女性の学びはノンフォーマル教育

ここまでお読みになって、ひとつお気づきの点があるかもしれません。

そう、これまで紹介した学校には、女生徒がひとりもいないのです。

残念ながらパキスタンでは、女性が教育を受ける機会が
圧倒的に不足しています。
パキスタンの学校の多くが男子校です。女子校は少数です。
しかも女の子を学校に通わせるのを嫌がる親が少なくないのです。

なぜでしょう?

いくつかの理由があります。

ひとつは貧困です。もうひとつは親の無理解です。
女子に教育はいらない、と思っている親が少なくないのです。
また、学校側の問題もあります。学校が近くにない、
あっても先生が来ない、女子トイレがないなどの要因が女子が
学校に通わせることができない大きな要因になっています。

さらに部族地域などでは女子教育を敵視するイスラム原理主義の
パキスタン・タリバンの標的になることを恐れているからです。

パキスタン・タリバンは
「女性は保護すべき存在であり、家で保護していなければならない」
という理屈です。

2012年10月には、女性が教育を受ける権利を訴えていた
当時15歳の少女、マララ・ユサフザイさんが
パキスタン・タリバンに襲撃されるという事件が起こりました。
彼女はパキスタンでも有名人ですが、
パキスタン・タリバンは彼女を非難し、
ノーベル平和賞の候補にノミネートされている
彼女の自伝(「私はマララ」)の販売禁止を訴えています。
マララさんは生命の危機にさらされ、
現在はパキスタンを脱出しイギリスに在住しています。

近代化が遅れているパキスタンの女子教育。
その改善に、とある日本人女性が関わっている、と聞きました。
正規の公立学校に通えない子供たちや、
学齢期を終えてしまった女性達に焦点を当て、
フォーマルな教育の枠組みを超えた様々な学びを施す場を、
パキスタン国内7700箇所で展開している、というのです

これはパキスタンの東部パンジャブ州政府と
JICAとの共同プロジェクトです。
JICAが教育カリキュラムやノウハウなどのソフトを提供して、
まずノンフォーマルのかたちで教育を進め、
州政府の教育機関で国民の識字率と就学率を向上させる
識字局が学校施設などのハードをつくっていく仕組みです。

2011年7月にスタートしたパンジャブ州の
ノンフォーマル教育プロジェクトは、
コミュニティベースの女性識字教育センターから始まり、
現在40万人の女性が学んでいます。
今後3年間にさらに150万人の女性が学ぶ予定になっています。

私は東部の中心都市ラホールの郊外、
シェイクプーラ県のノンフォーマル教育の現場を訪れました。
車は、幹線道路を外れ、畑と家とが点在する田舎道を走ります。
未舗装路にさしかかり、がたがたと揺られながらしばらくすると、
とある村につきました。

車が停まったのは村の寄り合い所。
髭をたくわえた貫禄たっぷりの男性たちが、テーブルを囲んで、
ゆっくりタバコをくゆらせています。

ひとりの女性が現れました。

大橋知穂さん。
パキスタンの女性のノンフォーマル教育普及に関わるJICAの専門家です。
彼女がノンフォーマル教育プロジェクトの推進役なのです。

「じゃあ、さっそく『学校』に行ってみましょう」

大橋さんの後について、細い路地を入って、
ある建物の扉をくぐるといきなりたくさんの花びらを
浴びせかけられました。
驚いて周囲を見渡すと、たくさんの女性たちの笑顔。
小さな女の子からティーンエージャー、20代30代からおばあちゃんまで。

「歓迎の印です。彼女たちが生徒です」

壁に囲まれた小さなオープンスペース。
ちょっとした集会所といった風情です。

ところ狭しと女性たちが立ったり座ったりしています。
100人近くいるでしょうか。
大人の男は、私たち取材陣と通訳のみ。
まさに女の園です。

「こちらで、さまざまな教育を行っています。2013年に読み書きのできない女性のために文字を教えるための識字センターとしてスタートしたんですが、生活費の節約の仕方や、料理、裁縫、美容など生活のノウハウや収入向上の役に立つ実技を学ぶ場に発展してきました」

ひとつひとつの「学習の場」を見学してみることにしました。 

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