南部経済回廊は、日本の太平洋ベルト地帯?

国境を接しているお隣さんではありますが、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーは、政治体制も異なれば、経済の発展度合いも大きく異なります。

南部経済回廊プロジェクトは、そんな4カ国を道路で横串に刺してつなぐことで、ダイナミックな経済成長の波を起こそう、というものです。

ベトナム・ホーチミン、カンボジア・プノンペン、タイ・バンコクを経て、ミャンマーのダウェーまで約1200キロ。

東京~博多間を結ぶ新幹線の総距離が1175キロですから、太平洋、シャム湾、インド洋の海岸沿いを結んだ南部経済回廊は、日本の高度成長期を支えた太平洋ベルト地帯と、地理的には同じくらいの規模といえます。

AECの誕生で域内関税が撤廃され、ASEAN域内の貿易が自由化され、南部経済回廊でモノとヒトの流れがスムーズになると、どんな変化が起きるでしょうか。

たとえば、域内では比較的人件費が安いカンボジアは、先進各国企業から工場進出の候補地に挙げられていますが、自国内に大規模な貿易港を持たないのがビジネス上のネックになっています。

けれども、貿易が自由化され、インフラが整備されれば、工場でつくった製品を、南部経済回廊を活用して隣国のベトナム・ホーチミンの港や、タイ・バンコク東部の国際港に運べるので、たやすく輸出できるようになります。

さらに、生産コストを圧縮したい部品製造はカンボジアやミャンマーなどで行い、製品組み立てから輸出まではタイやベトナムで行う、といった国際分業生産もAECの誕生で可能になります。

日本はいま、海岸沿いを結ぶ南部経済回廊のほか、ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマーの内陸部を結ぶ東西経済回廊の開発に関して国際協力を行い、インドシナ半島全体の経済発展を応援しています。

が、これとは異なる動きをしている国があります。

中華人民共和国です。

中国は、インドシナ半島の国々の大半と国境を接しています。そこで、各国と中国を個別につなぐ南北経済回廊を整備しています。南北経済回廊の整備によって、中国は域内各国と個々に経済的なつながりを深め、域内での影響力を増そうとしているのです。これにより、雲南省などの自国内陸部と太平洋、シャム湾、インド洋といった沿海部との連結性を高め、沿海部に比べて経済格差のある内陸部の経済発展を狙っています。