タイで「創る!」 レムチャバン工業団地編 港と工場が一体化! タイのグローバル戦略の要

レムチャバン国際港は、南部経済回廊がミャンマーまで開通するとインドシナ半島における海運のハブとして、さらに重要な地位に就くことになります。この港の大きな特徴は、単なる物流拠点ではなく、隣に広大な工業団地を有する製造拠点でもあることです。

レムチャバン工業団地がオープンしたのは1991年。現在は600万m2を超える敷地に全部で約150社の工場が集結して、自動車部品や電気製品などの日系企業も入っています。

港湾施設と工業団地が隣接していると、海外から原材料を輸入し、工場で製品を製造して輸出するのにとても有利です。物流コストを圧縮できるうえに、生産から輸出までのスピードを最大限まであげられます。

ASEAN経済共同体(AEC)が発足し南部経済回廊の整備が進むと、国際港湾に隣接したこの工業団地の地理的な優位性はさらに高まります。国境をまたいで容易に分業生産ができるようになるからです。

例えば、カンボジアやミャンマー、あるいはラオスで安価な部品を生産することで人件費を圧縮し、できあがった部品をこの工業団地に搬送、製品の組み立てをここで行い、製品輸出する。現在でもこうした分業生産は始まっていますが、よりスピーディに、より低コストで可能となります。

レムチャバン工業団地で生産を続けている日系企業に話を聞いてみましょう。富士通ゼネラルは、1992年よりこの工場でエアコンの生産を行っています。現地法人常務取締役の吉原茂充さんに案内してもらいました。

同工場は、操業から25年の間、主に輸出用エアコンを製造してきた富士通ゼネラルの生産拠点のひとつです。

現在正規社員は1000名超で、繁忙期にはその数を超える臨時工を採用することもあります。

こちらで製造したエアコンの主な輸出先は、中東やオセアニア。例えばドバイへは隣のレムチャバン港からいったんシンガポールに船便で送り、そこで別の船にコンテナを載せ替えてドバイへ運んでいるそうです。

「レムチャバンからドバイへの大型船は、直行便がほとんどないんです。マレー半島を迂回しなくて済む点では、ベンガル湾沿いにあるミャンマーのダウェーの港とそこまでの南部経済回廊が整備されれば、魅力的だなと思います。ただ、ダウェーに工場を移転することは、インフラを考慮すると難しいかもしれませんね。むしろ輸出港としての可能性を感じます」

同様の理由で、富士通ゼネラルの場合、今の時点では、カンボジアなどに部品製造部門だけを切り離すことも考えがたいとのこと。いまは、タイで一貫生産したほうが効率がいいそうです。

「ただ、周辺の国が成長して技術レベルや経済レベルがタイに追いついたとき、そもそもタイで一貫生産するのが効率的かどうかは考え直さねばならないかもしれません。製造コストの振りわけが今のあんばいとは変わってきますから」

ASEANの経済統合は、タイ・レムチャバンでの操業にどのような影響を与えそうなのでしょうか。

「この工場は国外への輸出を前提に企業誘致が行われた経済特区にあるので、現状ではタイ国内でエアコンを販売しようとすると関税がかかるんです。ASEAN域内が経済統合して関税面で有利になると、近隣のASEAN諸国向けの販売が増えるかもしれません」

現在、富士通ゼネラルはこの地にある研究開発部門を強化しています。ここでの仕事が10年になるという吉原さんには、タイに対して心配なこともあるようです。

「この国でタイ資本の大企業といえば、食品や農業関連が多く、まだまだ技術を外資に頼っているところがあります。もしこの国にウィークポイントがあるとするなら、この点だと思います」

タイの富士通ゼネラルで長年エアコンの生産に携わってきた吉原さんによれば、南部経済回廊の魅力はたっぷりあるものの、近隣の途上国も含め、長期的に見ると、労働力の安さや手先の器用さだけで経済成長をするのは今後難しくなるのではないか、とのことでした。

インターネットの発達と物流のグローバリゼーションに伴い、コスト競争は国どころか大陸をやすやすと越え、どこで生産するのがもっとも効率的かがすぐに数字で冷徹にはじき出されてしまう時代です。

これから経済成長の道を歩もうとするカンボジアにしろミャンマーにしろ、経済が成長して国民の所得水準が上がると、労働力の安さだけを売り物にすることはできなくなります。かつての中国や韓国もその段階になったとき苦労をしました。

タイはどうすべきでしょうか?

インドシナ半島の中ではもっとも先進国に近づいたタイですが、アジア全体を見れば、中国や韓国の後塵を拝していますし、国民1人当たりのGDPで比べると隣国のマレーシアが上位に立っています。

一方で、コスト競争力が売り物になる段階ではないタイの場合、価格競争ではなく、新しい付加価値を自らの国の産業から生み出さなければ、次なる経済成長の道は見えてきません。

そこで、改めて重要となるのが教育です。とりわけ大学や大学院などの高等教育の水準を上げて、付加価値の高い製品やサービスを独自に生み出せるだけの人材開発を自国内でする必要があります。

タイの大学教育は、今どうなっているのでしょうか?