日本の歴史を学べば、ASEANの未来がわかる!

日本は、南部経済回廊でつながる4カ国の「未来」を身をもって予測することがある程度できます。というのも、経済発展は、基本的にどの国も同じような道をたどる側面があるからです。

実際、各国を歩いてみると、タイのバンコクはバブル華やかなりし頃の東京を思い起こさせますし、ベトナムのビル建設ラッシュやモータリゼーションの浸透ぶりは70年代の、のどかな田園風景に徐々に工場が建ち始めているカンボジアは50年代終わりの、中古の日本車が町中を埋め尽くすミャンマーは60年代前半の、それぞれ「日本の歩んだ道」そっくりです。

それぞれの国にいま何が必要なのか?

日本は自らの歴史を振り返ることで適切な処方箋を出せるはずです。

ここで本連載の構成について、あらかじめ説明しておきましょう。

今回、私と取材チームは、7日間で4カ国1200キロを一気に移動しながら取材を行いました。

うち900キロは陸路でベトナム・ホーチミン市から、カンボジア・プノンペンを経て、タイ・バンコクまで自動車で走破しました。

残念ながら、南部経済回廊の終着予定地になるミャンマーのダウェーへは、タイからミャンマーへ抜ける道がまだ完成していないため、今回は陸路での移動を断念。代わりに、すでに2011年ごろから海外各国に対する市場開放で日本をはじめ各国の企業が集結しつつあるミャンマー最大の都市ヤンゴンへ、空路でバンコクから乗り込みました。

連載では、Ⅰ ベトナム編、Ⅱ カンボジア編、Ⅲ タイ編、Ⅳ ミャンマー編と、「ロードムービー風」に実際の移動の時間経過に沿って現場で私が見たこと、考えたことをレポートしていきます。

各国における取材内容は、次の4つの共通パートで構成します。

A  ASEANを運ぶ! 輸送 物流/鉄道/通関
B  ASEANを育てる! 教育 大学工学部連携/職業教育
C  ASEANで創る! ニュータイプのニッポン進出
D  ASEANの戦い! 戦争・内戦の傷跡と、その傷跡からの脱出

「A ASEANを運ぶ!」。今回の取材のいちばんの主人公は、「南部経済回廊」に象徴される輸送インフラの構築。各国の経済と人々の暮らしが道路や鉄道の整備で大きく変わるさまをレポートします。

ベトナムではホーチミン初の中心部と郊外を結ぶ都市鉄道プロジェクトを、カンボジアでは長大なつばさ橋によって物流と人々の暮らしが変わるさまを、タイでは国際港の活躍ぶりとバンコクの都市鉄道建設を取材しました。

「B ASEANを育てる!」での取材対象は、「教育」です。
教育の充実は経済成長に絶対欠かせません。ベトナムの企業人教育学校「カイゼン吉田学校」のカイゼン教育ぶりを、カンボジア工科大学の理系人材輩出のいまを、タイの工科大学における経済インフラのプロづくりを伝えます。

「C ASEANで創る!」では、日本とASEANとがタッグを組んだ最新経済動向を明かします。ベトナムでは埼玉の中小製造業団地がまるごと移動してきたアッと驚く日本の「ものづくり」の輸出ぶりを、カンボジアでは人件費の安さをテコに多くのメーカーが工場進出する中、なんと日本の「漫画喫茶」に置かれる中古漫画の補修を行っている事例を、タイでは港湾部で高度な製品加工貿易を長年行っているエアコン事業を、ミャンマーでは巨大工業団地を仕切る日本人商社マンの奮闘ぶりをお見せします。

「D ASEANの戦い!」。すでに触れたように、ASEAN諸国の経済発展はつい最近まで続いていた戦争や内戦の傷跡の上にあります。このつらい過去について日本人はぜひ知るべきです。ベトナム戦争証跡博物館ではベトナム戦争の歴史を、カンボジアのキリングフィールドではポル・ポト派による虐殺の苛烈さを、そしてカンボジアの地雷除去センターではいまも続く地雷除去の地道な仕事ぶりを、ミャンマーでは人身取引の深刻な現実を伺いました。

2015年末。世界はいろいろな意味で大きく動こうとしています。

中国とアメリカ、日本を含むアジア諸国の間では、中国による南沙諸島での海洋開発をめぐり、緊張が高まっています。フランス・パリやレバノンのベイルートではたくさんの人々が殺されるテロが起き、それに先立ってロシアの民間機が墜落し乗員乗客が全員死亡。いずれもISことイスラム国が犯行声明を出しました。フランスやロシアはISの拠点と見なされるシリアを空爆し、こちらでも多くの死亡者が出ています。

そんな不安定な時期、ASEANが経済統合を表明してAECが発足し、地域一体で共に経済成長しようと宣言したのは、数少ない明るい話題です。

紛争や戦争の裏には、必ずといっていいほど貧困と格差があります。平和な世界をつくる近道の処方箋などはありません。それぞれの市民が教育をきっちり受け、インフラを整備し、地道に経済成長することが、結局、平和への道につながります。

日本の国際協力が、ASEANの新たなる発展の一助となるかどうか。

夜明けのベトナム・ホーチミンに降り立ち、この目で確かめる旅に出ましょう。