次は、イスラマバードの職業訓練校

次に取材したのは、職業訓練校です。

首都イスラマバードの市街地から車で1時間くらいのところにある、
建設機械技術訓練所(CTTI)と呼ばれる施設です。
日本政府の無償資金協力によって1986年に開校しました 。

同校にはパキスタン全国から約1000人の学生が集まっています。
日本でいうと高校生から大学生くらいの年齢の若者たちです。
建築や土木の現場で使われる重機の操縦方法や、
自動車などのメンテナンス技術を机上だけでなく、
実機を使って徹底的に学びます。
教育期間は半年の短期から3年の長期まで、
バリエーションに富んでいます。

まず、案内されたのは、校舎からちょっと離れた空き地でした。

ご覧ください、この広大な土地。

実はここ、この学校の実習場なんです。
さまざまな重機を実際に使って、操縦方法を教えています。
重機には、「From the people of Japan」と書かれています。
いずれも日本製の重機です。あとで校舎の裏側に回ったら、
たくさんの重機が並んでいました。

向こうで教官に指導を受けながら、重機を操っている生徒がいます。
彼に話を聞いてみましょう。

池上「どちらから来たんですか?」

生徒「北西部の山のほうにある南ワジリスタンという町です」

パキスタン北西部は「連邦直轄部族地域(FATA)」と呼ばれ、
政府の統治よりも現地部族の意思決定に強い影響を受ける地域です。
また、パキスタン・タリバンが多い地域でもあります。

池上「遠くからこの学校へ来ているんですね。
出身地の近くにはこういった学校はないのですか?」

生徒「ありません。みんな勉強をして、技術を身につけて、
ちゃんとした仕事をしたいのに、それができません。
だから僕の地元では、そんな状態に憤って
テロリストになる人もいます」

池上「あなたがこの学校で学ぼうと思ったきっかけは何ですか?」

生徒「ふたりの兄がこの学校を卒業して、
良い仕事を見つけたからです。
兄たちは今、サウジアラビアとアラブ首長国連邦で
仕事をしています。日本から来たんですよね。
こういう学校を作ってくれた日本には感謝しています」

さまざまな重機の操縦方法を身に付け、
自動車等の整備技術を叩き込まれたCTTIの卒業生は、
即戦力として国内外で引っ張りだこです。
そのため、パキスタンでは大変な人気校です。
卒業生が、ふるさとの後輩たちに進学を勧めることも多く、
新聞に募集広告を出すと、希望者が殺到するそうです。

今度は教室での授業の様子を見てみましょう。
みな真剣そのものの表情です。

一人の生徒に声をかけ、出身地はどこなのか、
将来何になりたいかなどを尋ねてみました。
17歳だという彼もパキスタン・タリバンの多い北西部の出身で、
将来はエンジニアになりたい、と答えてくれました。

インタビューを切り上げようとすると、引き留められました。

生徒「すみません、日本にお願いしたいことがあるのですが」

池上「なんでしょうか?」

生徒「僕の出身地にも、このような学校を
作ってもらえないでしょうか。
僕は長男なのでなんとかここで勉強させてもらえましたが、
親もお金がもうないので、弟たちが通うのは無理です。
地元に学校があれば、弟たちも実技を身につけて
仕事に就けるようになります。
日本の力で、もっともっと学校を作ってください。
お願いします。もし学校を作るのが難しければ、
ここで学べるような仕組みを作ってもらえませんか」

彼の表情は真剣でした。

私は、ラホール市のマドラサで
「勉強する機会がなく、そのままテロリストになってしまった友人もいた」
と話していた学生のことを思い出しました。

教育が受けられるかどうかで、その後の人生が大きく変わってしまう。
パキスタンでは、教育が受けられないことで取り返しのつかない道を
歩んでしまうかもしれないのです。

校舎の外に出るとCTTIのすぐ隣の敷地では、造成が行われていました。

「何ができるんですか?」と学校関係者に聞くと、
韓国がIT関連の職業訓練校を作っているのだそうです。

教育への援助はある意味でもっとも効率のよい、未来にむけた投資です。
その国を助けることができるだけでなく、
自国のファンを増やすことにもつながる。
韓国も国際協力の重要性に気づいているようですね。

女性の学びはノンフォーマル教育

Pakistan Business

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