきました。

調理場です。調理人が、タンドリー(釜)でナンを焼き、
ラムカレーをつくっています。
ラム好きの私の食欲をそそる香りがします。
こちらのマドラサでは、食事も住まいも提供され、
毎日たっぷり勉強ができるのです。あとで聞いたところ、
日本企業とも取引のあるラホールの財閥企業のトップが
お金を出しているそうです。

まさにノブレスオブリージュですね。

次は、イスラマバードの職業訓練校

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