タイを「運ぶ!」 レムチャバン国際港編 ヨコハマ港より大きい! レムチャバン国際港の実力

南部経済回廊を外れ、いったんバンコク中心部に立ち寄って、都市交通の要である鉄道の開発現場を見てきました。

ここで再び自動車に乗り込み、南部経済回廊を走ることにしましょう。行き先は、バンコク東部に位置するレムチャバン国際港湾。こちらの物流現場を取材します。

すでに25年以上の歴史を誇る、インドシナ半島随一の港でもあります。敷地面積は1000ヘクタールで、2012年の世界の港湾別コンテナ取扱量ランキング(出典:Containerisation International Yearbook)では、東京港や横浜港を上回る23位に位置します。先ほどのパープルラインの車両も、日本からこのレムチャバン港に届けられました。周囲には、1980年代より工場団地が建設され、約150社の工場があり、日系企業も数多く進出しています。

ASEAN経済共同体(AEC)がスタートし、南部経済回廊が国境を越えて機能するようになると、一番大切な設備のひとつが国際港湾です。このレムチャバン港から、タイ国内はもちろん隣国のカンボジアやミャンマー、内陸で港のないラオスから鉄道や道路を介して製品が集められ、海外に輸出される。あるいは、近隣国も含め、海外からの製品や原材料が陸揚げされ、回廊を通って周辺地域、周辺国にデリバリーされる。

インドシナ半島随一の先進国であるタイ・バンコク南方のレムチャバン港は、南部経済回廊最大の経済の「出入口」なのです。

21階建てに相当する高いタワーから、港全体を見下ろしてみます。視界の端の方で、トレーラーが列をなしています。積み荷はトヨタのピックアップ・トラック。港の所長のモントレーさんによると、この港からは年間120万台の車が輸出されますが、その9割が日本メーカーのものとのことです。

隣接する工業団地の担当者は、「日本企業は検査などの規律を必ず守るので、今後も日本企業に投資してほしい」と言いますが、立地が良いことに加え、2カ所の火力発電所を持つなどインフラも充実していることから、30年前の計画時のキャパシティをすでに超えており、新規入居希望者は断らざるを得ない状況になっているそうです。港が、いかに工場にとって大事なものであるかがわかります。

南部経済回廊の開通によりこの港はどういった影響を受けるのでしょうか? モントレー所長に伺います。

「タイがリーダーであることには変わりがありませんが、国際展開する企業は労働力の安いベトナムやカンボジアといった近隣国を活用し易くなるため、レムチャバン港からの輸出量は増えていくと思います。それを見越して今はさらに新しいバースを開発し、レムチャバン港の物流能力を上げていく計画です」

新たな鉄道輸送を始める計画もあります。その鉄道は、ラオスの首都ビエンチャンに達し、さらには中国の雲南省まで通すそうです。この鉄道が開通するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

「計画的に大量輸送を行うルートができる。これはタイにも中国にも朗報です。中国からインドシナ半島への物流ルートは、最近までメコン川の河川輸送が重要でした。ところが近年メコン川の水位が下がっていて、これまでは水路で運搬していた大型貨物が運べなくなり、陸送に変わってきた。しかし、山間部の道路は狭く、効率の良い輸送ができません。鉄道が開通すれば、山間部で採れた野菜や果物を新鮮なままこの港から輸出できるようになります」 

取材を終え、おいとましようとする我々をモントレー所長はわざわざ呼び止めてこう言いました。

「この港の基礎設計をしてくれたのは日本です。タイはその恩を忘れません」

モントレー所長はこの港に勤めて18年目。2015年10月に所長就任した後初めての取材が我々によるものであることを、とても喜んでくれていました。