今、世界中で注目されている「イスラムビジネス」
その最前線で起きていることを日本の皆さんに伝えるために
私が訪れたのは、 バングラデシュでした。
バングラデシュは長らくアジア最貧国でした。
貧困のイメージが日本でも強い国のひとつでした。

けれども現地を訪れて実感しました。
バングラデシュは、もはや貧しい国ではない。
今回初めてこの国を取材した私の、率直な感想です。

なんといってもアパレル産業の発達ぶりには驚かされました。

21世紀に入って数年で、中国に次ぐ世界第2位のアパレル生産国になっていたのです。
ヨーロッパのZARAやH&M、アメリカのGAPやエディバウアー、
イギリスのマーク&スペンサー、 そして日本のユニクロといった具合に、
世界中の大手ブランドがバングラデシュのアパレル工場に委託しています。

バングラデシュが独立するはるか前、イギリスに統治されていた頃に
繊維工場がつくられたのがきっかけで、
この国にはアパレル生産の基盤があったのは事実です。

けれども、いまの圧倒的なアパレル生産の成長ぶりは、
やはり同国企業の努力によるところが多いでしょう。
海外の有力ブランドの厳しい注文にも応えられる生産技術に加え、生産コストの低さ、
とりわけ低廉な労働力が、バングラデシュのアパレル生産の大きな魅力となっています。

バングラデシュのアパレルビジネスには、
海外ブランドの生産委託地として価格競争力と技術競争力がある、
ということに加え、もうひとつ有利な点があります。

それは、隣に巨大国家インドがある、ということです。

バングラデシュより先に経済成長の気流に乗ったインドは現在人口が約12億4000万人。
一人っ子政策で人口増加率が頭打ちとなった中国をいずれ抜いて世界一の人口大国になる、
といわれています。

インドはすでに経済成長しているがゆえに
バングラデシュに比べると人件費は安くありません。
ゆえに、相対的に人件費が安いバングラデシュ産のアパレル製品は、
10数億人の巨大市場をそのまま活躍の場とすることが可能なのです。

これは、バングラデシュの経済にとって、
アパレルのみならずさまざまな分野で大きな利点となり得るでしょう。

アパレル生産が軌道に乗り、経済成長の道を歩み始めたことで、
バングラデシュにはもうひとつ新しい変化が訪れました。

女性の社会進出です。

バングラデシュは、割合と穏健ではありますが、イスラム教の国です。
多くのイスラム教国と同様、かつては女性が外に出て働くというのは例外的でした。
女性は家の中、というのがイスラムの世界では普通だからです。

けれども、アパレル工場が国内各地にできて、多数の労働者を雇用するようになると、
これまで農作業くらいしか働く場所がなかった低所得者層の女性たちが
続々とアパレル工場で働くようになりました。

各地に工場ができて、それまで農村で農業を営むしかなかった人たちが、
とりわけ女性たちが工場で働くことになると、経済に大きな変化が訪れます。

それは貨幣経済が田舎でも起動する、ということです。

男性も女性も「給料」をもらうようになるわけです。
つまり現金収入が手に入るようになるわけです。
農業だけの社会はややもすると物々交換に近いような状態に停滞しがちです。
工場労働はバングラデシュの隅々に貨幣経済をもたらせた、というわけです。

アパレル市場の拡大を見て、日本から生産のみならず
製品販売をもこの国で展開しようと決断した企業があります。
「ユニクロ」ブランドを展開するファーストリテイリングです。
同社は、 グラミングループのグラミン・ヘルスケア・トラストと合弁で、
グラミン・ユニクロを設立、現在首都ダッカに5店舗を展開中です。
グラミン・ユニクロの製品はユニクロの純正品よりもかなり安く、
低所得者でも購入が可能です。

Bangladesh Business

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